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2022年5月

2022年5月31日 (火)

半田の旧カブトビール工場

これほど高いレンガ壁を見たことがなかった。なかなかの迫力で見にきてよかった。この壁面には屋根型が残っている。この壁から手前にかけて翼部が伸びていたそうだ。その部分を解体したところで保存が決まったという。保存のために奔走なさった地元の方には感謝しかない。

このビール工場は地元のミツカン酢の中埜家などが出資して生まれた。地域産業の振興と雇用の確保のために起こした事業だった。事業は成功してカブトビールは国内有数のビールメーカーに成長した。こうした先人の取り組みの記憶が地域に残っていて保存につながったのだと思う。保存されたのは地域の歴史そのものであろうとわたしは思う。
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2022.04.24、愛知県半田市、半田赤レンガ建物

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2022年5月30日 (月)

たんぼの銀河鉄道

今年もたんぼに水が入り、夜汽車の車窓が水面をすべる。2列の車窓の上下に夜空が広がって、まるで銀河鉄道のようだ。


2022.05.28、京都府向日市

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2022年5月28日 (土)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(9)

そもそも屋根窓の付け根は正三角形に見えるのだが、測ってみると正三角形ではなかった。ただ写真だと誤差が大きいので本当はどうか分からない。どこかに断面図が無いだろうかとさがしたところ国立科学博物館のアーカイブに聖ヨハネの断面図があった。

転載できないので結果だけ述べると大屋根の角度は52度だった。55度なら正三角形の四角錐になるのだが、それよりほんの少し低い。55度にするつもりは最初から無かったわけだ。それではどうやって屋根の角度を決めたのか。実は角度52度の四角錐がある。それはピラミッドだ。

キリスト教の象徴のひとつに三角形のなかに目を描くものがある。プロビデンスの目だ。三角形は天と地と精霊の三位一体を示し目は神のまなざしを象徴するという。プロビデンスとは神の意思という意味だそうだ。

三角形をピラミッドにしたものもありピラミッドアイと呼ばれる。これもプロビデンスの目の一種でドル紙幣に描かれていることで有名だ。フリーメイソンが使うシンボルのひとつでもある。聖ヨハネ教会とフリーメイソンとはまったく関係が無い。ただしフリーメイソンは匿名の互助組織だから個人的な献金があったのかも知れない。

最初のご紹介した礼拝堂出入口上の三角形の破風飾りも52度だった。この珍しい飾りもプロビデンスの目なのだろう。寄付をくださった匿名信者に向けた感謝のメッセージのようにも見える。屋根の52度はプロビデンスの目を設計の基本とした結果であるというのが今のところのわたしの結論である。
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2022年5月27日 (金)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(8)

屋根窓の付け根部分が正三角形ならば、そのことから屋根の角度は自動的に決まる。なぜなら正三角形の高さは√3(=1.73)だからだ。つまり屋根の勾配は1.73/1となる。角度に直すと54度である。見た感じ50度くらいという印象と矛盾しない。

図に描いたように屋根窓の付け根に四角錐を想定すれば分かりやすい。この四角錐は4面が正三角形だ。正三角形は天と地と精霊を象徴する聖なる三角形なのだから、それを設計の基本として屋根の角度を決めた可能性はありそうだ。

聖ヨハネは身廊と翼廊とが直行している。大屋根の角度が54度であれば、その交差部にも聖なる四角錐が隠されている。ここを中心としてこの礼拝堂は設計されているのか、と思った。いかにもありそう、と思った。でもその推理は間違っていたのである。なぜなら屋根の角度は54度ではなく52度だったからだ。

長くなったので続きは次回。

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2022年5月26日 (木)

大杉の養蚕農家のスケッチ

大杉の養蚕農家を描くのは何度目だろうか。最初に訪れてから5~6年になるかな。最初にこれらの養蚕農家を見たときのインパクトは今でも忘れられない。土壁の家はとてもいいぞ。わたしの理想の建築がここにある。

1枚目は大杉を代表する養蚕農家のひとつ。丁寧に修理なさっているのがありがたい。2枚目は建築家の河辺さんの自宅でカフェとギャラリーを併設してらっしゃる。3枚目はその遠景で、右が分散ギャラリー、左が民家ホテル「いろり」。

