京都府古民家再生協会

2015年2月11日 (水)

古民家の断熱改修を試算してみた

 昨秋、省エネ基準が新しくなった。5年ほど後にはこの基準が新築住宅すべてに義務化される。古民家再生は新築ではないので規制されるわけではない。しかし古民家の断熱改修がどの程度可能なのか気になっていた。そこで簡単なもモデルを考えて試算してみた。結果から言えば断熱材を使えばクリアできる。

 < モデル古民家 >
 小さな古民家を断熱改修するとして想定した。モデルは68㎡の古民家で茅葺を鉄板で覆っている。

Dannetu


 < 断熱仕様の設定 >
 仕様は計算しやすいよう選んだだけで、特にこれがよいと思っているわけではない。

 天井 : 高性能グラスウール48K・100ミリ
 外壁 : 土壁80ミリ、妻側と北側の3面はウレタンフォーム吹き付け50ミリ
 床下 : 外壁を土壁で密閉して屋内扱いとし床断熱はしない。
 窓  : 2重サッシュ、木またはプラスチックと金属建具、ガラスは単板ガラス+Low-E複層、障子付きとする。
 ドア : 金属枠に木製建具(引き戸でできるかは要検討)とする。


 < 計算結果 >
 25年度基準は3つの指標で省エネ性能を評価する。それぞれの結果は次のとおりだ。

1.外皮平均熱貫流率 
  これはいわゆる断熱性能のことだ。基準値以下となりオッケー。

  0.76 < 0.87(w/㎡K、京都市域の基準値)

2.冷房時の平均日射取得量
  これは夏場にどれだけ熱が入るかの計算だ。基準値以下となりオッケー。

  2.71 < 3.0(単位なし、京都市域の基準値)

3.1次エネルギー消費量 
  これは設備選択のことなので計算はしていない。特に問題なくクリアできるだろう。


 < 課題 > まず、新建材を使わなければ改修できないということに抵抗感がある。プラスチック系は火に弱いし、ガラス繊維系は水に弱いのも問題だ。ケイソウドのような熱抵抗の大きい断熱左官材料をうまく使えればありがたい。
 茅葺を計算に入れることができれば小屋裏で断熱ができて吹き抜けを残すことができる。茅の熱伝導率はどこかに資料があるのだろうか。
 気密性をどう考えるか。基準は高気密を前提としているが、中気密程度でもよしとするような弾力的な運用が必要だ。
 町家の場合は両隣が立て込んでいるので、このモデルのような外断熱ができない。計算はしていないが厳しい結果になると思う。実際は立て込んでいるので両壁からの熱の出入りは少ないはずなので、実状に応じた特例が必要だ。

 今回は古民家の断熱改修を試算したが、伝統工法による新築の場合も同じような結果になるだろう。古民家の断熱改修については先駆事例もあるようなのでこれから調べてみたいと思っている。

 

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2015年1月29日 (木)

古民家の間取りがどれも似ている理由

 なぜ古民家の間取りがみな似ているのか考えている。地域ごとに間取りは違うという議論もあろうが、それは別の話なのでひとまずおいてほしい。

 その理由として最初に思いついたのは、生活スタイルが似ているからだろうということだった。生活スタイルが似ているから生活の器たる民家も似ると考えたわけだ。しかしこれには無理がある。今の民家形式が現れて約1000年、いくらなんでも生活スタイルは変わるだろう。実際、古民家は時代によって変っていく。しかし変化しながらも間取りはよく似ているのだ。

 家族構成もまちまちだし、生活スタイルも人によっていろいろあったはずだ。それでもかたくなに同じような平面を守り続けるのはなぜか。それは誰が使ってもよいようになっているからではないだろうか。つまり、どんな家族構成、どんな生活スタイルであっても住居として使える汎用型平面だというわけだ。

 現代は「自由な間取り」と称して好き勝手な平面を考え骨組みを後から無理やり当てはめることが多い。しかし現代の間取りも結構よく似ているのだ。不動産屋さんの掲示板を見れば、どれもこれもよく似ていることが分かるだろう。つまり、誰が買ってもそれなりに使える平面というものは必然的に似ていくのだ。

 住居は本来何世代にもわたって住み続けられるものだし、伝統的な木造であれば100年は優に使える。そのためには誰でも使えるようにシンプルな間取りにしておくことは大事なことなのだろう。考えてみれば、それが一番自由なのかもしれない。

 

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2015年1月21日 (水)

