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2023年5月

2023年5月31日 (水)

旧浅田家住宅洋間

浅田家は生野の近代化に尽力した家柄だ。住宅は寄贈されて地域で使える施設となっている。和館と洋間で構成されていて、どちらも見ごたえがあった。洋間はなぜ?と思うほど屋根の勾配がきつい。積雪への対処かも知れない。インテリアは端正なセセッションスタイルで清楚な印象を受ける。丁寧な修復に頭が下がる思いだ。

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2023.05.20、兵庫県朝来市生野町、旧浅田家住宅洋間(口銀谷銀山町ミュージアムセンター)

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2023年5月30日 (火)

梅田名月館十三店

十三で降りたので思い出して現認してきた。看板など取りついているがほぼ元のままである。装飾は戦後に付けたものも多いが、建物は戦前のものに見える。手許の近代建築総覧(1980年版)にも大阪府の近代化遺産(2007年)にもない。戦後のものなのかも知れない。

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2023.05.25、大阪市

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2023年5月29日 (月)

マンション上に宇宙が見えた

マンションの駐輪場の上に月と金星が見えた。月齢は4.8。まだ宵の口なので空が群青色だ。直接宇宙をのぞき込んでいるような不思議な気分がした。

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2025.05.24、京都府

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2023年5月27日 (土)

むかしのコンクリート型枠を見つけた

 これってコンクリート型枠だよね。隣家との隙間が無かったので取り外せなかったものが、隣家が解体されたので見えたということだろう。今の型枠はパネルになっていて現場で組み立てるが、むかしの型枠は板とタテの桟木を使って現場で作っていたことがよく分かる。こうやって木目がコンクリートに写り込むわけだ。

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2023.05.25、大阪市中津

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2023年5月26日 (金)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(12)

初期のモザイクタイルは陶土の色そのままなのが基本だったが、昭和になって釉薬モザイクタイルが山内逸三によって開発されたと説明にあった。これが当たって多治見(笠原地区)がモザイクタイルの一大産地となったという。

山内による5センチ角くらい(1寸3分は4.29㎝)と2.6㎝角(八分は2.6㎝)くらいの試作品があった。釉薬が自在に変化して美しい。

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2023.04.23、岐阜県多治見市 

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2023年5月25日 (木)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(11)

見たい見たいと思っていた乾式成形機があった。これかぁ。上のハンドルを回すと男形と女型が締まって中の陶土が固まる。型は金属製で、これを特注すると100万円ほどかかると聞いたことがある。

乾式成形とは乾かして粉にした陶土を型にいれて圧力をかけて固める手法だ。それまでは水を含んだ粘土で形を作り、それを乾燥させてから焼いていた。陶芸と同じ湿式成形だ。

湿式の場合、乾くと5%ほど小さくなる。縮むだけでなく乾くときに歪んだり割れたりする。その点、乾式だと最初から乾いているので縮むことも歪むことも割れることもない。

乾かす時間も必要ないので工程を短縮することができる。乾式成形はタイルの工業化に大きな役割を果たした。現代のタイルの多くが乾式成形だが、それは成形しやすいモザイクタイルから始まったと言われる。それも最初は手動のプレス機だったわけだ。タイルが小さいので手動でも十分に成形できたということだろう。プレス機の実物を見るとそれがよく理解できた。多治見まで来てよかった。

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2023.04.23、岐阜県多治見市 

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2023年5月24日 (水)

つや消しをしない塗装は光る

塗料につや消し剤を入れない方が塗膜は強い。建築系のひとはすぐにつや消し剤を入れたがる。でも私はできるだけ入れないほうが良いと思っている。そのほうが塗膜は強いし、なによりよく光る。この地下道の塗装はつや消し剤を入れていない。土木系に人はたいがい入れないのだ。地下道にに降り込んだ光が強い塗膜に反射して明るい。とてもよい眺めだと思う。

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2023.05.15、阪急京都線西向日駅

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2023年5月23日 (火)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(10)

