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2022年2月

2022年2月28日 (月)

岸和田市役所(1954、1971増築)

右側が1954年の竣工で左側が1971年の増築らしい。古い方はシンプルなたてルーバーでなかなかかっこいい。モダニズム庁舎の秀作だと思うが、まだちゃんと観察したことがない。現在、建て替え計画進行中。

「大阪の建築ガイドブック」(第3版、1982)によれば増築部分の設計は清水一級建築士事務所、施工は清水建設。新旧どのフロアからも岸和田城が見える設計だそうだ。
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2016.02.24、大阪府、岸和田市役所

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2022年2月27日 (日)

岸和田市立図書館(1975)

岸和田城内にあるので和風でまとめている。モダニズムの外壁の上に大きな入母屋屋根を載せ、腰壁はなまこ壁風だ。風変りではあるが、どこか可愛げのある建物である。

令和3年度岸和田図書館概要によれば開館は1975年。それまでは復元岸和田城が図書館だったそうだ。

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2016.02.24、大阪府岸和田市

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2022年2月26日 (土)

岸和田駅前の洋館

煙突があるのが珍しい。石炭ストーブ用の煙道ではないか。良質のスパニッシュコロニアルである。木製窓の斜め桟や玄関ポーチの飾りタテ格子など見どころが多い。昭和初期というより1950年代のものに見える。

グーグルマップで探したが見つからない。解体されたかな。

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2016.02.24、岸和田市

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2022年2月25日 (金)

諏訪の森の洋館

玄関庇の先端が唐破風のようにカーブしているのが独特だ。屋根のドーマー窓風の半円形の換気窓もおもしろい。近年改修されたようで大切に使われている。

窓格子が簡単すぎるのが解せない。後補かとも思うが、ただし格子の裏に木製の上げ下げ窓が残っているので、窓そのものは変わっていないのだろう。格子だけが後補なのか?昭和初期にしか見えないが、ひょっとして戦後すぐのものかな?

「大阪府近代化遺産全調査一覧」(2007)の中村家住宅というのがこれのようだ。「大正14頃」とある。思っていたよりも10年ほど古い。ひょっとして室戸台風(1934)の風害を受けて大規模な改修を行ったのかもしれない。
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2016.02.24、堺市西区浜寺諏訪森

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2022年2月24日 (木)

摂南大学住環境デザイン学科卒業研究発表 感想メモ(2022.02.24)

今年は展覧会が開かれたので良かった。昨年は短いビデオだけだったので講評が難しかったが、今年は例年通りパネル展示を見ることができてうれしい。

講評会でも申し上げたが、卆計はやり残した部分が必ずある。やり遂げたことよりもやり残したことのほうが私は大切だと思う。やり残したことはこれから一生を通じて取り組むライフワークとなるだろう。

コロナ禍の下での困難な卆計であったろうが、学生間の助け合いがあったのだろう。全員が卆計を完成させることができて良かった。学生時代の友人は一生ものの宝ものだ。大切にしてほしい。そして、卒業おめでとう。

< 全体として >
わたしの評価は昨年とおり、発想(テーマ、設定)・知識・プレゼンの3項目である。とくに発想を重視している。今年は設計系の非常勤講師の講評会参加が少なかったことから賞が足りなかった。とりあえず円満字賞を追加しておいたが、それ以外にも他の先生がいれば受賞していたものもあったと思う。そのことはわたしの講評を読めばお分かりいただけるだろう。

さて今年特に思ったのは先入観や思い込みが作品の深化を阻害していることだ。たとえば地域コミュニティは活性化すべし、またはシャッター商店街は再生すべし。これらは前提条件なしに「なすべき」こととなっているきらいがある。はたしてそうであろうか。なにをもって地域コミュニティの崩壊と見るのか、なぜシャッター商店街は生まれたのか、そうした議論がもっと必要だ。これはテーマに関わる事項である。まずそこを固めることから出発したい。

< 個別に >

-稲地研-

・自発ネットワーク型の地域コンミュニティ 
- オープンガーデンの事例を踏まえて -
大阪市東部の放出にコミュニティ広場を計画した。既存の四角い児童公園の外周沿いに回廊をめぐらせている。回廊のフレームに可動式の壁を取り付けることで多様な用途に対応させる仕組みを考えた。地域の商店街の福引会場、デイザービスのお年寄りのカラオケ大会、フリーマーケットやこどものための地蔵盆など実際の使いかたの提示があれば作品の意図がよく伝わると思う。ストリートファニチャーの提案として意義がある。

