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2023年10月

2023年10月31日 (火)

諏訪立川流研究(9)渋薬師庵(1931)

渋薬師庵(1931)の見事な木彫。輪郭がふわふわと揺らめくようすは諏訪立川流の特徴だ。昭和になっても立川流は健在だった証拠だろう。

薬師庵は渋温泉を開いた行基ゆかりの薬師堂。お堂までの急な石段の下に共同浴場とがあり、このあたりが湯町の中心であったことが分かる。金具屋もこの薬師堂の隣りにある。

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2023.08.30、長野県山ノ内町渋温泉

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2023年10月26日 (木)

諏訪立川流研究(8)布橋(1777)

布橋と名付けられた回廊がある。歩くと境内がとららちら見えて楽しい。御柱祭の柱が通る道だそうだ。祭祀的にどのような意味があるのか不明。布橋の入り口に彫り物があった。二代目立川棟昌の作と聞いたが、秋宮のときのような動きはなかった。後補なのかも知れない。

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2023.08.29、長野県諏訪市、諏訪上社本宮

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2023年10月25日 (水)

諏訪立川流研究(7)本宮社殿(1830-38)

上社本宮は前宮のすぐ近くにある。社殿は2代目立川和四郎宮昌による1830‐38年の作品。諏訪立川流を代表する作品と言われるが境内へ入れないので遠くてよく見えない。

写真は幣拝殿。下社の拝殿に当たる建物だ。下社の場合、拝殿のなかに御宝殿が2棟並んでいる。それが社殿かと思ったが、本宮では御宝殿は拝殿とは無関係に脇のほうにあった。

ようするに御宝殿は社殿ではない。諏訪大社はどの宮にも社殿はない。社殿がなく森や山を直接祀る形式は三輪大社や石上神宮などがある。諏訪大社はそうした古い祭祀の形式を護っている。

ちなみに拝殿の左右に伸びる回廊は片拝殿と呼ばれる。片拝殿を備える形式を諏訪造りという。なぜ拝殿が3つつながるのかは考えてみる。

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2023.08.29、長野県諏訪市

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2023年10月24日 (火)

諏訪立川流研究(6)前宮十間廊(1959再建)

十間廊(じっけんろう)昭和34年に再建された。長い建物で渡り廊のように吹き抜けている。風が通り抜けて気持ちよい。柱が丸いのも輪郭を優しくしている。奥に上段があり、そこだけ格子がはめられている。その場所だけ特別感があり、神事を行うための施設であることが分かる。

とくに彫刻があるわけではないが、美しい建物だ。春宮の下馬橋でも思ったが、プロポーションが美しいのが信濃建築の特徴かも知れない。

元は神原廊(ごうばらろう)と呼んだらしい。春に鹿の頭を75頭分を並べる御頭祭(おんとうさい)を行うという。金気を克して木気を援けるという春をことほぐ祀りなのだろう。

前宮(まえみや)は元、本宮があった場所だそうだ。古墳群のなかにあり、昭和になってから社殿が建てられた。それまで社殿はなかったのだろう。

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2023.08.29、長野県茅野市、前宮

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2023年10月21日 (土)

諏訪立川流研究(5)春宮下馬橋(1736-1760)

春宮の下馬橋がおもしろかった。渡り廊と反り橋が一体化した建築で珍しい。橋は反っているのに回廊屋根がまっすぐなのが美しい。反り橋の曲がった桁を四分割して柱にさしこむ細工がさすがだ。

三井伝左衛門が元文年間(1736-1760)に作ったとされる。諏訪大社の4つの宮のなかで現存最古とみられている。ていねいに修復が重ねられており、ほぼ元のまま残っているのがすばらしい。

元来、信濃には飛騨の匠に匹敵する木工文化があったのだと思う。飛騨は長尺材の飛騨川を使った供給体制の確立とともに発展をとげたことは先に見てきた。諏訪の場合は諏訪湖を源流とする天竜川を使った流通体制の成立が背景となり木工文化が隆盛したのではないか。

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2023.08.29、長野県下諏訪町

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2023年10月20日 (金)

諏訪立川流研究(4)春宮拝殿(大隅流)秋宮拝殿(立川流)

大隅流の春宮のほうが全体的に過剰である。これが本来の形式だったのだろう。それは2階バルコニー下の装飾を比べるとよく分かる。春宮のほうが立体的で陰影が濃く、装飾が柱梁の枠組みからあふれ出している。この過剰さは桃山時代以来の伝統といえよう。