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2022.04.16/ワトソン紙はがきサイズ、グラフィックペン0.5、固形透明水彩/兵庫県養父市大杉

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2022年5月25日 (水)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(7)

屋根の角度はどうやって決めたのだろう。

外から見ていると大屋根も屋根窓の屋根もすべての屋根の角度が55度くらいになっている。60度であれば天と地と精霊を象徴する聖なる正三角形になるのだがそうなっていない。

礼拝堂の階段室の出入り口の上に三角形の破風飾りのようなものがついている。あまり他所では見たことがない装飾だ。この三角形も屋根と同じ角度なのだろう。角度55度くらいに見える。

で、中に入って屋根窓の取り付け部分を見上げるとこれがなんと!正三角形なのだ。偶然のようにも見えるが、最初からそうなるように考えていたようにも見える。

長くなったので続きは次回。

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2022.05.15、愛知県犬山市明治村、聖ヨハネ教会

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2022年5月24日 (火)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(6)

聖ヨハネ教会の2階部分の軸組を描いてみた。

聖ヨハネは同じかたちのクイーンポストトラスをタテヨコに並べて作られている。トラスがみんな一緒というのが聖ヨハネの特徴であって、そのことが礼拝堂のシンプルな美しさの原因となっている。

大きなステンドグラスが3ヶ所にあるが、それもみな同型である。同型のクイーンポストのなかにはめ込まれているのでこうなる。普通なら大窓のある外壁部分はレンガ積みとする。

もしそうなっていれば、内部から見たときの統一感が薄れてしまったろう。全部木造でつくるという聖ヨハネ選択が聖ヨハネのシンプルな美しさを際立たせているのだ。さすがガーディナーである。

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2022年5月23日 (月)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(5)

聖ヨハネは1階が幼稚園で2階が礼拝堂になっている。その大好きな礼拝堂がまるまる天井裏であることに気づいたのは何度か訪問したあとだった。図にすると下のとおり。こうなっていたのかぁと気づいてからガーディナーが好きになった。構造的に明快であることが理想の建築の第一条件である。

多少説明するとこれはクイーンポストトラスだ。キングポストトラスは三角形トラスの中心棒が下まで通っているが、クイーンポストトラスは中心棒が左右ふたつに分かれてトラス中央を屋根裏部屋として使うことができる。

図のように三角形の3つの頂点それぞれに三角形をつくることで全体の変形を防いでいるのがクイーンポストだ。テキスト通りの明快な構造でとてもよろしい。しかも2本の柱があることで側廊ー身廊ー側廊と古典的な3廊形式になる。さすがガーディナーだ。見習うべきである。

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2022.05.15、愛知県犬山市明治村、聖ヨハネ教会

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2022年5月22日 (日)

大杉の養蚕農家はいいぞ

兵庫県養父市で開いている月1回のスケッチ教室へ行ってきた。今回は大杉地区の養蚕農家をスケッチした。実演をしたあと各自集落内に散って2時間半ほどスケッチした。暑くも寒くもなく蚊もいない絶好のコンディションだった。みんなの作品も個性化していて楽しい。ちなみに薮では養蚕農家を「ようざんのうか」という。

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2022.05.21、兵庫県養父市大杉

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2022年5月21日 (土)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(4)

やはり何といっても聖ヨハネの一番の特徴はこのスノコ天井だろう。竹を教会の天井仕上げに使っているのは珍しい。スノコ天井が光を反射するので会堂全体がふんわりとした明るさに包まれている。飴色に色づいたスノコと黒い梁のコントラストが美しすぎる。スノコ天井はわたしもいつかやってみたい。

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2022.05.15、愛知県犬山市明治村、聖ヨハネ教会

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2022年5月20日 (金)

念願の乾邸をスケッチした

競売にかかったが神戸のひとたちが保存運動をなさったおかげで神戸市が買収し文化財に指定された。初めて訪問したが住吉の宝のような建築であった。地元の方々が中心となって保存会が結成され定期的に公開してくださる。庭の手入れなども保存会でなさっているそうだ。ありがたい。

