武田的ディテール
2026年1月12日 (月)
2026年1月11日 (日)
2025年12月23日 (火)
八竹庵はだれが設計したのか(13)都会の別荘プロジェクト
八竹庵連載は今回で終わる。多少メモしておきたい。
八竹庵は婦人服雑貨商の美濃利(井上利助)の本宅兼迎賓館として1926年に竣工した。その後、襦袢商の川崎家が所有し紫織庵として公開されてきた。川崎家からデベロッパーに所有が移りマンションに建て替えられそうになったところをくろちくが救った。現在は八竹庵として公開されている。
設計施工は数寄屋大工の上坂(こうさか)浅次郎でよいと思う。洋間は武田、和室は上坂という分け方は意味がないと思う。記録には上坂は大工、武田は参与とあるのだから、そのとおり読むべきだろう。設計施工は上坂で、武田はアドバイザーとして八竹庵に関わった。
武田は全体の平面図を描いたほか主要室のインテリア図を描いたと思う。武田と上坂はそれまでにも一緒に仕事をしたことがあるのではないかと思う。いま手もとに資料がないので確かめられないが、そのうち調べてみたい。
洋間は高島屋が担当したとどこかで読んだ。高島屋の建築部門には武田の教え子がいたから、さもありなんと思う。
もうひとりの参与である塚本与三次(京都商事株式会社)は南禅寺かいわいの別荘街開発で知られている。武田は南禅寺かいわいに作品がいくつかあるので、一緒に仕事をしたことがあったのではないか。
美濃利の迎賓館造りの相談相手は塚本だったのだろう。敷地は郊外の別荘地ではなく町中の業務地帯だった。塚本にとって都会の迎賓館づくりは初めてだったのではないか。そこで武田と上坂に声をかけたのだと思う。こうして最強のチームが誕生し八竹庵ができたというわけである。
2011.05.29、京都市中京区
2025年12月22日 (月)
八竹庵はだれが設計したのか(12)床の間比較
2階の座敷の床の間は1階のものとよく似ている。ただし方眼も黄金比もなさそうだ。ふたつの床の間を重ね合わせてみたところタテ方向はぴったり合う。つまり2階床の間は1階床の間のタテ方向の比率を守りながら両端を切り詰めていることが分かる。
おそらく武田はすべての部屋の設計をしたわけではなさそうだ。彼は主要な部屋のインテリア素案を示しただけだろう。方眼紙に描かれた展開図を弟子の誰かが清書したものが上坂棟梁の手元に届いたろう。上坂棟梁はその素案を活かして八竹庵を設計施工した。
2階床の間については武田図面は無かったので、上坂棟梁は武田の描いた1階床の間の寸法を応用した。ぴったり重なるのはそのためだ。ただし方眼や黄金比のことまでは知らなかった。それでも武田の考えた展示物をひきたてる控えめでシンプルなデザインは実現している。その点については事前に武田と示し合わせていたのだろう。


2025.11.09、京都モダン建築祭にて
2025年12月21日 (日)
2025年12月20日 (土)
八竹庵はだれが設計したのか(10)漆の布目塗り仕上げの床框を知っていますか
床の間は素材を楽しむ場所である。床柱の次に注目されるのは床框(とこがまち)だ。床框は座敷と床の間の段差を納める水平材のことだ。ここでは布目の漆塗りとなっている。漆塗りの床框は普通にある。しかし布目塗りは珍しいと思う。
どれのくらい珍しいのかということを識者に確かめてみようと思う。もし本当に途方もなく珍しいとすれば、やはりこれは武田の新素材を試さずにはいられない性質の発露であろう。
ちなみに漆塗りは越前塗や能登漆など北陸方面が有名だが、武田は金沢の高等工業学校との関係が深い。おそらく国会議事堂設計チームのなかで武田は素材担当だったのだろう。全国の伝統工芸の建築的応用を考案するという立場は武田にとって水を得た魚だった。それは日本建築を再興する道筋でもあった。その一片が、この床框に顕れているように見える。
2025.11.09、京都モダン建築祭にて
2025年12月19日 (金)
2025年12月18日 (木)
2025年12月17日 (水)
2025年12月16日 (火)
より以前の記事一覧
