五龍閣のディテール(3)モザイクタイル
1枚目は玄関ホール、2枚目はサンルームのモザイクタイル。いずれも六角形である。玄関は大中小の青タイルの散らし模様だ。修学院離宮の「一二三(ひふみ)石」の翻案だろう。「一二三石」とは土間に黒石を星のように散りばめたデザインだ。石がそれぞれ1,2,3個なので「一二三石」と呼ばれている。
サンルームでは大柄な植物文様だ。四角いモザイクタイルで定番の模様だが、それを六角形でやってみたというデザインである。とてもきれいだ。
日本のタイル100年展(2022、イナックスライブミュージアム)で見た旧岐阜県庁(1924、矢橋賢吉設計)のものが、初期の六角モザイクタイルと紹介されていた。それより3年早い。100年展では岐阜県庁のものは伊奈製陶製と推定していた。ならばこれもそうだろう。
武田は1918年に京都高等工芸学校から名古屋高等工業学校へ転任した。わたしは国会議事堂設計のための国産タイル開発が赴任の理由のひとつだろうと考えている。
矢橋は議事堂設計チームの主任である。一方、松風家は清水焼の窯元だった。松風家は輸出食器で名をはせた。その後電気工事のための碍子を開発して業態を拡大し、いまでは義歯のメーカーとして知られている。つまり明治以降、新技術開発ひとすじの家柄なのだ。六角モザイクタイルは、国会議事堂、矢橋、武田、伊奈製陶(常滑焼)、松風家(清水焼)のラインで実現したのではないか、というのが今のところのわたしの推理である。
2024.12.02、京都市東山区
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