2015〈新春〉古民家交流会 in滋 賀

 近畿各府県の古民家再生協会の会員交流会が彦根市高宮町の近江商人の古民家・不破邸で開かれたので参加してきた。楽しかったので内容などをメモしておく。

 滋賀の会員さんからの報告発表が3つあった。最初は地元の間伐材を使った「すだれ構法」によるアーチ建築の取り組み。10年ほど続けてらっしゃって、ようやく注目されるようになってきたとか。何事も10年はがまんだと思った。富山で燻蒸乾燥をしたというのが興味深かった。60度くらいの低温で乾燥させるらしい。通常の強制乾燥よりも芯割れが少ないらしい。ふたつめは動的耐震診断法の紹介で、これは以前から聞かされている内容の確認だった。

 3つめは地元の間伐材を使った薪販売の報告。7年前に自宅に薪ストーブを入れたとき薪不足を知り、薪販売のベンチャーを始めたという。牧草用のビニルシートパッケージの機械を導入して新しい乾燥法を開発したり、アメリカ製の薪割木を買ったりと工夫を重ねながら次第に事業が軌道に乗るようすが興味深かった。薪の種類によって火持ちや灰の量が違うことや、乾燥方法によって乾き方や虫の付き方が変わるという話もおもしろかった。木材は建築専用だと思いがちだが、燃料としての使いかたも忘れてはならないだろう。


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 懇親会は本膳料理の膳組指導だった。古民家は冠婚葬祭ができるようになっているが、会場の不破邸も3座敷をつなげると相当広い宴会場になる。そこへ並べる本式のお膳を見本を見ながらみんなで並べた。本式なので本膳のほかに二の膳も付いた。おそらくそれはお土産用なのではないかと思った。

 膳組指導は滋賀の理事長の大森棟梁の発案だそうだ。住文化と食文化のつながりがよく分かる楽しい企画だった。大森さん、滋賀のみなさん、ありがとうございました。


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2015.01.18、滋賀県彦根市高宮町不破邸

 

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2015年1月18日 (日)

滋賀県彦根市の古民家

古民家交流会の会場に着いた。会場は格調の高い古民家だ。なかなかいい。

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2015年1月15日 (木)

京都府の古民家「北船井型」

今月の勉強会は北船井型を作った。小屋の鳥居を立てたところ、なかなかかっこいい。中村岳さんの作品を思い出した。梁が編みこまれるようになっていて、みんな作るのが大変そうだった。

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2014年11月24日 (月)

炭山の会・脱穀ワークショップ

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足踏み脱穀機


 先日刈り取った稲が乾いたので脱穀した。脱穀用の機械はいずれも地元小学校に保存されていた古いものだ。ひとつは金属製の足踏み脱穀機、もうひとつは稲わらを吹き飛ばす「とうみ」と呼ばれる木製の送風機でどちらも美しい。子供でも使えるほど操作性がよい。この日集まった22名のうち約半数はこどもだったが、彼らも十分に役にたってくれた。


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「とうみ」で稲わらを吹き飛ばす


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人気のあった一人用カマド


 その場で2合ほど玄米にして持参のひとり用カマドで炊いてみた。上手に炊けず水気が多かったが、甘くておいしかった。
 お米は生まれたときかた食べていたが、どんな風に育てているのか知らなかった。今回田植えから脱穀まで手伝わせてもらってそのことが少しは分かったのがうれしい。炭山の会の清水さんは今回収量が少なかったのが悔しそうだったが、わたしはとても楽しかった。それは集まったこどもたちもそうだったろうと思う。ありがとうございました。


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地元で獲れたイノシシ肉のみそ鍋


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炊き上がった新米

 

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2014年10月30日 (木)

稲刈りワークショップ

 炭山の会のメンバーが取り組んでいる水田の稲刈りに参加してきた。水田はほぼ毎日のように水を入れたり抜いたり調整をしてきたそうだ。そうやって大切に育てていたが、途中でイノシシの親子が棲みついて相当食べられてしまったらしい。イノシシは米を喰うのだ。せっかく実っていながら泥中に落ちている稲穂がたくさんあったが、それがイノシシの仕業らしい。そんなこともあって決して豊作ではなかった。でも自分たちが手で植えた稲がここまで育ったかと思うと感慨深いものがあった。稲刈りは生まれてはじめてだったが、お天気もよくとても楽しく過ごすことができた。ありがとうございました。


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2014.10.26、京都府宇治市炭山


 刈り取った稲穂は束に結んでハザに掛けて天日干しにする。ハザは古民家再生協会メンバーの大工さんの高田さんたちが竹で組んでくれた。


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ハザ掛け、2週から1か月ほど天日に干す


 こどもたちが竹を使って基地を作っていた。ハザは最初の古民家の形式だという説があるが、それを現実化しているわけだ。とてもおもしろい。古民家再生協会でもやってみたい。


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こどもたちが勝手に作った秘密基地、最初の民家の形式と同じ