六角形のモザイクタイルだ。6分角とある。1寸(3.03㎝)が10分なので6分は1.8㎝だ。6分角とは1.8㎝角の正方形を切り抜いて六角形にしたという意味だろう。

昨年の「日本のタイル百年」で旧岐阜県庁(1924)の六角モザイクの展示あって、それは多治見モザイクタイルミュージアムの収蔵品だった。そこでは常滑製とあった。そこでは常滑製とあった。これは「ヘキサゴン」というのが商品名だろうから多治見産の六角モザイクなのだろう。

日本タイル100年(2)初期国産モザイクタイルを見よ
http://www.tukitanu.net/2022/04/post-afd56e.html 

落ち着いた黄土色をしている。割れた タイルの断面を見ると中まで同じ色だ。つまり釉薬ではなく原料とした土の色そのものということだ。陶土を粉砕して細かい粉にする技術があって初めて実現できるタイルである。

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2023.04.23、岐阜県多治見市 

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2023年5月22日 (月)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(9)

モザイクタイルを並べる枠を貼り版というらしい。貼り版そのものも美しい。タイルを並べたままの状態のものや、その上から紙を貼ったものもあった。紙貼り状態で出荷されるまでのプロセスがよくわかった。工業系の美術館は製作のプロセスが分かることが基本だが、ここはそれをうまく工夫して見せてくれるのでうれしい。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月21日 (日)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(8)

モザイクタイル製の手温めは初めて見た。テーブルになっていてフタにも模様が入っている。芸が細かい。

こうやって見てくると風呂場やキッチンの住設機器は、昭和初期から高度成長期までのあいだタイル工業が牽引していたことがよく分かる。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月20日 (土)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(7)

次から次へと現れるモザイクタイルの名品をひとつひとつ味わっていると1時間ほどがあっという間に過ぎた。ここはタイルマニアの聖地だ。

仮にN字型タイルと名付けたタイルを使った流しがあった。涼やかなモダン柄だ。やがすり文様のバリエーションにも見える。思えば江戸時代後期、大阪府南部で隆盛した河内木綿において、織り手は新しい縞模様を競った。いったん流行すれば考案した織り手には巨万の富が与えられたのである。

1950-60年代の多治見でも新しいモザイクタイルの考案が競われたのだろう。モザイクタイルのイノベーションはかくして進行したのであろう。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月19日 (金)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(6)

流しもよいものが並んでいた。モザイクタイルの既製品をうまく使って花柄を描き出している。清楚な図柄が流しの清潔感をひきたてている。縁どりの窯変タイルもなかなかよろしい。

この流しは長く使われてよい感じに古びている。毎朝このモザイクタイルを見た人がいたわけだ。モザイクタイルを使った半工業製品が日常生活に溶け込んでいたことがよく分かる。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月18日 (木)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(5)

この風呂桶は昨日のものと似ているが縁が違う。縁には緑色の大理石模様の何かがはめられている。「何か」は樹脂系の人工大理石か、もしくは樹脂表面に流し絵のように着色したものだろう。いずれにしても特許レベルの技術で、戦後高度成長期のタイル工業における技術革新の事例と捉えることができる。丸みを帯びたデザインはすっきりして秀逸であり、手貼りのモザイクタイルが親しみやすい。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月17日 (水)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(4)

タイル風呂がよかった。涼やかな彩りで美しい。洗い場とセットになっているのもおもしろい。

湯船は上へいくほど色が薄くなるグラデーションで飾り、中は真っ青だ。腰掛があり、底には玉石型モザイクを模様貼りにしている。バランス釜用の配管穴がふたつある。戦後のものなのだろう。

洗い場は白砂を這う植物文様で花弁を緑にしたのは色目を抑えて落ち着いたデザインにしたかったからだろう。

おそらく鉄網コンクリートの下地にモザイクタイルを手貼りしたもので、思っていた以上に手が込んだ高級品だ。側面にほこらしげに社章と特許番号を記したプレートがはめこまれている。

