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2023年9月

2023年9月30日 (土)

大阪ガスビルディングのディテール(3)

ガスビルは窓と窓のあいだの付け柱が特徴のひとつだ。旧館(1933)と新館(1966)とで形が違う。

旧館は30センチほどの袖壁の先端を丸くしている。幅はタイル7枚分、出幅はタイル6枚分だ。新館は断面が放物線状になっている。巾はタイル8枚分、出幅はタイル6枚分。新館のほうが少し幅が広い。いずれも壁面に影を落としてリズム感を刻む効果がある。

新館は窓が大きいため付け柱が少ない。付け柱を少し大きくして存在感を出そうとしたのだろう。放物線断面にしたのは影の落ち方を滑らかにしたかったのかも知れない。実際は旧館と同じ断面であってもさほど違いはなかろう。

Img_7879新館(新館)
Img_7871旧館(南館)
Img_78682右側が新館(増築)
2023.09.17、大阪市中央区

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2023年9月29日 (金)

大阪ガスビルディングのディテール(2)

ガスビルの北側入口にガス灯があるのを知らなかった。のぞき込むと着火用の小バーナーが炎を吹いている。本バーナーは棒状のもので、それを白いレース状のカバーが包んでいる。温かみのある色合いがとてもよい。

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2023.09.17、大阪市中央区

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2023年9月28日 (木)

大阪ガスビルディングのディテール(1)

角地に建つと2面が同時に見えるので、建物を大きく見せることができる。ガスビルの場合は東面と南面が同時に見える。各階の庇が奥へ続くので伸びやかな印象を受ける。

角を丸くしたことで左右の庇が連続し、さらにおおらかさを得ている。軒先を黒のラインに仕上げたのも、水平性を強調するのに役立っている。とてもきれいだ。

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2023.09.17、大阪市中央区

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2023年9月27日 (水)

聖ヨゼフ修道院門の家のディテール(4)

吊り下げ形の門灯が錆びて好ましい古さを獲得している。ランタンとそれを吊り下げる横棒とがブロンズ(青銅)製で、それを支える持ち送りが鉄製だ。ひとつの器具にふたつの材料を使うのは珍しい。

窓枠に開き窓が風にあおられないように止める止め金が残っていた。これはブロンズ製の鋳物だった。特注かもしれない。わたしもこういう細部まで職人さんと相談しながら建物を設計したい。

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2023.09.10、京都市上京区

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2023年9月26日 (火)

聖ヨゼフ修道院門の家のディテール(3)

タテヨコの材をつなぐ部分は「長ホゾ差し込み栓留め」となっている。ホゾ差しとは、片方の材にホゾ穴を開けて、そこへもう片方の材の先端を差し込むこと。

挿し込んだあと動かないようにピン状のもので留める。このピンのことを込み栓という。ここでは四角い込み栓を使っている。和風の込み栓と同じである。

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2023.09.10、京都市上京区

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2023年9月25日 (月)

聖ヨゼフ修道院門の家のディテール(2)

レンガはヴォーリズが使うような不揃いレンガだ。わざとこうしたレンガを集めたのだろう。これだけ捻じれたレンガをよく積みあげものだ。レンガの継ぎ目は砂漆喰に見えるが、砂を多めに入れたプラスターかも知れない。風化した目地の表面に砂目が浮いてよい感じである。

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2023.09.10、京都市上京区

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2023年9月24日 (日)

聖ヨゼフ修道院門の家のディテール(1)

旧住友別邸の門衛所。戦後、カトリック系の修道院となっている。母屋は建て替えられた。文化財オンラインによれば住友営繕の多久仁輔の設計とある。

ご覧のようなイギリス風民家風のハーフチンバーで田園都市の風貌がある。L字形のシンプルな平面だが、南側と東側に出窓があってシルエットを複雑にしている。なかなかうまい設計だ。

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2023.09.10、京都市上京区

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2023年9月23日 (土)

養父市梁瀬のタイル円柱

おもしろいモザイクタイルだ。X字の模様があるので中央がとがっているように見えるが隣りの白タイルと同じ形である。こうしたタイル円柱は昭和30年代くらいの建築でよく見かける。わたしは円柱用のモザイクタイルシートがあったのではないかと疑っているが確証はない。

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2023.09.16、兵庫県養父市

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2023年9月22日 (金)

養父市梁瀬の旅館街

旅館か料亭、貸座敷のようなものではないか。これが集中して建っている場所が残っていた。昭和初期のものに見える。2階座敷の濡れ縁の手すりがなかなかよい。通り全体が60年台の風貌を保っていて、トトロに出てくるボンネットバスがやってきそうだった。

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2023.09.16、養父市梁瀬

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2023年9月21日 (木)

養父スケッチ教室

梁瀬の古い町並みを描きに行った。複雑な屋根の民家があったので実演スケッチ。手前の2階建て部分が増築されて屋根が複雑になったらしい。描いているあいだずっと雷がなっていた。描き終わったとたんに雷雨となる。おかげで涼しくなった。

