古民家の断熱改修を試算してみた
昨秋、省エネ基準が新しくなった。5年ほど後にはこの基準が新築住宅すべてに義務化される。古民家再生は新築ではないので規制されるわけではない。しかし古民家の断熱改修がどの程度可能なのか気になっていた。そこで簡単なもモデルを考えて試算してみた。結果から言えば断熱材を使えばクリアできる。
< モデル古民家 >
小さな古民家を断熱改修するとして想定した。モデルは68㎡の古民家で茅葺を鉄板で覆っている。
< 断熱仕様の設定 >
仕様は計算しやすいよう選んだだけで、特にこれがよいと思っているわけではない。
天井 : 高性能グラスウール48K・100ミリ
外壁 : 土壁80ミリ、妻側と北側の3面はウレタンフォーム吹き付け50ミリ
床下 : 外壁を土壁で密閉して屋内扱いとし床断熱はしない。
窓 : 2重サッシュ、木またはプラスチックと金属建具、ガラスは単板ガラス+Low-E複層、障子付きとする。
ドア : 金属枠に木製建具(引き戸でできるかは要検討)とする。
< 計算結果 >
25年度基準は3つの指標で省エネ性能を評価する。それぞれの結果は次のとおりだ。
1.外皮平均熱貫流率
これはいわゆる断熱性能のことだ。基準値以下となりオッケー。
0.76 < 0.87(w/㎡K、京都市域の基準値)
2.冷房時の平均日射取得量
これは夏場にどれだけ熱が入るかの計算だ。基準値以下となりオッケー。
2.71 < 3.0(単位なし、京都市域の基準値)
3.1次エネルギー消費量
これは設備選択のことなので計算はしていない。特に問題なくクリアできるだろう。
< 課題 > まず、新建材を使わなければ改修できないということに抵抗感がある。プラスチック系は火に弱いし、ガラス繊維系は水に弱いのも問題だ。ケイソウドのような熱抵抗の大きい断熱左官材料をうまく使えればありがたい。
茅葺を計算に入れることができれば小屋裏で断熱ができて吹き抜けを残すことができる。茅の熱伝導率はどこかに資料があるのだろうか。
気密性をどう考えるか。基準は高気密を前提としているが、中気密程度でもよしとするような弾力的な運用が必要だ。
町家の場合は両隣が立て込んでいるので、このモデルのような外断熱ができない。計算はしていないが厳しい結果になると思う。実際は立て込んでいるので両壁からの熱の出入りは少ないはずなので、実状に応じた特例が必要だ。
今回は古民家の断熱改修を試算したが、伝統工法による新築の場合も同じような結果になるだろう。古民家の断熱改修については先駆事例もあるようなのでこれから調べてみたいと思っている。
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