関西美術院再訪(7)平たい屋根の理由
現在の屋根の勾配も緩いが、その下に隠れている武田設計の屋根はもっと緩い。おそらく2寸勾配(10:2)くらいだろう。これは関西美術院のもっとも大きな特徴である。なぜこんなに緩いのか。
武田はどうやってこの屋根の勾配を決めたのか。屋根の一番高い画室の高さはおそらく2.5間、一番低いの附室の高さはおそらく1.5間だ。それぞれ必要最小限の高さである。この寸法で屋根をかければ、ご覧のような緩勾配屋根ができあがる。
武田は必要以上に天井高さを取るのを好まず、大阪中央公会堂コンペのときには低すぎると恩師辰野先生にしかられている。でも必要最小限で寸法を決めるのも武田のクセなのだ。結果的に関西美術院は扁平な建物となった。見栄えよりも必要最小限を優先したのは、いかにも合理主義者の武田らしい。
ただし、必要最小限の設計したのは武田のクセだけではない。これほど緩くなると瓦は葺けない。金属葺きとなるのが通常であるが、それを避けたのは音のせいだろう。もしこの屋根を金属で葺けば、雨の日の画室はたいへんな騒音に包まれるだろう。
そこで武田は高価なアスファルト防水を選んだ。工費は住友家が用立てたので高価な建材も使い放題ではあった。しかし武田ば不要な出費をきらう。平素の武田であれば勾配を改めて瓦葺きで仕上げたろう。そうしなかったのはなぜか。
おそらく工期がなかったのだ。関西美術院のオープンを急いだのだろう。ものすごいスピードで工事は行われたはずだ。講堂の竣工は1年遅れたが、それでもオープンにこぎつけられたのは武田のおかげである。
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