建築探偵の写真帳

2022年7月 2日 (土)

旧乾邸のディテール(5)

真ちゅう製の飾り格子や階段手摺の繊細さが意外だった。玄関回廊が中世風の重いテイストなのに、室内は近代的な軽さと明るさを兼ね備える。その軽さを金属格子が演出している。同じころの渡辺の作品である自泉会館にもこうした金属格子があったから、渡辺の手法のひとつなのだろう。

こうやって写真を見直しても作りかたがよく分からない。基本的に叩いたり伸ばしたりする鍛金なのだろう。真鍮のような堅そうな素材をよく自在に扱えるものだ。部分的に削り出しもしているようだが、鋳造のように見えるところもある。真鍮で鋳造ができるのだろうか。いずれにしても大阪の優れた金属加工職人の作品であることは間違いない。

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2022.05.19、神戸市東灘区住吉

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2022年7月 1日 (金)

旧乾邸のディテール(4)

中世風な回廊から一歩なかへ入るとモダンデザインに包まれていて面くらった。ひょっとして戦後の改装かと見まごうようなモダンさであった。

緑色の壁面は釉薬掛け布目ボーダータイル貼りで、ちょうどよい色むらが全体をタペストリーのように仕上げている。乾邸の特徴のひとつはこの見事なタイル遣いにあるだろう。そのタイル壁の装飾らしい装飾はなく、ここだけ見ればモダンスタイルの建物だと思ってしまう。

床はシンプルな大理石の模様貼りで、これもコルビュジェを思わせるほどのモダンデザインだ。とくに中央の小判型の模様の入れ方がいかにも大胆で、マチスをフォービズムを思わせる。

照明器具は古いのか新しいのか分からないが、ガラス玉で覆った特注の小型シャンデリアで、その光が白い天井に映って美しい。こういうところもモダンだと思った。

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2022.05.19、神戸市東灘区住吉

 

 

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2022年6月30日 (木)

旧乾邸のディテール(3)

回廊部分はヴォールト天井(かまぼこ天井)になっている。そこにガラスブロックのトップライトがあり柔らかい光が下りていた。円形ガラスブロックの配置が模様になっていて楽し気である。このガラスブロックが乾邸を訪れて思っていたよりモダンだと感じた最初だった。

ガラスブロックの枠が陶器製なのは珍しい。近代的なガラスブロックを中世風のタイル天井となじませるための工夫なのだろう。芸が細かい。

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2022.05.19、神戸市東灘区住吉

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2022年6月29日 (水)

旧乾邸のディテール(2)

回廊風の玄関ポーチがとてもよい。回廊の先端が飛び出していて車寄せになっているところが合理的だ。その部分だけ交差ボールトになっていて素晴らしい。三次元曲面を細長いタイルが覆っている。網代模様になっていて涼しげだ。

曲面なのでまっすぐ貼れないはずだが、破綻なく仕上げているところがすごい。タイルは角が丸いのは少しずつ角度を変えて貼ってもそのことを目立たなくするためだろう。細やかな心遣いである。

なぜ玄関が北向きなのか。それは眺望のよい南側を主要諸室に割り当てたからだろう。合理的な判断と言えるだろう。回廊はパーティ時に来訪者が溜まることができるように広くしている。その回廊と車寄せを合体させたところがおもしろい。

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2022.05.19、神戸市東灘区住吉

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2022年6月28日 (火)

旧乾邸のディテール(1)

初見の印象は思ったよりモダニズムだということだ。まだよく分からないところもあるが、気になったところをメモしておく。

その前に保存のいきさつを紹介しておこう。

この建物は保存運動の結果、相続から物納の流れを変えて神戸市所有になったと理解している。ウイッキでたしかめたところ震災前に市の購入が決まっていたそうだ。そういえばそうだったような気もする。

震災の結果、購入計画が宙に浮き物納の流れになったところを巻き返したということのようだ。よく遺せたものである。保存運動にかかわった方々には感謝しかない。

保存が決まった2010年ころから見たいと思っていた。しばらく改修工事で閉まっていたと思うが、そのうち抽選式の公開が始まった。でもハガキを出すのが億劫で伸ばし伸ばしになっていた。今回初めて応募したところ、めでたく入選し見学することができた。