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2023.09.16、養父市梁瀬

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2023年9月20日 (水)

渋温泉の洋館

金具屋から駅のほうへ降りたところにあった。斜面に建っているのかも知れないが見かけは3階建てだ。下見板張りの洋館で屋根裏部屋の窓の桟が矢羽根になっている。その両側の壁がドイツ壁風なのもとてもよい。医院建築のようにも見えるが詳細不詳。

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2023.08.30、長野県山ノ内町渋温泉

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2023年9月19日 (火)

金具屋ディテール(5)

客室のようす。長押が回っているが書院造ではない。数寄屋造りだ。意匠を凝らすがくどいところはなく、案外さっぱりしている。何度も修理なさったろうが、当初の形をほぼ守っているように見えた。ここは3階の部屋。建物が雁行しているので2面に窓があり明るくて気持ちがよかった。

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2023.08.29、長野県山ノ内町「金具屋」

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2023年9月18日 (月)

金具屋ディテール(4)

浪漫風呂(S25)前の洗面台。銅の洗面器が置かれている。その向こうにはアルマイト製の湯たんぽが棚に並んでいた。タイルはマーブル模様の役物で珍しい。S25にマーブルタイルがあったかどうか知らない。もう少し後の時代のものかも知れない。タイルがはがれた跡があったがメーカー名は無かった。

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2023.08.29、長野県山ノ内町「金具屋」

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2023年9月17日 (日)

金具屋ディテール(3)

昭和25年に浪漫風呂を別当で建てたときの通路としてできたのだろう。モザイクタイル貼りの曲がり階段で、とても美しい。

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2023.08.29、長野県山ノ内町「金具屋」

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2023年9月16日 (土)

「京都大阪神戸名建築さんぽマップ」改訂2版予約受付中

2023年9月23日発行としてアマゾン等で予約受付が始まった。
前版から7年経って29件が解体されたので新しいものに入れ替えた。
また他に16件が用途や名称の変更があったので書き直した。
都市散策者のみなさま、ご活用ください。

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アマゾンリンク 京都大阪神戸名建築さんぽマップ

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2023年9月15日 (金)

金具屋ディテール(2)

1階の床には古株の輪切りが埋め込まれていた。ほかの場所には水車の歯車が埋め込まれていた。階段の手すりにも社寺の古材の柱頭部分を使うなどなかなか楽しい。2枚目は大広間に上がる階段。紅色の壁が美しい。手すりは水車の側板だろう。3枚目は大広間。すっきりと気持ちのよい広間だった。

宿泊棟「斉月楼」(S11)と広間棟(S11築、S25修理)のふたつが古いまま残されている。宿泊棟は4階建てだが、斜面に建つので1階や2階の山側は地中に埋もれているらしい。ならば建築基準法上は、地上2階地下2階建てとなるので既存不適格になるのかどうかは分からない。たぶん3階あたりに避難口があるのだろう。

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2023.08.29、長野県山ノ内町「金具屋」

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2023年9月14日 (木)

金具屋ディテール(1)

金具屋に泊まった。「千と千尋の神隠し」の舞台のモデルとなったとして人気の宿である。木造4階建ての見事な旅館建築で、竣工当時のディテールをよく遺してらっしゃった。戦後の観光ブームのときにツーリストから建て替えを迫られたが、それを断って名建築を守ったという。その英断のおかげで今でもこうして建物を楽しむことができるのは幸せだ。

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2023.08.30/ヴァフアール水彩紙粗目F4、グラフィックペン0.5、固形透明水彩 /長野県山ノ内町「金具屋」
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2023.08.29、長野県山ノ内町「金具屋」

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2023年9月13日 (水)

旧平安邸ディテール(5)

カマドの上部を銅で巻いていた。ほかで見たことがない。さすが銅の精錬を生業としていた家柄だ。銅板の端部をきれいに丸く巻いている。とてもきれいだ。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月12日 (火)

旧平安邸ディテール(4)

平安家の精錬所は昭和初期まで稼働していたそうだ。精錬所跡は芝生広場となっていてレンガ造りの炉の跡が残っていた。まわりにはカラミ石が並べられている。カラミは鉱滓のことで金属を採った残りかすのことだ。ルツボの形をしている。精錬所の横の谷は鉱滓捨て場だった。一面カラミで埋められているようすが壮観だ。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月11日 (月)

旧平安邸ディテール(3)

ボイラーが残っていた。古い設備が残っているのは珍しい。これは灯油ボイラーではないか。右横の太いパイプが風呂桶とつながる追い炊き釜だ。細いパイプは給湯と給気の配管だろう。手前の斜め部分のフタが給油口に見える。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月10日 (日)

旧平安邸ディテール(2)