・暮らすように過ごす宿泊施設 [円満字賞(追加)]
~ サブスクリプション型の宿泊施設から商店街の活性化を図る ~
滞在型宿泊施設を設けることでシャッター商店街を再生する計画。既存の商店や銭湯とタイアップすることで商店街振興に寄与することができる。敷地は京阪電車千林大宮駅前の商店街。現地調査がしっかりしているために説得力のある計画となっている。新設部を既存街区に溶け込ませる設計センスもよい。具体的な使い方の例示もあり、いきいきとした風景を作り出すことに成功している。調査力と構想力、設計力ともに秀でた作品である。

・高架下が繋ぐ地域の居場所 [松隈賞]
~ 住民が自らつくる ~
京阪電車高架化の工事に合わせて住民自らが自分たちのスペースを作るシステムの提案。DIYによって木造のキュウーブを作る。使いかたは住民の自由であり、勉強やお昼寝などさまざまな用途の例示が楽しい。なによりおもしろいのは、高架工事の着工前、工事中、着工後の3パターンの計画が用意されていること。工事の進捗に合わせて、材木置き場、加工場、設置場所が変化する。進捗に応じて使用できる敷地が広がることに対応しているわけだ。工程そのものをシステムとして設計したとてつもない構想力に感服する。

・人が溜まる場所 [円満字賞(追加)]
~ 都心部に位置するcommonスペースがあるオフィスビルの計画 ~
街路の延長として立体公園を作る計画。敷地は大阪市内の淀屋橋あたり。計画にあたって敷地周辺街路における滞留行為の綿密な観察調査を行っている。会話、携帯、喫煙、待ち合わせなどの滞留行為を類型化し、それを花壇枠、駐車場付近、ビルのピロティ部分などの場所と結び合わせて分析した。類型化、分析が的確で分かりやすい。今和次郎の現象学的研究を思い出した。調査結果に基づいて滞留行為を誘発する立体公園を作り上げた設計手腕を評価したい。

・nature house [円満字賞]
~ 自然と建築をつなぐ ~
自然と融合した有機的建築の提案。海綿の細胞膜構造をモデルとしたテント風の膜構造の上を緑化した。緑化に当たっては回遊型日本庭園の鑑賞ポイントを類型化し、それをもとに建物内から見える隣接テントの緑化を設計したところがおもしろい。日本庭園の類型化にあたっては大阪万博公園の日本庭園を対象に22名の治験者から所見を得て分析した。調査と分析方法の独自性があり、それを造形に反映させる優れた設計力を感じさせる楽しい作品である。

・「外に閉じ内に開く」
~ 住民間コミュニケーションを誘発する仕掛けのある空間づくり ~
異人街として知られる神戸市北野の斜面地を敷地とした住宅地計画。各住居は中庭のあるパティオ型で、中庭は住宅地の敷地内通路へつながっている。中庭はセミパブリックスペースと位置付けられており、それはカリフォルニアのパティオ住宅と性格は同じだ。見上げたり見下ろしたりする斜面地特有の風景の変化が楽しい。尾道や長崎の魅力的な斜面路地を思わせる。港町神戸らしい明るいラテン風な住宅地開発である。

・「建築」と「建物」の境界 [川上賞]
- ひとつの「建築」が周囲の「建物」を「建築」に変える -
こどもたちの遊び場のような町から失われた場所を付け加えることで地域を魅力的に改造する試み。機銃となる立体格子を用意し、そこへ住民自身が必要と考える場所をキューブとして作り込む手法がおもしろい。おそらくそれはパブリックスペースそのものの再構築なのだろう。町に対する確かなまなざしを感じさせる秀作である。


-川上研-

・海浜今昔街
~「浜寺」固有の魅力の再興・創造 ~
大阪府南部にかつて存在した浜寺公園リゾートの再生計画。与謝野晶子の事績も織り込みながら大正ロマンあふれる風景を再生した。当時の海岸線はいまは埋め立て地とのあいだの運河となっているが、そこに白砂青松を復元し、和風の料亭建築を配置する。もう少し規模が大きくてもよいと思うが、着眼点がおもしろくて確かな構想力を感じさせる力作である。