菱形にNマークは日東製陶だろうか? 識者の助言を乞う。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月16日 (火)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(3)

明るい展示室には全国から集めたモザイクタイルの建材が展示されている。明るくて見やすい。吸い寄せられるようにひとつひとつを眺めていて1時間ほどたったころ初めて気づいた。このメイン展示室は外部なのだ。

床に配水溝がある。銭湯やプールサイドにあるようなステンレス製の溝ふたが床にある。なぜだろうと思ったら天井の大きな穴にガラスがない。わたしはてっきりガラスがはまっていると思いこんでいた。二度びっくりである。

そこは穴があいているだけで風が入ってくる。雨が降ったら雨が降り込み、雪が降ったら雪が舞い込む。展示室は虫や鳥も自由に出入りできる外部なのだ。美術館が明るい洞窟として構想され、メインの展示室は光の差しこむ美しい鍾乳洞と考えることもできる。もちろん洞窟を彩るのはモザイクタイルである。

中央のタイル塔は下から生える鍾乳石(石筍、せきじゅん)で、天窓から垂れ下がる鎖でつないだモザイクタイルは天井から下がる鍾乳石なのだろう。いまどき空調をしない展示室などあるだろうか。なんといさぎよい設計であろう。さすが藤森さんである。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月10日 (水)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい(2)

4階まで階段を昇る。昇ことを強要されるようでおもしろくない。暗くて土壁風だが階段が直線なので洞窟探検のようなワクワク感もない。それでも仕方がないので言われたまま4階までたどりついた。しかしこの関門はパラダイスへ至る試練だったのだ。暗くて長くてつまらない階段を昇りきった先はタイルのパラダイスであった。暗い階段から明るい展示室への急展開は予想もしていなかった。なかなかおもしろい。

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2023.04.23、岐阜県多治見市

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2023年5月 9日 (火)

多治見モザイクタイルミュージアムが楽しい

正直言って目立ちたがりなだけの建築とあなどっていた。行ってみておもしろさがよく分かった。よくできている。

この変な輪郭は山をかたどっている。ミュージアムと向かい合うようにこれと同じ形の山があった。屋根の端に木を植えているのもこれが山であることを示す。そして大きな土壁は山の断面を示すのだろう。土壁のなかにタイルの飾り貼りがあった。これは山の土がタイルの原料であることを示す。まるで山のなかでタイルが結晶したようにも見える。風水的に言えば、土生金の相生の関係を表しているともいえよう。

入り口までのアプローチがおもしろい。あたりは平な平野だが、ミュージアムの入り口前は彫り込まれている。掘った土をまわりに盛り上げて前に輪を土手で囲んだ。土手の斜面をササをで覆っている。山道をたどって桃源郷にたどり着くような趣向がおもしろい。こういう自由な発想が藤森さんらしくて楽しい。

入り口はことさら小さく作られていて、いよいよ洞窟のなかへ入るぞというワクワク感があった。アプローチをたどるだけでテンションが上がった。なかも期待以上のおもしろさだった。それは次回に。

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2023.04.23、多治見市、モザイクタイルミュージアム

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2023年5月 8日 (月)

布引橋の菱形格子がかっこいい件

新幹線新神戸駅前の布引橋。1949年の銘がある。手すりが斜め格子になっていてかっこいい。とてもよいと思います。

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2023.04.22、神戸市中央区

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2023年5月 7日 (日)

いい感じの曲線

新十三大橋へ上がる高架道がいい具合にうねっていた。まるでブロントサウルスの長い首のようだ(見たことないけど)。

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2023.05.03、大阪市北区大淀中、十三バイパス

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2023年5月 6日 (土)

鏡の国のスカイビル

広場のまんなかから見上げると展望台のわっかが左右のガラス壁に映り込んで無限に増殖する。原さんの建物は京都駅もそうだけど鏡の作用を使ってだまし絵のようなおもしろさを作り出す。まるで鏡の国のアリスだね。