説明書きにダントータイルとあった。ダントーは今は東京本社だが元は兵庫県淡路島で生まれたタイルメーカーで淡陶と書いたと思う。ここの菱形帯模様のような初期の国産マジョリカタイルを手掛けたことで知られている。床のヴィクトリア風タイルもおもしろい。色が濁っているのは滑り止めのために表面がざらついているからだ。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月 9日 (土)

旧平安邸ディテール(1)

旧平安邸をゆっくり見たと思っていた。機会があってそれが叶った。再訪した座敷には初夏の風が吹いていた。よしずを張った建具が涼やかだった。

母屋は大正時代の民家づくりだ。大黒柱は松だという。松の大黒柱を始めて見た。塗籠(ぬりごめ)造りなのは隣接する精錬所の火の粉を避けるためだろう。平安(ひらやす)家は江戸時代から続く精錬家だ。

精錬所は炉の炎を上げるために風の強い場所に建てた。平安家は風を知り尽くした一族だった。座敷を吹き抜ける風は銅を吹き分けるための風邪でもあった。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月 8日 (金)

旧平賀邸のディテール(5)

ほぼ全てのドアがレバーハンドルだった。これも珍しいと思う。平賀博士は大阪の工業近代化に尽力なさった方だから、レバーハンドルもアンダーカウンター式の洗面ボールも試作品なのかも知れない。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月 7日 (木)

旧平賀邸のディテール(4)

竣工当時(1918)のものだとすれば珍しいと思う。商標は見当たらない。白大理石のカウンターの下にボウルを取り付けている。下から洗面ボウルを押し当てる形をアンダーカウンターというが、大正時代には存在したとは知らなかった。

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2023.07.30、兵庫県、川西市郷土館

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2023年9月 5日 (火)

雷雨の修学院離宮を参観した(5)

西側に大きな土手を築いて水を溜めている。金閣寺庭園と同じ手法だ。ただし浴龍池のまわりに石組みがほとんどなかった。石組みを使って神仙郷を再現するのが当時の造園方法だったはずだ。それがないので読みにくい。

もっとも似ているのは平等院庭園だ。平等院と同じように修学院離宮の池の縁は石組みを用いず州浜として仕上げている。ここも平等院と同じ浄土式庭園なのかもしれない。

本来、土手の上に大きな樹木を植えなかっただろう。そうすれば空と空を映す水面とが一続きになる。それがもっともよく見えるのは島の上に設けられた「御腰掛」ではなかったか。夕焼け空が水面に映り、世界は上下とも深紅に染まる。修学院離宮庭園は夕陽に阿弥陀如来の来迎を見る日想観の庭なのかもしれない。これが今のところの結論である。

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2023.08.24、京都市、修学院離宮庭園

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2023年9月 4日 (月)

雷雨の修学院離宮を参観した(4)

窮邃亭の屋根にある切子頭(がしら)の宝珠を以前から見たかった。立方体の角を落とした形で切頂六面体ともいうそうだ。これは一体なにを示しているのだろう。扁額がシンプルな陰陽図だったことから、この切子頭も陰陽図なのだと思う。

切子頭の展開図に十二支を当てはめてみた。写真で見ると菊のご紋章のある面が斜めを向くように置かれている。窮邃亭は東西南北から45度傾いて配置されているので、菊のある面はそれぞれ
子(北)、卯(東)、午(南)、酉(西)を正しく向く。切子頭の宝珠は、ここが陰陽定まった聖域であることを示すための呪術であろう。

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2023.08.24、京都市

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2023年9月 3日 (日)

雷雨の修学院離宮を参観した(3)

窮邃亭(きゅうすいてい)は島の頂上にある。小高いので全体が見渡せる。窮邃亭は四方が開け放しにできる開放的な作りだった。ここは茶室ではなく茶屋(休憩所)だ。この風通しのよい茶屋でお弁当を広げるのだろう。修学院離宮庭園は大勢を招いて催す大茶会の会場というよりも、わずかな親しいものたちだけでピクニックを楽しむような私的な庭園に見える。

後水尾天皇のお書きになった扁額が残っていた。八角形をふたつ並べて、その交わったところに結び目を描いている。これは陰陽図だろう。八角形をふたつ並べてできた12ヶ所の角に十二支を引きあてる。陽気側である左側に6つ、陰気側である右側に6つだ。そう考えれば、ふたつの八角形に配置された窮邃の文字はそれぞれ陽気と陰気を示すはずだ。

窮はきまわる、邃は奥深いという意味だ。窮は空高く極まった天を指し、邃は大地の奥深まった地を示すのだと思う。もちろん天は最大の陽気であり、地は最大の陰気である。陽気側に陰気である邃を、陰気側に陽気である窮を置く。窮は陽気側へ、邃は陰気側へ戻ろうとするので陰陽は真ん中で入り混じる。陰陽和合の呪術であろう。

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2023.08.24、京都市、修学院離宮庭園

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