立川流の秋宮は個々の彫刻の輪郭がゆらいでいるところに特徴がある。獅子やバク鼻のラインが柔らかく波打つことで大隅流よりも流麗な印象を受ける。桃山時代の力強さから江戸後期の優美さへの変化が起きているのかもしれない。

この目新しさがうけたようで諏訪立川流はまたたくまに全国に普及したという。大隅流は幕府作事方の平内正信(へいのうち、1583-1645)が初代。江戸の立川(たてかわ)流は立川小兵衛富房(こひょうえ、初代立川和四郎の師匠)が初代。

Img_7435秋宮(立川流)
Img_74562春宮(大隅流)
Img_7437秋宮(立川流)
Img_74592春宮(大隅流)
2023.08.29、長野県下諏訪町

 

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2023年10月19日 (木)

諏訪立川流研究(3)春宮拝殿(1780)秋宮拝殿(1781)

神仏分離までは楼門と呼んでいたようだが、いまは拝殿という。春宮、秋宮ともまったく同じものが建っている。秋宮拝殿は1781年、春宮拝殿は1780年の竣工。秋宮は初代立川和四郎富棟、春宮は地元の宮大工棟梁・柴宮長左衛門の作品。

木彫細部を見る前に整理しておきたい。

ひとつは18世紀後半に木工事から木彫工事が独立したということ。この事象は兵庫県但馬地方でも見た。おそらく全国的な動きだったのだろう。なぜこうした事象が起こったのかは不明。おそらく材木流通と請負制度の変化が関係している。

もうひとつは木彫の名手は諏訪立川流だけではなかったこと。それまで長野県全域でさかんに木彫が行われており大隅流を名乗っていたそうだ。そのなかから諏訪立川流は幕府小普請組系の立川流を名乗って頭目を表したとみるべきだろう。春宮担当の柴宮は大隅流の名手として知られていたそうだ。

Img_7434秋宮拝殿
Img_7456春宮拝殿 

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2023年10月18日 (水)

諏訪立川流研究(2)諏訪大社秋宮神楽殿(1835)

秋宮   は大きなしめ縄が印象的だ。この神楽殿は1835年、諏訪立川流二代目立川和四郎富昌の作品。軒が深いのは雪国のせいだろう。明快な構造と絶妙なプロポーションの美しい建築。木彫も控えめで全体の構成を乱すものではない。この建物と比べると松本の開智学校の装飾過剰がよく分かる。

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2023.08.29、長野県下諏訪町

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2023年10月17日 (火)

諏訪立川流研究(1)旧開智学校(1876)

いまは国宝となっているが、よく残ったと思う。関係者の努力に敬意を表したい。耐震工事中でなかの見学はできなかった。閉じられた正面扉に張り付くっようにしてスケッチした。もっと近くで見たかった。

全体に思っていたより統制のとれたデザインだった。もう少し部分の主張が激しかろうと思っていたのだが、全体プロポーションが厳格で、部分は全体を乱さないよう細心の配慮がほどこされていた。

近年、とりつけられた木彫が諏訪立川流の作品だと判明したとある。玄関上下の木彫がそれだろう。そのあたりだけ装飾が過剰なのは、立川流が意地を見せたように見える。そこがおもしろい。

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2023.08.31/ヴァフアール水彩紙粗目F4、グラフィックペン0.5、固形透明水彩 /長野県松本市

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2023年10月16日 (月)

桂湯

ほぼ昔のままの姿で営業なさっている。金属製の煙突が染工場風でおもしろい。煙突は戦後のものかもしれない。玄関部分は改造されている。道路側へ増築したのかもしれない。

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2023.09.06、京都市西京区

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2023年10月15日 (日)

建築探偵円満字洋介の選書フェア

 京都モダン建築祭に合わせて近代建築系の町歩き書籍を紹介する選書コーナーを作った。ほかに神戸のジュンク堂にもコーナーがあるかも知れない。

ジュンク堂書店大阪本店 イケフェス2023記念フェア
建築探偵の円満字洋介さん選書による「近代建築さんぽ」フェア
https://honto.jp/store/news/detail_041000082251.html

丸善京都本店 京都モダン建築祭がもっと楽しくなる!
円満字洋介さんおすすめさんぽルート+選書フェア

https://honto.jp/store/news/detail_041000082028.html
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2023年10月14日 (土)

武田五一の門柱発見!