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2023.05.03、大阪市北区大淀、スカイビル

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2023年5月 5日 (金)

心斎橋筋の古い換気塔がなかに残っている

心斎橋駅の換気塔のなかに古い換気塔が納まっていた。上部のスリットから古い換気塔の上部だけが見える。今のものは古いデザインを踏襲しているとはいえ、古いものを残すのなら見せてくれてもよいではないか。古いものはステンレス製のフルボディで今ではなかなかできない優れものだった。その上の部分だけがかろうじて見えている。

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2023.05.03、大阪メトロ心斎橋駅

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2023年5月 4日 (木)

大阪メトロ心斎橋駅の新しい照明を見てきた

照明器具はひとまわり小さく作り直したそうだ。ステンレス製のかさをワイヤーで吊っているところは同じだ。一番底に非常用照明があるところも前のままだ。ソウメン鉢のような姿が並ぶ風景が踏襲されたことはうれしい。

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2023.05.03、大阪メトロ心斎橋駅照明

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2023年5月 3日 (水)

石切の洋館

近鉄奈良線の車窓から見えていた。下見板張りの洋館。石切に用事があって降りたので写真を撮ってきた。大事にお使いのようで原型がよく残っている。大正時代くらいのものかな。とてもよい。このあたりは洋館がいくつかあったが、この20年でほとんど無くなってしまった。

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2023.04.30、大阪府東大阪市石切

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2023年5月 2日 (火)

摂南大学住環境デザイン学科卒業研究発表 感想メモ(2023.05.02)

今年は講評を出すタイミングを失してしまった。3月に講評は書いたのだが、すでに卒業式が終わっていたのでそのままアップさせずにいた。ごめんなさい。

今年も展覧会ができてよかった。高校の先生が教え子の作品を見にきてくださっていた。卒業生のひとりひとりにさまざまな方の思いが重なっていることを感じた展覧会だった。卒業生そして関係者のみなさま、卒業おめでとうございます。

< 全体として >
何人かは展示をみただけでは理解ができなかった。そうした作品のなかにおもしろいものが潜んでいることが多い。たまたま作者が居合わせて話を聞いてようやく全貌が明らかになったものもある。ただし常に作者が立ち会えるわけでもないので、パネルを読めば全体像が把握できるようにしたほうがよかろう。わたしとしては一般図程度の図面があればうれしい。

プレゼンは図面と模型とドローイングの3種類しかないと考えている。図面はきっちり書けば模型やドローイング以上のすごみが出る。プレゼン手法のひとつとしてそろそろ図面をとらえ直す時期ではなかろうか。

< 個別に >

(稲地ゼミ)

・つなぐ、はなす、たのしむ【円満字賞】
徳島県の駅前と中山間部とをつなぐ移動販売車の4つ拠点を計画した。それぞれ共同農園、古着古本の修理工房、学生による共同キッチン付きギャラリー、保育園前のフリースペースなどの機能を与えた。共同農園の収穫物をキッチンで弁当に加工して各拠点で販売する。販売車で回収された絵本を工房で修理して保育園へ届ける。など拠点を行き来する楽しいアイデアに満ちている。コミュニティ菜園やリサイクルそして中山間部の過疎などの課題を販売車を巡らせることで再生させる提案である。新しい生活像を浮かび上がらせた構想力に脱帽した。

・子育ての輪 ~住まいと共にある子育て支援施設~【円満字賞】
兵庫県伊丹市内の既存の公務員合同宿舎に子育て支援施設を加えて団地再生をはかる計画。既存の団地4棟のうちの1棟は減築し残り3棟を改造した。駐車場、子育て支援施設、小規模な屋外本棚6ヵ所、貸し農園などを新たに設けた。団地棟は大きく改造することなく、1階南側に木造デッキの共有スペースを設けることで既存部と新設部とをひとつにまとめた設計手腕を評価したい。団地は高度成長期に核家族のイメージを作り上げた。それはそれまでの地域コミュニティを阻害する一面もあったが、この計画案は核家族という現実の上に新しいタイプの地域コミュニティが育ち始めていることを感じさせてくれた。