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2022.05.20/ヴァフアール紙粗目F4、グラフィックペン0.5、固形透明水彩 /神戸市東灘区「乾邸」

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2022年5月19日 (木)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(3)

階段の手すりがシンプルでかっこいい。階段は見せ場のひとつなので細かい細工をほどこしたいところだが、逆にシンプルな連続三角形模様にしたところはさすがガーディナーである。野太い手すり子で頑丈に作りながら、三角形が連続することでリボンのような軽やかさを得ている。とてもおもしろい。

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2022.05.15、愛知県犬山市明治村、聖ヨハネ教会

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2022年5月18日 (水)

理想的な建築・聖ヨハネ教会(2)

2枚描いた。聖ヨハネは横顔もよい。この会堂の第一の特徴はその大きな屋根にあるが、そこにゴシック風の屋根窓がついているのがこよなく愛らしい。その尖った窓屋根の上にひとつずつ十字の星がついているところもよろしい。

屋根は当初、鉛葺きだったそうだ。おそらく大屋根が急こう配過ぎて瓦が葺けなかった。この会堂は京都の町中にあったので周囲の瓦屋根に合わせて鉛葺きを採用したのだろうと思う。それが雨が漏るようになって銅板葺きに変わった。移築に当たっても銅葺きが踏襲されている。丘の上に建つ今となっては銅サビの青緑色が似つかわしい。

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2022.05.15/ヴァフアール紙粗目F4、グラフィックペン0.5、固形透明水彩 /愛知県犬山市明治村

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2022年5月17日 (火)

聖ヨハネ教会をスケッチした

京都建築専門学校の見学会で明治村へ行った。明治村では毎回聖ヨハネを描く。聖ヨハネ大好き。

ガーディナーの建築はレンガ造りと木造とのハイブリットであることが多い。ここも1階のレンガ壁(移築時に鉄筋コンクリートに置き換えたが)と2階の大胆な木造トラスの合わせ技にみとれるばかりだ。わたしの理想の建築のひとつである。
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2022.05.15/ヴァフアール紙粗目F4、グラフィックペン0.5、固形透明水彩 /愛知県犬山市明治村

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2022年5月16日 (月)

丘陵上道路の「いちき橋」

常滑は明治期に登り窯が増えたことから丘陵地帯の斜面に町ができた。おもしろいのは丘陵の一番高いところに道路ができたことだ。こうした道路をわたしは他で見たことがない。常滑独特の工夫だと思う。丘陵地帯の上で成形して登り窯で焼いて下から出荷したのかも知れない。

現在、丘陵上道路には橋がふたつある。ひとつがこの「いちき橋」だ。この橋は橋の下の切通し道路をつくる際に設けられたそうだ。アーチが斜めにかかっているので動きのあるダイナミックな美しさがある。いい橋である。

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2022.04.23、常滑市「いちき橋」

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2022年5月15日 (日)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(7)

ほかにもいくつかおもしろい工夫があったのでご紹介してこのメモを終わる。

ひとつめはドアノブまわりにプラスチック板を取り付けていること。おそらく陶土のついた手で触るところなので拭き掃除がしやすいようにしているのだろう。色付きのプラ板を使って楽しく仕上げている。

ふたつめはドア上に照明を仕込んでいること。これは常夜灯のように使うのかもしれない。ここだけ電気が点いていれば廊下も部屋もほの明るいだろう。

今回は突然訪問したにもかかわらず快く迎え入れてくださったのでありがたかった。堀口捨巳を初めてみたが勉強になった。この時代特有の若々しい工夫や挑戦の数々を見ることができて勇気が湧いた。ありがとうございました
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2022.04.23、常滑陶芸研究所

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2022年5月14日 (土)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(6)

当時の家具も相当残っていた。おもしろいのは丸テーブルで、これはロクロに載せる台でカメ板というそうだ。常滑の町でもたくさん見た。応接室のものが竣工当時のものだろう。

2枚目は脚がアルミなので後で作ったものに見えるが、カメ板らしさがよく出ている。竣工当時の家具は脚を真ちゅうパイプで作っていて軽やかだ。水平垂直を強調したデザインで床の間の違い棚のような端正な美しさがあっておもしろい。