 おみやげに枝豆をいっぱいいただいた。さっそく塩ゆでにした。とてもおいしかった。次の脱穀もぜひ参加したい。


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黒豆枝豆

 

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2014年10月26日 (日)

稲刈り中

稲刈り真っ最中。
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2014年10月 9日 (木)

夏休みの古民家キャンプ

 8月に京都府古民家再生協会でこどものための古民家キャンプを開いた。会員の森番匠と北部支部が中心になって企画し、会場は京都府京丹後市大宮町五十河(いかが)の古民家集落の1棟を借り受けた。11名参加でその内こどもは3名だった。楽しかったので感想をメモしておきたい。

 このキャンプはこどもたちに古民家の楽しさを知ってもらうのが目的だったが、到着するなり屋根裏や周辺の探検を楽しんでいた。今回は摩擦式発火法を試したが、1時間ねばっても火がつかなかった。これはこどもより大人が道具を独占して楽しんだ。わたしは星座速水盤づくりのワークショップをして暗くなってから星座を探したが、少し曇っていたのとすっかり酔っていたのでよく分からなかった。夜中に肝試しが始まるとこどもたちはキャーキャー言いながら楽しんでいた。

 北部支部の安井さんがホタテやサザエを差し入れてくださったので夕方から縁側で酒盛りが始まった。大きな古民家の広い縁側はとても気持ちがよい。セミの声に混じって遠い雷が聞こえてくる。丹後半島の山並みの向こうから大きな積乱雲が湧き上がるのをぼんやり見ている時間はとてもよい。

 わたしが今回一番印象に残っているのは蚊帳だ。森番匠が借り受けてきてくれた本物の蚊帳だ。暑い一日だったがこどもたちが寝静まると座敷に風が吹き抜けて夜が静かに過ぎていった。

 古民家キャンプを続けるいって、こどものなかからリーダーが育ち、こどもだけで運営できるようになるのが夢だ。古民家の使いかたはまだ分からないことが多い。火の起こし方、水の調達方法、流しや水屋の使いかたなど知らないことが多すぎる。そうしたことを少しでも知ることができる古民家キャンプになればいいなと思っている。


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2014.08.23

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摩擦式発火の実験

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こともたちが火の番をする

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蚊帳を吊った

 

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2014年10月 7日 (火)

古民家再生協会・近畿地区大会

 京都府与謝野町の加悦町ちりめん街道で、古民家再生協会の近畿地区大会が開かれた。とても楽しかったので感想などをメモしておく。

 今回担当が私たち京都府古民家再生協会だったので、北部支部を中心に準備をしてもらった。北部は養蚕によって地域経済が活性化した江戸時代後半に古民家形式と集落風景が完成している。私は北部の例会に参加するごとに北部の魅力にとりつかれた。京都の再生協会の本部は北部に置いたほうが良いのではないかとさえ思う。今回の地区大会の成果は最近活動が活発になってきた北部支部の活躍だったと思う。北部のみなさんありがとうございました。

 大会は講演2本とちりめん街道の見学だった。講演のひとつは私たち京都のメンバーの地盤機構の田中さんだった。加悦町は昭和2年の丹後震災の震源地に近かったがほとんど被害が出なかった。昔の人は地盤の良さをよく知っていたわけだ。田中さんの活動はそうした昔の知恵を現代によみがえらせようとしているとも言える。京都府北部地区の地震、浸水の過去事例を見せてもらいながら説明を受けるとそれがとてもよく分かった。田中さんありがとうございました。

 NPO法人ちりめん街道未来塾の田中東さんのお話しはとても興味深かった。利害の対立を乗り超えて伝建地区指定の賛同者を住民の8割まで得たお話しは圧巻だった。伝建地区になれば外観修理の国庫補助がつく。けれどすでに建て替えた家も多く全員が国庫補助の恩恵受けるわけではなかった。伝建地区になれば改築制限も受けるというデメリットもあった。困難な状況のなかで「景観こそ住民共通の財産だ」という共通の利益を見出すことで合意形成のプロセスを実践した上田さんらの活動が私はとても興味深かった。上田さんありがとうございました。

 ちりめん街道を歩くのは3度目だ。何度歩いても発見がある。今回は上田さんに案内してもらったので、いろんなことが分かった。貴人用の「露地門」、窓の光線反射板を備えた「機屋窓」、過去に建っていた3階建ての「丹頂閣」。いずれも明治以降のものだ。ここには5つの旅館があったという。独自の金融機関を持ち、地元資本で鉄道を敷いた明治時代ちりめん街道の風景が目に浮かんでとても楽しかった。上田さんありがとうございました。

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ちりめん街道旧尾藤邸照明器具

 

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