夢の国奈良ホテル(15)魚眼に写る古都
玄関ホール奥にバーがある。その入口のランマに絵の入ったすりガラスがある。サンドブラストなのかエッチングなのか技法は判然としない。
模様は魚のかたちだとされる。ラグビーホールのような枠に古建築が納まり、その下端に尻尾が付け加えられている。たしかに魚だ。魚は水に棲むので防火の願いが込められている、という。そのことについて考えておきたい。
描かれている古建築は塔と鐘突き堂の2種。塔はバルコニーから見える興福寺東塔だろう。シルエットがよく似ている。では鐘突き堂はどうか。これは東大寺鐘楼(しょうろう)で間違いない。
この鐘は日本一大きいと言われている。その重量を支えるための工夫がこらされているが、なかでも柱の中間を横材が挿し貫くのが特徴だ。図のなかで大鐘の左右に突き出している横線は鐘つき棒ではなく、その横材である。横材の先端が斜めになっているところもそっくりだ。
おそらく東大寺の鐘つき堂もバルコニーから見えるのだろう。この図はホテルから見える古都のパノラマの特徴的な建築物をテーマとしている。だから、それを囲むラグビー型は目であろう。その目がなぜ魚に変化するのか。
正直申し上げてまだよく分からない。景色をひとつずつ目に納めることを魚釣りになぞらえたのかもしれない。古都の風景のなかで釣りをするようにゆっくりしてほしいという意味なのかな。
2024.07.26、奈良市
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