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2022.04.23、常滑陶芸研究所

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2022年5月13日 (金)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(5)

突然訪問したにもかかわらず応接間も開けてくださった。建物の見学者に慣れてらっしゃる。どこを見てもよいという。ヲタク用語でいうところも「野放し」だ。うれしい。写真も撮ってよいと許可をいただいた。ありがたい。

応接間はなぜか真っ赤だった。床のPタイルもソファーも赤い。緋毛氈を敷いた野点の気分を表しているのかも知れない。茶室が付随しているが、わたしには何の写しなのかさっぱりだ。茶室の左側の棚には常滑焼の茶器が飾られている。だから茶室も茶器と同様展示物扱いなのだろう。

おもしろいと思ったのは天井だ。高いところと低いところがある。応接セットの上は少し低くてアルコーブ風の落ち着いた感じにしている。

応接セットと茶室のあいだは天井が高い。ここは展示物を見るための通路に当たるので高くしたのだろう。その部分は天井板を市松貼りにしている。天井の段差の部分に照明を仕込むあたり芸が細かい。こういう天井をわたしも作ってみたい。

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2022.04.23、常滑陶芸研究所

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2022年5月12日 (木)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(4)

玄関扉の左右にガラスブロックの袖壁がある。斜めになっているのは風よけ室を広くしたかったからだろう。普通であれば風よけ室を箱型に前へ飛び出させるところだが、斜めにすることで飛び出した感じを消してすっきりと納めている。設計が柔軟だ。

わたしは紫色のガラスブロックを初めて見た。とても珍しい。もちろん外壁の紫色のモザイクタイルと響きあっている。ガラスブロックにはガラス窓よりも光を拡散する効果が強い。そのおかげで階段室に紫色の光が満ちる。階段の背景である白い壁もほんのりと紫色を帯びている。

前回考えたように展示室が海底をイメージしたものであれば、紫色に染まった階段室は海へ潜ることを予告しているのだろう。よくできている。

天井は光天井となっている。幾何学的なパターンが入っているので光の拡散効果が高くふんわりとした光が落ちるよう工夫している。中の蛍光灯を斜めに取り付けるあたり芸が細かい。

吹き抜けから見下ろした吊り階段はやはり美しい。こうやって眺めると吊り棒を垂らした大梁が背後の白壁を上下に区切っていることがかっこいい。ほんとよくできていると思う。

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2022.04.23、常滑陶芸研究所

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2022年5月11日 (水)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(3)

この階段は、しばらく前からツイッターをにぎわしていた。どこだろうと思っていたがここだった。ほんとすばらしい。端正で軽やかで美しい。さすが堀口である。

驚いたことにこれは吊り階段である。吊り橋のような階段で軽やかな意匠となる。ライトの落水荘の階段が有名だが、わたしは吊り階段の現物を見たのは初めてだった。なめるように見てきた。

踏板は真ちゅう板を折り曲げて作っている。表面には真ちゅう色のプラスチックタイル(Pタイル)を貼り、段鼻は真ちゅう製の滑り留めを取り付けている。真ちゅう製の階段をわたしはよそで見たことがない。

踊場から上は真ちゅう色の梁から垂らされた角パイプで吊られている。パイプのなかに鉄筋が入っているのではなかろうか。壁側はコンクリート壁にボルト留めである。梁は鉄骨を真ちゅう板でカバーしたものだと思う。

踊場から下も基本的に同じだが踏板の下に補強用の斜材が入っている。この斜材は踊場から上には無いのだから下も無くて大丈夫だと思うが。この斜材は床には接しておらず完全に宙に浮いている。完全な吊り階段である。おもしろい。

軽やかな細工物のような階段は昇るのもわくわくする。さほど広くもない階段ホールがこの階段のおかげで楽しい場所となっている。わたしもこういうかいだんを作ってみたい。常滑に来てよかった。

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2022.04.23、常滑陶芸研究所

 

 

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2022年5月10日 (火)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(2)