・創作によって人同士の交流が生まれる空間づくり
吉田鉄郎設計の京都中央電話局上分局(1923)をメディアセンターとして再生させた計画。神戸の旧生糸検査所を再生したKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸、2012)をよく研究している。これまで近代建築の外側は残すが内部は改造する再生が続いてきたが、それでは建築の歴史的価値を遺したとは言い難い。今後はKIITOのような新しい機能に転用しながらも歴史的価値を損なわない設計が再生の主流となるだろう。そのことをよく理解した作品である。

・重要文化的景観 高島市針江の魅力に触れる【円満字賞】
滋賀県高島市の古い集落である針江に体験型ツーリズムのための3つの施設をつくる計画。針江は張り巡らされた水路から清流を家へ引き込み生活用水として利用する「川端」が多く残る。3つの施設は針江の家並みを楽しむ高床式の展望フリースペース、川端を楽しむための立体噴泉を備えた宿泊研究棟、フナずし、アユ、ワカサギ佃煮など針江の食文化を学ぶキッチンダイニングなどの楽しい用途を配した。不定形な敷地に地域の既存風景によくなじむ木造建築がよくできている。設計力を感じる作品。

・住宅街の建築空間における居心地の良さに影響する要素の研究【松本賞】
   -社会科学,建築学,デザイン学,情報処理学での居心地の要素の比較から-
戦後開発の住宅地を流れるの農業用水路を活かしたウオーターフロントの設計。水路の4か所に小規模な親水公園を設けた。吊り床、植木棚、日除け、グリーンカーテン、橋などのモチーフを自由に組み合わせてワクワクするポケットパークをデザインした。ひとつひとつは珍しくないデザインモチーフだが、それらを組み合わせて物語を感じさせる場所を出現させる設計力を評価したい。

・箱が生み出す「匿名の都市」【円満字賞】
箱と呼ぶストリートファニチャーが呼び起こす行為の収集と研究。人ひとり入るくらいの箱の枠だけのものから面を取り付けたものまで8種類の試験体を用意し、それを飲み屋の並ぶ路地に設置して、どのような行為を引き寄せるかを観察した。行為は喫煙、駐輪、携帯の通話、飲酒、座り込みなど多岐にわたっている。箱という簡単な構造物がこれほど多くの行為を呼び寄せるとは驚きである。収集された行為の分類と考察を通して、箱は都市の匿名性と深く結びついていることを発見したところもおもしろい。今和次郎の考現学的手法を通して阿部公房の箱男のような超現実主義世界をかいま見せてくれるという都市論的作品である。

・避難所機能と教育機能が両立する小中一貫校について 
   -教室・特別教室への避難を想定して-
大阪府八尾市に避難所を兼ねた小中学校を計画した。災害時には1階が避難所として利用されるが、2階以上は学校として機能するよう工夫したことが特徴。危機管理は応急3週間、復旧3か月、復興3年と段階を踏んで行われるのがセオリーだが、近年は地域経済の復興を急ぐあまり災害直後から復興事業が始まり被災者が混乱することも多い。この計画は復旧の3か月をテーマとしたものだが、場合によっては長引く復旧期間にも柔軟に対応できる点が心強い。被災地の現状を踏まえた計画だと思う。

(川上ゼミ)
・未来の科学者を生み出す理科美術館【円満字賞】 
   -素材の新たな可能性で新たな光の現象を作り出す空間-
大阪府豊中市の羽鷹池公園にこどものための理科美術館を作る計画。こどもたちが何度でも訪れたくなるための工夫がふたつ。ひとつは隠れる、もぐる、のぼる、ぶら下がる、すべる、飛ぶなどこども特有の行動原理に合わせた仕掛けを順路を仕込んだ。平面計画を細胞膜のようなボノロイ図を使っているところもおもしろい。ふたつめは展示室やカフェに光の屈折や分散などを応用したこと。光を透過させたり分散させたりするさまざまな素材を使って光と色彩のあふれる魅力的な場を設計した。タウトのグラスハウスもかくやと思わせる優秀作品である。

