妄想読書

2017年8月10日 (木)

梨木果歩「裏庭」

 ファンタジーだった。異世界と現実とで書体を替えているのが珍しい。現実のドロドロが異世界で解き明かされていく対比がおもしろかった。

 名前の設定に凝るあたりは平山夢明の「ダイナー」主人公オオバカナコを思い出した。梨木果歩は前に「リカさん」を読んだことがある。人形たちの物語でおもしろく読んだ記憶がある。

 梨木果歩は35歳のときに「西の魔女は死んだ」でデヴュ。ベストセラーとなり翌年第28回日本児童文学者協会新人賞・第13回新美南吉児童文学賞・第44回小学館文学賞を総なめした。同年「裏庭」を出版し第1回児童文学ファンタジー大賞を受賞。世に出てから賞が追い付いていく珍しいタイプの小説家。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

石田衣良「池袋ウエストゲートパーク」

 意外にもハードボイルドだった。いつもクールなかっこいい主人公が駅前の果物屋の息子だというのもおもしろい。池袋のストリートギャングの話。ニューヨークみたいな池袋の感じがとてもよい。大阪だとどこだろう。南堀江か、それとも桃谷か?

 石田衣良は37歳のときにこの小説でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデヴュした。人気が出てシリーズ化された。次作も読んでみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年7月14日 (金)

瀧羽麻子「うさぎパン」

 表紙買いした。月イチ2文(参照)の2冊目。瀧羽麻子はたきわあさこと読む。

 あさのあつこは、読者を何ページ目で泣かせるかということをコントロールできると書いていた。それを思い出した。計算されているのだろうけどそれを感じさせない自然なストーリー運び。

 わたしの涙腺は「失われていたものを取り戻す」ところで緩むが、それは他の人も同じかも知れない。ストーリー運びの常套なのだろう。でも何度でも泣ける。ストーリーを仕込むと小説は自立するのだろう。でもストーリーって何だろう。

 瀧羽麻子は2007年ダ・ヴィンチ大賞を「うさぎパン」で受賞、26歳でデヴュ―。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年7月13日 (木)

夢枕獏「陰陽師」

 岡野玲子のコミック版は読んでいた。その独特の世界観が好きだったが、それは原作ゆずりだった。清明と博雅のかけあいが楽しい。キャラはかけあいから生まれるな。

 単行本が1988年だからもう30年も前だ。岡野のコミック化が1999年。コミックを読んでいなかったら原作も手にとっていなかったかも知れない。コミックは原作に忠実だった。岡野オリジナルの部分も夢枕の原作の延長上にあることが分かった。あまりにコミックが忠実なので、読んで浮かぶイメージが全部岡野の絵になってしまうのが難点かな。

 驚いたのは一文ごとに改行していること。いちいち改行するのでページの半分くらいは白紙だ。これってネット小説の書き方じゃん。30年前ならまだケイタイ小説もないぞ。なんでこんな書き方をしたのだろう。そういうのは誰に聞けばいいのか。

 月に2冊本屋で文庫を買って読む「月イチ文2」(参照)に参加している。これが最初。2017年6月。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年9月26日 (土)

高田大介「図書館の魔女(上)(下)」

 おもしろかった。上下2巻本の長編ファンタジーで読書の苦手な私に読めるだろうかと思っていたが、途中からどんどんおもしろくなって読み気ってしまった。楽しめたのはキャラが好みだったからだろう。主人公の図書館の魔女マツリカは典型的な内向思考型で、既存キャラで言えば「ゴシック」(2003)のビクトリカや「神様のメモ帳」(2007)のアリスあたりか。アニメ化してほしい。2010年講談社メフィスト賞受賞、2013年刊行。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年1月 4日 (日)

杉井光「神様のメモ帳」(1)-(9)

 これも私好みの話だった。状況が変わることによって凡才が天才に変る物語だ。アニメで興味をもって原作を読んでみたらもっとおもしろかった。舞台の池袋かいわいの日常風景が秀逸だ。アニメでもそうだが、背景がしっかりしているほうが私は好きだ。9巻もあるがすぐ読み切ってしまった。続刊を希望するが無理だろうから1巻から読み直している。


 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

村上龍「半島を出よ」(上)(下)

 冒険小説である。村上龍は初めて読んだがおもしろかった。上下に分かれて長編の部類だろうが、ライトノベル並みにどんどん読める。何がおもしろいかと言うと、世の中から役に立たないとレッテルを貼られた少年たちが世の中がひっくりかえる危機に直面して誰も動けなくなったときに大活躍するところだ。本人たちは変っていないのだけれど、社会状況が変わることで天才として立ち顕れる。この逆転が胸をすくように気持ちがよい。


 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年3月26日 (水)

ラノベの近況

 今年になってからあまり読んでないがメモしておく。

 おもしろかったのは「福家警部補の挨拶」「福家警部補の再訪」「福家警部補の報告」のシリーズ。これは先に紹介したが(参照)、続刊がキンドルで出版された。端末が1万円ほどするので買う気がしない。早く本にしてほしいおねがいします。


 あとおもしろかったのは池井戸潤「不祥事」。銀行を舞台にしたビジネスものだが、明快な勧善懲悪で安心して読めた。ヒロインがかっこいい。続編が出れば読むかもしれない。


 興味深かったのは加門七海「大江戸魔方陣」。レイラインを江戸に応用したもの。易を無視しているのが気にいらないが、戦国期の風水もラインで考えるのである程度共通性はあるだろう。最近はやりの風水が、フリーメーソン的魔術の日本版として考えられていることがよく分かった。


 和田竜「のぼうの城(上)(下)」は残念ながらよく分からなかった。トルストイの「イワンのばか」の写しなのだろうが「イワンのばか」ってこんな話だったっけ? もっと人智を超えた天変地異が起こってしかるべきではなかろうか。

 
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月29日 (水)

深沢美潮「女優のたまごは寝坊する。」

 ラノベのミステリーでおもしろかった。台本を読んでいるうちにそのなかの人物が自然と主人公の隣りにいるという設定で、このふたりのかけあいで真実を追うという趣向だ。事件が解き明かされるのと同時並行に台本上の物語も進んでいく。この物語もミステリーなのだが、まったく関係のないふたつの物語がパラレルに語られるとき、どっちが現実なのか分からなくなっていく。そこがおもしろかった。


 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年1月20日 (月)

大倉崇裕著「福家警部補の挨拶」(創元推理文庫)

 福家警部補シリーズはおもしろい。女刑事が主人公のミステリーで最初に犯行現場を見せるタイプ。密室トリックやアリバイくずしより、犯人を追い詰めていく心理劇に主体がある。でも本当に明らかになるのは主人公の素性のほうなのだ。

 主人公の素性は完全に伏せてあって、今3冊目を読んでいるが、いまだに下の名前さえ分からない。それでも1話ごとに少しづつ分かってくる。けっこうヲタクで、めっぽう酒に強い、とか。この小出しにするところが反則的におもしろい。たぶん最後にはいろんなことがばれるのだろう。追い詰められていくのは実は推理マニアの主人公のほうなのだ。目が離せないおもしろさである。
 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)