バルコニーにもモザイクタイルが貼りまわしているので紫色の光に満ちている。その光が室内にも反射して透明度の高い風のなかにいるような気持ちになる。

さて、なぜモザイクタイル貼りなのか。考えられる理由のもうひとつは国宝の秋草文壺に触発された可能性だ。ちなみに秋草文壺は常滑焼と言われていたようだが、今では渥美焼とされている。平安期の古い壺で胴回りや肩にススキやそのほかの秋草がヘラ描きされた珍しいものだ。出土状況から骨壺と推定されている。

前出本の解説に、工業化された常滑焼に工芸の創造力をよみがえらせるために平安時代の秋草文壺の精神に立ち返ろうとしたとある。秋草文は着物の裾模様にあしらわれることがある。だからモザイクを使った裾模様を採用したのかも知れない。

ただしこの説明だとなぜ紫なのかは分からない。堀口は茶室研究の大家だから、なにかしらの茶道的教養が関係しているのかも知れない。もうそうなると私にはさっぱりわからないだろう。

わたしはこの二つ目の可能性はないと思う。そんな小難しいことを堀口はしないだろう。わたしはただ単に海をイメージしているのだと思う。利休も珍重した常滑焼の水差しは、海底に沈んで貝殻に覆われたような趣がある。

展示室はトップライトから光が舞い落ちる設計となっている。今回、残念ながら展示室に入れなかったのではっきりとは言えないが、それは海をイメージしたものだろう。暗い海底に眠る古陶に海面から差し込んだ光がゆらめく。そうした深い瞑想的な建築なのではないか。カラコンモザイクの紫を選んだのはそれが海の色だからだろう。

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2022.04.23、常滑市立陶芸研究所

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2022年5月 9日 (月)

堀口捨巳の常滑陶芸研究所を見た(1)

堀口捨巳をはじめて見た。1961年竣工なので彼が66才のときの作品である。大きな庇が気持ちがよい。いくつか気づいたことがあるのでメモしておく。

建物を見て最初に驚いたのはモザイクタイル貼りだったこと。モダニズム建築はコンクリート打ち放しが多いので驚いた。なぜタイル貼りなのだろう。とりあえず考えられる理由はふたつある。

第一に陶芸研究所を市に寄贈した伊奈長三郎へのリスペクトだろうということ。

陶の森で入手した「堀口捨巳展」(とこなめ陶の森、2016)によれば、使われたのは伊奈製陶製のカラコンモザイクタイルだという。カラコンモザイクは色土を焼いたもので釉薬がけではない。だから釉薬タイルのように光らず落ち着いたパターンを床や壁に描くことができる。ちなみにカラコンはカラーコンディション(色調整)の略だと上記本にあった。発売は1953年だそうだ。

もともと日本で最初に本格的なモザイクタイルを作ったのは伊奈製陶だったとされる。モザイクタイルはスクラッチタイルと並んで伊奈製陶を代表する製品だった。だから伊奈長三郎を陰ながら顕彰するなら伊奈の製品を使うのがよろしい。

伊奈長三郎は帝国ホテルのスクラッチタイルやテラコッタの製作を担当したのちに伊奈製陶を設立した。地元愛知県の組合理事長や常滑市長を歴任し、地元産業の発展に尽力している。常滑陶芸研究所は引退する伊奈が後進の教育のために市に寄贈したものだと研究所入り口の説明にあった。この時代の名士は伊賀の川崎家といい半田の中埜家といい、成した財を地元へ還元なさるのがえらい。

長くなったので続きは明日。
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2022.04.23、常滑市立陶芸研究所

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2022年5月 8日 (日)

大阪中央公会堂でスケッチ教室

2時間のスケッチ教室。最初の30分は公会堂を見学した後、ハガキスケッチの実演をした。それが1枚目で、20分くらいかな。今回は部分を正面描きでスケッチした。その後で各自で小1時間ほど描いたのが2枚目。なかなか力作揃いでおもしろい。

わたしはF4のスケッチブックに描いた。これが3枚目で50分くらい。多少ゆがんでいるが構わない。スケッチに失敗はない、というのが師匠の教えだ。

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2022.05.07/ヴァフアール紙粗目F4、グラフィックペン0.5、透明水彩/大阪中央公会堂