・公民館×公園@梅田 
   -人の行動心理に基づいた集まり場所の提案 つどう・まなぶ・むすぶ-
こどもの行動原理の研究から導きだしたこどものための居場所を公民館として設計した。覗く座る隠れるなどこども特有の行動原理に基づいて、波型の壁に覗き窓とベンチを配したり、かまくら状の狭い場所を設けるなど楽し気な設計である。平日と土日とで使いかたを変えたり、季節ごとに日差しを取り入れたり遮ったりするような装置も組み込んで使い手の意思に従って環境をコントロールできる建築となった。自在に変形しながら時間を感じ取ることのできることを評価したい。

・世界の<外>に通じる都市の余白[開口部・裂け目]に関する研究
大阪市の遊休計画道路敷に一続きの回廊を計画した。交差点で区分けされた5ブロックに次第に高くなる建築を用意した。最初のブロックは屋台を置いた広場、第2ブロック以降は平屋から多層階へ高さを増していく回廊として設計されている。建物は中心線に沿ってスリットがあり陽光を取り入れる。スリットは道路敷が都市の裂け目であることを象徴的に示す。スリット(裂け目)からこぼれ落ちる陽光が季節と時間を感じさせる詩的な作品。

・霧と建築 -釧路駅周辺再生計画-
釧路炭田の生産縮小と林業不振による地域経済の急激な縮小に悩む釧路をタウンツーリズムによって再生させる計画。機関車車庫跡と引き込み線跡を使い、駅から港湾部までに回遊性の高いツーリズム拠点を作る。駅前の古い商店街は建て替えて観光客向けに再生し、港湾部には港旅館を設けた。釧路平原の霧にかすむ山並みをモチーフとした屋根の重なるランドスケープがおもしろい。

・時間と建築 ‐京都伏見の陰影が導く時間の建築化‐【 賞】
京都市伏見区の公営墓地に新たな祈りの場を設ける計画。敷地特性から導き出した特有点の日影を屋根のかたちに採用した。そうすることで斜面地に三角テントの集合体のような建築が展開する。多層階の吹き抜けに落ちる影が時々刻々と姿を変えるのが美しい。

・庄内の魅力[音楽×市場]の融合 二つの地域が交わる場
大阪府豊中市庄内駅を2階デッキ式に改造することにより東西に分断された地域を結びつける計画。東側の豊南市場を建て替えて2階デッキへのアプローチとし、西側の音楽大学にちなんだ屋外音楽スペースをデッキ上に設ける。2階デッキ式はこれまでの卆計で例があったが、東西の地域特性を設計のベースとしたところにこの計画案の特徴がある。地域への確かなまなざしを感じる作品である。

・新たな淀川舟運、枚方船着場にて【円満字賞】
かつての淀川舟運の拠点だった枚方宿を復活させる計画。現在は淀川と枚方宿とのあいだは高い土手と広い河川敷が遮っている。計画では淀川運航の船着き場を河川敷に設け、そこまでの長いアプローチを3つのブロックに分けて開発する。土手上にはリサイクルをテーマとしたワークショップとフリーマーケットのためのスペース。そこから淀川の風景を楽しむ遊歩道と生態系を学ぶ観察池のエリアがあり、船着き場には交流館を併設した。波紋と船形をデザインモチーフに選び、のびのびとした自由な設計となっている。河川沿いの景観に配慮して背の高いものを作らないのもセンスが良い。船から見たときにふたつの弓型スロープが重なる風景がとても魅力的だ。この学年でもっとも設計力を感じた作品である。