これって武田五一の設計した京都市商品陳列館の門柱だよね。ただし、比較してみると微妙に違って、武田のものより簡素化されている。それでもよく似ていることにかわりはない。

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2023.09.06、京都市西京区(正体不明の門柱)
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2021.11.19、京都市岡崎公園(武田五一設計の門柱)

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2023年10月13日 (金)

本町の江戸菊

最近Xでどなたかが紹介なさっていたが、わたしもたまたま前を通りかかって、これっていつの建物だろうとしばらく眺めていた。

隅切の屋根の仕舞いがおかしいので、元は隅を切っていなかったことが分かる。隅を切ったのは戦後だろう。ならばやはり戦前の建物なのか? 

江戸菊は老舗のすき焼き屋さんで、HPによれば大正3年創業とある。見た感じで言えば大正というより昭和3年ころに見える。すき焼き食べたい。

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2023.09.24、大阪市中央区

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2023年10月12日 (木)

本町あたりの古いのかどうか分からないビル

外装が変わっているが戦前のものに見えた。理由は最上部の蛇腹飾りと窓のプロポーション。……わからんなぁ。

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2023.09.24、大阪市中央区

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2023年10月11日 (水)

本町あたりの倉庫的ななにか

本町あたりは御堂筋から少し入ると古いものが見つかる。見たところ昭和初期に見えるが、戦後すぐのものかも知れない。やけに長い下見板をきれいに張った良質の建物だ。

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2023.09.24、大阪市中央区

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2023年10月10日 (火)

仮設塔は踊る

 こういうの好き。シート張りのやわらかい仮設塔の前でからみつく電線を振り回しながら派手に踊るような電柱がおもしろい。とくに、仮設塔が青いミニスカートをはいているように見えるのがよい。スケッチしたらおもしろいかも。

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2023.10.05、大阪市北区梅田

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2023年10月 9日 (月)

中京区の洋館

 以前紹介した洋館が和風レストランになっていた。ほぼ元のままなのがうれしい。

木造洋館(2013.03.08) http://www.tukitanu.net/2013/03/post-b50a.html

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2023.10.07、京都市中京区、日本レストラン「饗応元

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2023年10月 5日 (木)

大阪メトロ本町駅のディテール(3)

ウイッキによれば、中央線の本町駅が本格的に開業したのが1969年、船場センタービル開業が1970年。この御堂筋線本町駅南改札はこのときのものだろう。床のクリンカータイル、天井の吸音石綿板、柱の黒いテラゾーブロックなど、改札回りのすべてのものが1969年当時のままなのではないか。

大判タイルは武田五一が駅ごとに色決めしたことで知られる。乗り過ごしを減らすための武田らしい工夫だ。この南改札まわりのタイルは戦前のものを参考に焼き直したものだろう。寸法精度が高く色味も戦前のものをよく再現している。

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2023.09.24、大阪市中央区

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2023年10月 4日 (水)

大阪メトロ本町駅のディテール(2)

切符売り場も古い。こういうスチール製のパーティションは今はないが1960年ころには普通にあった。ステンレス製のカウンターがそのまま残っている。カウンター下はポリカーボネートではないか。素材の選び方にインテリアを工業製品として作ろうとしていた時代を感じる。

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2023.09.24、大阪市中央区

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2023年10月 3日 (火)

大阪メトロ本町駅のディテール(1)

これは古いかな。70年万博より前のものに見える。時計は入れ替わっているかも知れないが、数字のロゴがおもしろい。時計右の緑色部分は掲示板で、その左の白アクリル部分は電光広告だったのかもしれない。本町駅はおもしろいな。

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2023.09.24、大阪市中央区

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2023年10月 2日 (月)

大阪朝日生命館ビル

耐震補強をしたうえで外装も新しくなった。前と同じアルミのスパンドレルに見えるが、これって貼り換えたのか、それとも塗装したのか。アルミに塗装なんてできるのか? よく分からない。

印象がだいぶ変わったが、隅丸サッシがそのまま残ったのはよかった。「大阪ビル景」によれば、竹中工務店設計施工1962年竣工。

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2023.09.17

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2012.02.25

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2023年10月 1日 (日)

大阪ガスビルディングのディテール(4)

ガスビルの南西角だけデザインが違う。なぜこうなっているのかは知らない。知らないが、わたしはこの部分が好きだ。とくに4階の出窓がよくできている。庇先端の黒ラインが出窓を上下から挟み込んでいるところがかっこよい。

中がどうなっているのだろうと、ずっと思っていた。さぞ素晴らしいインテリアが残っているのではないかと思っていた。十年ほど前にセミナーを聴きに入館したところ、ちょうど出窓のあたりがショールームになっていた。

これ幸いと隈なく探査したところ何も残っていなかった。ただ壁の一部が外に張り出しているだけだった。おそらく改修の際に改造されてしまったのだろう。元に戻してほしい。

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2023.09.17、大阪市中央区

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