- 八竹庵はだれが設計したのか(5)武田好みの素材たち 2025.12.15
- 八竹庵はだれが設計したのか(4)2階暖炉 2025.12.14
- 八竹庵はだれが設計したのか(3)装飾 2025.12.14
- 八竹庵はだれが設計したのか(2)暖炉 2025.12.13
- 八竹庵はだれが設計したのか(1) 2025.12.12
- 関西美術院再訪(7)平たい屋根の理由 2025.12.02
- 関西美術院再訪(6)黄金比でつくられた美術院 2025.12.02
- 関西美術院再訪(5)方眼紙に描かれた平面 2025.12.01
- 関西美術院再訪(4)関西美術院は方眼紙で設計されている 2025.11.30
- 関西美術院再訪(3)明治39年の縦軸回転窓 2025.11.29
- 関西美術院再訪(2)謎の埋め木 2025.11.28
- 関西美術院再訪(1)全体像 2025.11.27
- 銀橋(7)階段塔は方眼紙とコンパスで描かれている 2025.03.25
- 銀橋(6)照明器具はだれがデザインしたか 2025.03.24
- 銀橋(5)じつは銀橋は伸縮自在だった 2025.03.23
- 銀橋(4)これが武田の機能美だ 2025.03.22
- 銀橋(3)花見の階段塔 2025.03.21
- 銀橋(2)ラセン階段の見下げ 2025.03.20
- 銀橋(1)ラセン階段の見上げ 2025.03.19
- 五龍閣のディテール(9)バルコニーのずれた中心 2025.01.29
- 五龍閣のディテール(8)照明器具の吊元の左官仕事 2025.01.28
- 五龍閣のディテール(7)ベンチシート 2025.01.27
- 五龍閣のディテール(5)コリント式 2025.01.24
- 五龍閣のディテール(4)暖炉のタイル 2025.01.23
- 五龍閣のディテール(3)モザイクタイル 2025.01.22
- 五龍閣のディテール(2)型板ガラス 2025.01.21
- 五龍閣のディテール(1)吹き抜けギャラリー 2025.01.19
- 清水坂順正「五龍閣」(1921) 2025.01.17
- 同志社女子大栄光館(1932) 2024.12.13
- 和楽庵を見てきた(5) 2024.12.05
- 和楽庵を見てきた(4) 2024.12.03
- 和楽庵を見てきた(4) 2024.12.01
- 和楽庵を見てきた(3) 2024.11.25
- 和楽庵を見てきた(2) 2024.11.24
- 和楽庵を見てきた(1) 2024.11.23
- 【歴彩館講演ネタ②府立図書館のツル】 2024.08.22
- 【歴彩館講演ネタ①コンパスで描いた府立図書館】 2024.08.21
- 武田五一の大鳥居は2:3で作られている 2024.06.24
- 天理大学1号館の独立柱型門灯(1926) 2024.06.23
- 寿(ことぶき)のよろい戸 2024.05.30
- 武田五一の門柱発見! 2023.10.14
- 京大時計台のサラセン式の飾り 2023.02.07
- 京大時計台の目玉焼きシャンデリア 2023.02.04
- 京大時計台の手すり 2023.02.03
- 武田的ディテール・フクロウの顔 2023.01.13
- 京都モダン建築祭の応援記事が載った 2022.11.02
- 京大時計台にはケルト模様がある 2022.09.13
- 日本のタイル100年(1)武田のテラコッタを見よ 2022.04.26
- 武田五一の部材が展示されていた 2022.03.19
- 武田五一の街路灯が無くなっていた 2022.03.18
- 武田的ディテール(52)岡崎公園の大鳥居問題 2021.12.31
- 武田的ディテール(51)下足入れの年代推定 2021.12.03
- 武田的ディテール(50)オシャレは足もとから 2021.12.01
- 武田的ディテール(49)旧京都市陳列館の門柱はなぜTの字なのか 2021.11.30
- 武田的ディテール(48)フォーチュンガーデンの丸タイル[続報] 2021.11.29