(白鳥セミ)
・ウクライナ侵攻における戦後の共生を目指したデザイン提案【松本賞】
戦地の川沿いに平和と鎮魂のための祭礼場を計画した。両岸に生命の木をイメージした拠点広場を設ける。訪れたものが写経のように祈りの言葉を布に書きつけ、それを天幕に作り直す。その作業そのものが祈りの一部であり、その天幕を使って年に一度、橋上の鎮魂の炎の前で儀典を行う。施設の計画だけではなく、そこで行われるであろう祭礼そのものを構想したのが特徴。祈りを布に置き換え、それが建築となるというスケールの大きな作品である。

・在日朝鮮人の差別解消に向けたデザイン提案 ~崇仁地区を題材に~
鎮魂をテーマとした公園を鴨川のほとりに計画した。魂を送る灯籠流し祭礼の拠点として公園は計画されている。公園には鴨川をミニチュア化したビオトープと灯籠を作る工房を設けた。思えば灯籠はもっとも小さな建築なのかもしれない。そこに入るものは人ではなく魂だ。建築のオリジナリティに触れる作品だと思う。

・曲木技術に針葉樹を活用する【円満字賞】
   ~曲木ヒノキ家具の開発研究~
ヒノキは曲木に使わないそうだ。通常、曲木には広葉樹を使う。ヒノキは曲げたときのシワとスプリングバックと呼ばれる元の形に戻る現象が難点だそうだ。この研究では濡れた布を使ってシワを少なくした。スプリングバックも技術的な工夫によって改善させている。実験を繰り返し最終的に家具に仕上げた根気強さは卒業計画のレベルを超えている。ぜひ実用化をめざしてほしい。

・ISRU(現地資源活用)「月面居住用建築デザイン」開発に向けた基礎的研究【円満字賞】
資材を現地(月面)で調達する建築の計画。レゴリス(表土)を分解して酸素そのほかの物質を抽出するプラントをまず設置する。そこで生成された物質を材料として3Dプリンターでシェルターのような建物を構築する。半割の土管のような形状がアナゴの巣のようでおもしろい。SFによくあるドーム型の宇宙コロニーよりも現実感がある。この研究は資材の輸送困難な僻地などの現地調達建築のシミュレーションとしても意義があろう。

(久富ゼミ)
・share × farm【田中賞】
共同農園を核とするシェアハウスに地域の伝統芸能の拠点を併設する計画。敷地は大阪府吹田市山田で山田権六踊りや太鼓神輿などの地域芸能が残るという。シェアハウスは3名から6名の住戸が7棟の28名定員。収穫した農産物の青空市や料理教室の開けるスペースがある。農園を地域交流のための拠点とし、さらに伝統芸能の継承にも役立てる。地域芸能は農事祭礼と結びつくことが多いので農園と祭礼の組み合わせはあながち異質なものどうしではない。農事と祭礼を通して地域コミュニティの再生を図ろうとする野心作。

・池の上の暮らし方【田所賞】
農地縮小により荒れた溜池の再生のために水上住居を設ける計画。敷地は大阪府泉佐野市。生態系保全のために埋め立てを行わず高床式とする。鋼管杭の上にデッキプレートを敷いて水上デッキを作り、その上に木造で小屋を建てる。デッキは隙間を開けた正方形の格子状プランで、水際の敷地形状に合わせて計画することができる。一定の間隔で塔状の散水ユニットを設け、炎天下に散水することで居住地の気温をコントロールする。池上という利点を活かしたパッシブデザインを考慮した作品だ。伊根町の舟屋に似た水上集落の風景もおもしろい。

・縁側のある図書館
吹き抜けを中心とした2層にまとめ、各階に縁側を巡らせた計画。各階に和室を設け自習室そのほかの用途に使われる。円窓や障子など和風モチーフが和室と縁側とをデザイン的に仲介させる工夫をしている。縁側は自由な読書の場として構想されており、どこでも好きな場所で読書ができるという魅力的な図書館となっている。3階に月見台を設けたのもおもしろい。

