武田的ディテール

2023年2月 7日 (火)

京大時計台のサラセン式の飾り

箱の下にメレンゲのような飾りが下がっている。石田先生がインドサラセン式と同定なさってから私もそう説明している。サラセン式は昭和初期の一時期、武田の弟子筋のあいだで熱病のように流行った。けっして武田自身がサラセン式を推奨したわけではなし、彼自身もサラセン式でデザインしたことはない。だから京大時計台のこれも弟子たちのデザインと思っていた。でも、こうやって改めて見上げると「顔」に見える。「顔」があるところは武田っぽいぞ。

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2023.01.07、京都大学

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2023年2月 4日 (土)

京大時計台の目玉焼きシャンデリア

廊下を歩いていて誰かに見られていると思って振り返ったらこいつがいて驚いた。ともかくでかい。側面の黄色いひし形模様が目に見えるし、全体も逆さにした目玉焼きのようだ。とりあえず目玉焼きシャンデリアと名付けた。部屋のなかからよく観察したいものだ。

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2023.01.17、京都大学。百周年時計台記念館

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2023年2月 3日 (金)

京大時計台の手すり

いかにも武田っぽいデザインなのだが、戦後の改修のようにも見える。手すりの高さは階段部分は掴みやすい80㎝で、そうでないところは転落防止的に1メートルにする。20㎝の差を戦前なら親柱で解消するのだが、親柱が無いならこのように段差ができる。階段側の手すりが最後でくるりとまわるのは掴みやすくするためというよりデザイン上での処理だろう。そこがなんともユーモラスで武田っぽい。

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2023.01.17、京大記念時計台

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2023年1月13日 (金)

武田的ディテール・フクロウの顔

授業用に府立図書館の写真を撮りにいって気づいた。目玉柱は角から見上げるとニワトリの顔に見える。武田が顔を意識していたかどうかは分からないが、後年のフォーチュンガーデン(旧島津本社)玄関の柱は角からの見え方でデザインしていると思う。こっちは知恵の神さまのお使いのフクロウだと思う。図書館もニワトリではなくフクロウなのかも知れない。

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2023.01.10岡崎公園、府立図書館 / 2021.11.19、京都市中京区、フォーチュンガーデン

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2022年11月 2日 (水)

京都モダン建築祭の応援記事が載った

ぽマガジンに京都モダン建築祭の応援記事が載った。建築祭主催のまいまい京都から宣伝のために取材に応じるよう依頼された。ぽマガジンは「定説ではないがもっともらしい噂話」をしてほしいというので武田物件を中心のヲタク話をしてきた。とめどもない話をうまくまとめている。自分で読んでもおもしろい。みんなも読むといいよ。

ぽマガジン 噂で知る京都シリーズ「武田五一を愛する建築探偵の推理が、京都のモダン建築の謎を次々に解いているらしい」https://www.potel.jp/kyoto/cityguide/feature/modern_architecture/?fbclid=IwAR2XgVHBRRrrJZ3Z45HTzqJrXtycRIUHK1dXC55nTMHcb1vgPyDV0M-GEvQ

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府立図書館のコンパスの跡

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2022年9月13日 (火)

京大時計台にはケルト模様がある

京大時計台は弟子たちがよってたかって作ったが随所に武田的ディテールが散りばめられている。このテラコッタなどは世紀末のイラストレーターであるビアズレーを思わせる。

図形分析をしてみたところ、方眼紙とコンパスで描いていることが分かる。まさしく武田的ディテールだといえよう。描いてみて分かったがこの図案はビアズレーというよりケルト文様ではないか。いかにも英国に留学した武田らしい。

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2017.10.04、京都大学百年記念時計台記念館

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2022年4月26日 (火)

日本のタイル100年(1)武田のテラコッタを見よ

イナックスライブミュージアムの展覧会「日本のタイル100年」を観てきた。ミュージアムの磯崎さんありがとうございました。撮影可だったので気付いたことをメモしておく。

最初に目に入ったのはこのでっかいテラコッタ。京都府立図書館(1909)の装飾と説明があって驚いた。武田五一デザインのテラコッタ装飾が常設展示にあるのは見ていたが、そのほかにも収蔵なさっていたとは知らなかった。武田マニアとしてはとてもうれしい。舐めるように見ていると磯崎さんが寄ってきて「さすが、まっさきに武田五一ですね」と言われた。