- 武田的ディテール(47)島津の謎の塔[真実編] 2021.11.28
- 武田的ディテール(46)島津の謎の塔[解決編] 2021.11.05
- 武田的ディテール(45)島津の謎の塔 2021.11.02
- 武田的ディテール(44)栄光館のテラコッタ(2) 2021.11.01
- 武田的ディテール(43)フォーチュンガーデンの扉飾り 2021.10.31
- 武田的ディテール(42)フォーチュンガーデンの丸タイル 2021.10.30
- 武田的ディテール(41)栄光館のテラコッタ 2021.10.28
- 武田的ディテール(40)栄光館のバルコニー下 2021.10.26
- 武田的ディテール(39) 府立図書館のイチョウ 2021.06.17
- 武田的ディテール(38) 圓教寺食堂の柱 2021.06.14
- 武田的ディテール(37) 復元された舞台(2) 2021.06.13
- 武田的ディテール(36) 復元された舞台 2021.06.12
- 【 武田的ディテール(35) 舞妓さんの守り神 】 2021.06.03
- 【 武田的ディテール(34) 搬入口を正面にすえる度胸があるか 】 2021.06.02
- 【 武田的ディテール(33) 武田の遺作を見てきた・桃山碑3】 2021.06.01
- 【 武田的ディテール(32) 武田の遺作を見てきた・桃山碑2】 2021.05.31
- 武田的ディテール(31)武田の遺作を見てきた・桃山碑1 2021.05.30
- 武田的ディテール(30)高山彦九郎銅像のいきさつ3 2021.05.27
- 武田的ディテール(29)高山彦九郎銅像のいきさつ2 2021.05.26
- 武田的ディテール(28)高山彦九郎銅像のいきさつ1 2021.05.24
- 武田的ディテール(27)府立図書館の換気口は何に見えるか 2021.05.22
- 武田的ディテール(26)蓮華噴水脇の2本の照明塔 2021.05.19
- 武田的ディテール(25)蓮華噴水の謎・なぜズレたのか? 2021.05.18
- 武田的ディテール(24)蓮華噴水の謎・排水口の位置のずれ 2021.05.17
- 武田的ディテール(23) 蓮華噴水の謎・なぜハスなのか 2021.05.16
- 武田的ディテール(22)和風な洋風 2021.03.17
- 武田的ディテール(21)和風な洋風 2021.03.16
- 武田的ディテール(20)銅像台座 2021.03.12
- 武田的ディテール(19)京大の矢車模様 2021.03.10
- 武田的ディテール(18)コンパスの跡 2021.03.09
- 武田ディテール(17)武田邸アトリエ 2021.03.08
- 武田的ディテール(16)記念碑のベンチ 2021.03.06
- 2001年「分離派建築会100年展」メモ 2021.03.05
- 武田的ディテール(15)銀橋の階段塔 2021.03.05
- 武田的ディテール(14)銀橋の3ヒンジアーチ 2021.03.04
- 武田的ディテール(13)銀橋 2021.03.03
- 武田的ディテール(12)噴水 2021.02.17
- 武田的ディテール(11)タイル 2021.02.16
- 武田的ディテール(10)記念碑 2021.02.12
- 武田的ディテール(9)家具 2021.02.10
- 武田的ディテール(8)モザイクタイルの海 2021.01.21
- 武田的ディテール(7)傾斜する壁柱 2021.01.20
- 武田的ディテール(6)扉の八角形 2021.01.19
- 武田的ディテール(5)造り付けの下足箱 2021.01.18
- 武田的ディテール(4)レンガの飾り積み 2021.01.17
- 武田的ディテール(3)レンガの飾り積み 2021.01.16
- 武田的ディテール(2)レンガの飾り積み 2021.01.15
- 武田的ディテール(1)リボン窓 2021.01.13
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