復旧のための下見をしてきた
被災地からNPOアセックに対して救援依頼があったので、5名のチームで3月16日から17日にかけて現地下見をした。
NPOアセックとは文化財修復構造技術支援機構の略称である。神戸の震災以来、震災復旧や構造補強の技術支援に当たっている。構造学者や建築史家のほかに大工棟梁や瓦職人、左官技術者などで構成されている。わたしは意匠系の設計者なので主に構造実測を担当している。
できるだけ地域全体の被災状況を確かめたかったので、要請のあった宝達志水町の現場のほかに輪島市、門前町、内灘町などを駆け足で見てきた。被災状況と今後の行動についてメモしておく。
<被災状況>
・輪島の中心市街地の木造建物は戦後のものが多かった。構造部が倒壊したものは全体の1割、構造復旧が必要なものは全体の1~2割程度。残りは構造復旧の不要な軽微な損傷にとどまっていた。液状化現象の跡がいまも残っていた。
・門前町(輪島市)も同じ状況。ここは中山間地なので液状化現象は見当たらなかったが、それでも被災程度は輪島と同じだった。道路添いで地滑りを複数見たので、表層地盤が動いた可能性はあるだろう。この地域は伝統木構造である枠の内造りが多いように見えた。
・黒島町(輪島市)はほぼ枠の内造りの古民家が並ぶ。被災程度は門前町より少ないように見えた。4秒間で4メートル隆起した海岸のようすを確かめてきた。なお、耐震補強しながらも倒壊した旧角家家住宅は今回は見ていない。
・内灘町 砂丘下で液状化現象の跡が今も残っていた。地表が波打ったために傾斜したものが多い。液状化現象による免震効果のために構造部は軽微な損傷にとどまっている。倒壊したものは少ない。全体の3割程度が復旧が必要なほどの傾斜被害を受けている。砂丘上はほぼ無被害だった。
<今後の行動>
・被災建物の多くが傾斜を修正すれば復旧できることが分かった。ジャッキアップや薬注リフトアップなどの復旧方法を示すパンフレットを作成し現地説明会を開く。
・被災地で建て起こしのモデルケースをつくる。
2024.03.17、輪島市内
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