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2022年5月 7日 (土)

タイルの100年(6)泰山タイルの裏を見よ

泰山(たいざん)タイルの裏が展示されていてさすがイナックスライブミュージアムだと思った。

みなさんはタイル産業の業態をご存知だろうか。常滑でも多治見でもタイルの産地を歩けばガス窯1基で稼働している小さな独立工房がたくさんある。

それらは茶器をメインとしながら副業としてタイルを焼いてきた。タイルメーカーは自社で作るばかりでなく受注状況に合わせてそうした独立工房に下請けさせるのが常だった。だから同じタイルでも違う窯で焼いたものが混じるのだ。

また受注したタイルが多岐にわたる場合、メーカーが問屋機能を発揮することもある。複数メーカーのタイルを取り揃えて納入することもあるのだ。だから納入されたタイルの一部が泰山タイルだとしても、全部がそうだとは言い切れない。

タイルメーカーの特定はさほどに難しいものがある。軽々と泰山と決めつけては当時活躍していた他メーカーをないがしろにすることにもなりかねない。その点、タイル裏の刻印を確かめることができれば決め手になる。さすがである。

展示は盛りだくさんで一度では見切れない。しかも3館巡回展のため途中で展示替えがあるようだ。何度でも足を運びたいものだ。タイルのお好きなかたにおすすめの展覧会である。

「タイルの100年」 2022/4/9ー8/30
巡回展示 イナックスライブミュージアム、多治見モザイクタイルミュージアム、江戸たてもの園
https://livingculture.lixil.com/topics/ilm/clayworks/exhibition/japanesetile/

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2022.04.23、愛知県常滑市、イナックスライブミュージアム

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2022年5月 6日 (金)

タイルの100年(5)つばき窯のテラコッタを見よ

岩下尚史の「芸者論」を読んだばかりだったので、新橋演舞場の部品が出ていて驚いた。あとで聞くともっと大きな部品もテラコッタ館にあるらしい。今度行ったら確かめてみる。

「芸者論」によれば最初伊東忠太に設計依頼したそうだ。伊東は新橋花街の常連だったようだ。もし伊東が設計すれば野太い和風神殿のような姿になったろう。それもおもしろいが結局伊東は受けず菅原栄蔵に話を振ったという。

菅原のライト風の演舞場を見てみたかった。その建物は1982年に建て替えられたのでイナックスはそのころから資料を集めていたのだろう。よくぞ残してくださったと感謝しかない。

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2022.04.23、愛知県常滑市、イナックスライブミュージアム

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2022年5月 5日 (木)

奈良女旧本館をスケッチした

奈良女子大旧本館を公開すると聞いたのでスケッチしてきた。よいお天気で気持ちがよかった。これで50分くらい。屋根に変化があり楽しい建物である。

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2022.05.04/ヴァフアール紙粗目F4、グラフィックペン0.3、透明水彩/奈良女子大学記念館

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2022年5月 4日 (水)

ミス大阪のモザイクタイルを見た

まいまい京都の心斎橋ツアーでキャバレー「ミス大阪」を見ていたら、支配人のかたが中へ入れてくださった。予定外のサプライズにみんな大喜び。支配人さまありがとうございました。写真を撮って宣伝してねと言われたので写真をアップしておく。

メイン階段のモザイクがよかった。岩肌のモザイクタイルに見えるが石製にも見える。海をイメージさせる見事な壁画で点在する金色モザイクがきらめく泡に見えた。

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2022.04.30、大阪市中央区「ミス大阪」

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2022年5月 3日 (火)

村野藤吾の大成閣を見た

まいまい京都の心斎橋ツアーで大成閣を見ていたら、店主さんが出て来て中へ入れてくださった。予定外のサプライズにみんな大喜び。孫様、ありがとうございました。

玄関ホールのジャイアントコーンのような特注照明がおもしろかった。ツアー後にスタッフの山下君が大成閣のランチが食べたいというのでツアー参加者さんらと食べにいった。マーボーチャーハンセットがとてもおいしかった。

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2022.04.30、大阪市中央区東心斎橋「中華料理、大成閣」

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