キャプションに久田吉之助工場製とあった。久田のことは20年ほど前にタイル復元家の太田さんから教えられた。久田はライト設計の帝国ホテルの外壁テラコッタを開発したが、その後ホテル側とけんか別れして受注は別工場が請けたという。

武田と久田との出会いは古い。武田は京都の伝統工芸の近代化のために京都高等工芸学校へ1903年に赴任した。伝統工芸の近代化のテーマには織りや染めのほかに陶芸も含まれる。輸入にたよっていたタイルやテラコッタの国産化を武田は目指した。

武田の設計した岐阜の名和昆虫館は1907年に竣工し、ここで久田は国産最初と言われるテラコッタを製作した。武田と久田とによる陶芸の近代化のための試みはそのころ始まったと考えてよいだろう。続いて府立図書館ではさらに大型のテラコッタを製作した。そのテラコッタを建物全体に貼りまわしたのが帝国ホテル(1923)だった。

ライトと久田を引き合わせたのは帝国ホテル重役の大倉喜八郎だったとされている。ライトは黄色いテラコッタでホテル全面を覆うことを提案していた。大倉は京都の長楽館(1909、村井別邸)が黄色いことを知っていたので、そこからたどって長楽館の外壁タイルを製作した久田のもとへ依頼が舞い込んだという。

長楽館の外壁タイルはテラコッタだったろうか。テラコッタとは一般的に立体的な装飾焼き物をいう。今度行ったら確かめてみるが、長楽館の外壁は名和昆虫館と同じ釉薬がけのタイルだったと思う。

久田まわりのネット情報では「黄色いレンガ」という言い方がされてるが、そうした用語をわたしは聞いたことがない。黄色いレンガと言うと化粧レンガの一種のように聞こえるが、久田が作ったのはレンガではなくテラコッタだ。「黄色」は昆虫館や府立図書館ですでに実現させている。難しかったのは土練り、成形と乾燥だったのでないかとわたしは思う。

久田と武田とはコンビを組んでいたし、武田はライトとも友人だった。わたしはライトと久田を引き合わせたのは武田だったろうと思っている。1918年、武田が突如として名古屋高等工業学校へ転任させられたのも陶芸の近代化のための一環だったのではないか。武田が目指していたのは「京都」の工芸近代化ではなく「日本」の工芸近代化だったと考え始めている。
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2022.04.23、イナックスライブミュージアム

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2022年3月19日 (土)

武田五一の部材が展示されていた

京都府立図書館の玄関ホールに旧図書館の部材が展示されていた。扉、階段手摺、天井飾りなど見どころ多し。圧巻は天上飾りで、欠けているため断面が見えて勉強になる。おそらくいくつかのパーツを現場で組み立て、継ぎ目をコテ仕事で隠しているのだと思う。次に行ったときにもっとよく見ておく。

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2022.03.18、京都府立図書館

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2022年3月18日 (金)

武田五一の街路灯が無くなっていた

噴水の両側にあった街路灯が無くなっていた。どこかに保存してあるのならいいのだが。これは小林さんが見つけたもので、わたしもできるだけ言い触らしてきたが及ばなかった。残念である。

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2022.03.16、京都市東本願寺前、工事中
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2021.04.22、電灯部分は失われておりポールだけ残っていた

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2021年12月31日 (金)

武田的ディテール(52)岡崎公園の大鳥居問題

この鳥居は幾何学的で作られている。鳥居の内側が正方形になっていることは以前から気づいていた。そこで全体がどうなっているのか写真をもとに検討してみた。

方眼にあてはめてみれば鳥居の内側は4:4の正方形であることが分かる。それを敷衍すれば高さは5、巾は約8の方眼にうまく納まる。実は5:8は大鳥居の一般的の比率であるようだ。有名な安芸の宮島の海上大鳥居も5:8の比率なのだ。

おもしろいのは5:8が黄金比であることだ。黄金比は1,1,2,3,5,8,13…というフィボナッチ数の隣り合うふたつを近似値として使うことが多い。武田が2:3の比率を多用するのはそのためだと本人が言っていた。だから大鳥居の伝統的な比率が5:8の黄金比であることにも武田は気づいていたろうと私は思う。

この鳥居がそっけないとそしる向きもあるが、そっけなさは武田的ディテールの本領なので問題ない。問題はこの鳥居が大きすぎたことにある。武田の誤算はそこにあった。あまりにも大きすぎるため地上から見上げたときに5:8の比率に見えないのだ。おそらく1.5キロほど離れた青蓮院門前あたりからならばきれいな比率で見えることだろう。今度確かめてみよう。

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