当日は保存運動が形を変えた旧乾邸管理会が案内しくてくださった。日頃からお庭の草引きなどをボランティアでなさっているそうだ。頭が下がる思いである。建物も幸せな老後を過ごしているようで見ていて気持ちがよかった。

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2022.05.19、神戸市東灘区住吉

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2022年6月26日 (日)

奈良女子大記念館のディテール(10)

昨日、瓦師の道上さんから玄関ポーチの棟飾りと同じものを瓦で復元したことがあると情報いただいた。ブログで拝見するとほぼ同じもので、それぞれ同じ手本から描き起こされたと推定できる。

この床下換気口もそのたぐいだ。およそ山本のデザインらしくない。おそらく山本は装飾ディテールを描き起こすに当たって、なんらかの手本を見て間違いのないよう仕上げたのだろう。そのためにディテールによって個性がバラバラな印象を受けるのだ。そういうところにも山本の実直な設計手法がうかがえて興味深い。

今回の特別公開では山本治兵衛の設計をつぶさに見ることができて得るところが多かった。奈良女のみなさまありがとうございました。

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2022.05.04、奈良女子大記念館

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2022年6月25日 (土)

奈良女子大記念館のディテール(9)

玄関ポーチの棟飾りがことさらかわいい。四方に波がしらが立ち、中央からハスのツボミのようなものが突き出している。この真下の天井透かし彫りが武田だとすれば、これも武田なのかも知れない。いずれにしても見逃せないディテールのひとつである。

(追記)瓦師の道上大輔さんよりこれとよく似た瓦製の棟飾りを復元したことがあると教えていただいた。ブログで拝見するとほぼ同じもので、それぞれ同じひひな型から描き起こしたものであろう。武田が関与したものではなく当時のひな型集を確認すべきことが判明した。道上様ありがとうございます。

(道上さんのブログ)
未来工房/瓦人 
未来工房/瓦人 

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2022.05.04、奈良女子大記念館

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2022年6月24日 (金)

奈良女子大記念館のディテール(8)

講堂正面にギリシャ神殿風の門構えがある。おそらく天皇陛下のご真影を掲げる場所なのだろう。白い壁にブラウンの色使いが唐突な感じがする。意匠もよくできた新古典主義でこれまで見てきたディテールと違和感がある。よく見ると白い柱頭飾りの横に三角形の模様がある。その角度がギリシャ神殿風の破風の角度と異なる。この門構えは当初にはなかったのだと思う。残っている図面や竣工当初の写真を見れば確かめられると思うが公開されていなかった。せっかく改修したのだから山本治兵衛のデザインについてもう少し説明がほしい。

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2022.05.04、奈良女子大記念館

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2022年6月23日 (木)

奈良女子大記念館のディテール(7)

おもしろいのは折り上げ天井部分で梁が見えていることだ。これはクイーンポストトラスの下部分だろう。構造的に必要なものだから見えても差し支えないという山本らしい合理的判断がうかがえる。

同様に階段室部分にも梁が露出している。これが何なのかよく分からない。おそらく補強上必要なものなのだろうと思う。よく考えてみたい。

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2022.05.04、奈良女子大記念館

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2022年6月17日 (金)

奈良女子大記念館のディテール(6)

長椅子も当時のものだろう。昔の女子学生用なので座が少し低い。冷えないように座面に綿が入っている。それに合わせて窓の下も低く、座った状態で外が眺められる寸法になっている。窓下のパネルは階段手すりと同じゴシック風の模様だ。どことなく不思議の国のアリスに出てきそうな建物である。

2階の講堂には古いグランドピアノが置いてあった。この日は卒業生の見学者も多かったようで、このピアノをおもいおもいに弾くかたも多かった。それがいかにも女子師範学校という感じがした。

山本は学校校舎を生涯作りつづけた建築家だが、そこで学ぶこどもたちのようすを思い描いて設計したのだろう。ここは女の子たちが学ぶ場所だ。だからこの校舎はアリスに出てくるような楽し気な模様で満ちているのだろう。

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2022.05.04、奈良女子大学記念館

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