・狭小集合住宅
大阪市心斎橋のアメリカ村に小規模5階建てビルを計画した。1階は店舗8戸、2~5階に住宅10戸が入る。アメリカ村はほぼ全域が商業地区で容積率は500%あるが、前面道路の幅がほぼ5メートル程度のために300%しか建たない。もとから大規模なものが建つ地域ではなかった。それゆえに都心部でありながら比較的地価が安い。ゆえに賃料の安い新規事業者が集まる大阪のソーホー的地域として独特の風景を獲得してきた。その地域特性を活かすためには最小限住宅的なアプローチが有効であろう。そのことに真正面から取り組んだ努力作である。

・こども公園 -こどものためのピロティと建築-
大阪市天王寺区に子育て支援施設とコミュニティセンターの複合施設を設計した。斜面地の上下に2階建てと3階建ての2棟を建て、最上階をデッキでつないだ。デッキは広場を囲むように配され、その下のピロティをこどもたちの遊び場として開放した。雨や風を感じながら外で遊べるスペースは貴重だ。寒さや湿気を肌で感じて過ごすことはとても楽しい体験となるだろう。そうした楽しみにあふれた設計となっている。

・新しい都市住居のかたち -入れ子の形態操作を用いて-【円満字賞】
阪急三国駅近くの町工場と住宅地の雑居する下町に30戸ほどの住宅地を造る計画。全体を6つのブロックに分割する。区画のあいだは道路となる。各ブロックのなかを4~6戸の住戸に分割する。住戸のあいだは路地となりアプローチであると同時に風や光の通り道ともなる。一戸は立方体のような箱となっており、そのなかに2階建てのフレームを組み諸室を小さな箱として挿しこむ。小さな箱と大きな箱とのあいだは、階段廊下などの共用部分となるほか、光や風の通り道となる。かくして各住戸に新鮮な空気とふんだんな採光が供給されるという仕組みができあがる。住宅の外部にも内部にもすきまが存在し、それが暮らしを豊かにするというコンセプトは秀逸だ。すきまコンセプトによる住宅地はさらに拡大させることも、既存市街地のなかに分散させることもできるよう。今期の作品のなかでわたしがもっとも感銘を受けた作品である。

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永保寺庭園は月の庭だった(8)

こう考えてくると、やはり観音堂のご本尊は木気なのではないか。金気の岩から出てきたので金気の観音だと思ったが、梵音巌は補陀岩であり、補陀落山は観音浄土であるから金気と限らなくてもよいだろう。磐座の信仰は五行説が日本へ入る前からのものだろうから磐座イコール金気と短絡はできないのだろう。

さて、永保寺を訪ねたのは、京都の西芳寺(苔寺)庭園の元形を観たかったからだ。西芳寺庭園は水害を受けたようで元の姿が想像できない。文献上には観音堂があり、そこへ渡る橋がかかっていたとあるそうだ。永保寺庭園とそっくりである。

無窓を西芳寺に招いた藤原親秀は松尾大社宮司の家柄だった。西芳寺と松尾大社の中間に月読神社がある。月読神社は松尾大社の摂社である。やはり松尾にも月待をこととする巫女集団があったのだろう。西芳寺庭園も永保寺庭園と同じ月の庭だったのではないか。

足利義政は西芳寺庭園に感動した。そして母親に見せるためにそっくり同じ庭を高倉御所に作った。一草一木もゆるがせにせず、まったく同じにしたというから尋常でない。その庭の観音堂を移築したのが銀閣だとする説がある。銀閣寺庭園はご承知のように月の庭として知られている。移築が事実であれば、銀閣寺庭園が月の庭であるのは西芳寺庭園譲りだったわけだ。

子安祈願には女体保護も含まれる。また、水面に反射した月光には水気が宿り、それを浴びることで不老を得ることも見てきた。義政は月光反射の機構を使って母親の不老を願ったのであろう。案外、義政こそ夢窓作庭の最大の理解者だったのかもしれない。

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2023.04.28、岐阜県多治見市、永保寺庭園

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