・高所避難を視野にいれた田辺駅前商店街の再建 [円満字賞(追加)]
~ 熊野古道の歴史を継承して ~
和歌山県JR田辺駅前の商店街再生計画。津波時の避難所を兼ねた高所デッキを設けてそこに新しい機能を加えた。デッキは立体公園として商店街を取り巻き、エリアごとにイベント広場、展望台、森林カフェなどになる。とくに熊野古道をイメージした深い森のなかの滝に面した森林カフェはよくできている。ハルプリンを思わせる手慣れたスケッチを通して計画の楽しさが伝わってきた。構想力、設計力とも、この学年のトップクラスであることは確かである。

・「文禄堤」を活用した守口のランドマークとなりうる場所の提案
豊臣秀吉による河川改修の名残である文禄堤の公園化計画。敷地は京阪守口駅前。新たに広場を設けることで建物の陰となっていた文禄堤の威容が現れる。広場は守口に伝わる盆踊り「寺方提灯踊り」の主会場となる。地域色あふれるシンボル的な広場となっている。現場状況をよく踏まえた的確な調査力と確かな構想力を評価したい。

・学生を担い手とした京都の伝統産業・文化継承計画
コンビニ店舗にヤグラ状の建築をかぶせるインスタレーション的作品。敷地は京都市内の西陣と黒谷の2ヵ所である。各ヤグラを西陣織のギャラリーや茶室群とし、伝統文化と現代社会の対比をテーマとした。ヤグラ状建築そのものに異世界感があるのがおもしろかった。

・鉄輪温泉の魅力の再編と交流型滞在空間の創造
別府鉄輪温泉の再生計画。源泉が90度もあるので町全体が湯けむりに包まれている。その風景を受け継ぐために新たな機能をいくつか町に埋め込んだ。情報提供、交流のためのスペースのほかにミニオフィスとキッチン広場があるのがおもしろい。特にキッチン広場はかつての湯治場風景の再現であり、温泉地を短期観光型から長期滞在型へ抜本的に転換させる可能性を秘めている。歴史を踏まえながら風景の継承をかたちにした秀作である。

・地形を活かした神戸らしさの創造 [円満字賞(追加)]
~ 鯉川と水車の再生を通して ~
暗渠化された都市河川を再び地上によみがえらせて親水公園とする計画。神戸三宮の鯉川跡を敷地に選んだ。この地域に多かった水車と地域産業である酒造りをデザインモチーフとして展開させたのがおもしろい。水車の音を聴きながら清酒を酌み交わす風景が楽しい。構想力とは暮らしやなりわいをどこまでリアルに想像できるかということだと思っているが、その点、この作品の構想力はこの学年最高ランクである。

・書道・文字と建築 [白鳥賞]
墨の産地である奈良市の池のほとりに書道美術館を設計した。墨の色が気候の温湿度によって変化する特性を活かして、外壁を墨塗り仕上げとした発想がすばらしい。外壁素材には吸湿性の高い粘板岩を採用したことも適切な判断だろう。また、外から見れば反転文字となる大きなガラス窓に展示された書道作品が、池に写りこんで正字として読めるというトリックも楽しい。


-白鳥研-

・パーマカルチャーを基に環境負荷を低減した暮らしの方のデザイン研究
~ 北斜面を例として ~ [前川賞] 
奈良県大塔町の山間部にリモートワーク8世帯の集落を計画した。住まいはペチカやオンドルを応用した暖房と通風に配慮したパッシブデザインとなっている。採光に不利な北側斜面地のために庇を跳ね上げた独特な屋根デザインがおもしろい。日射に応じて屋根勾配を工夫した藤井厚二の聴竹居を思わせる。水田の水温調節のための貯水池を設けていることも現地をよく研究した成果だろう。また、斜面を流れる雨水を受け止めるスウエルの配置など、自然との共生を目指したていねいな設計手法がすばらしい。

・伝統工法を用いたDIY仮設住宅の開発研究  [円満字賞]
被災者収容のための仮設住宅を伝統木構造によるDIYキットとして設計した。分解保管されたものを被災者自らが組み立てることを前提として設計した点が現実的でおもしろい。部材の結合を長ホゾ差し鼻栓留めとして分解組み立てが容易にできるようにした。また、部材はひとつにつき20キロ以下として、ひとりで持ち運べるよう配慮されている。なにより大型模型を製作し、分解組み立ての実証実験を繰り返し行ったことを評価したい。

・LGBTQIAへの差別撲滅に向けた『自我と他者との瞑想建築公園』のデザイン研究 
~ 自我を感じ、他者を感じる ~ [円満字賞(追加)]
LGBT差別に抗議する瞑想公園の計画。敷地をモスクワにしたのは、反差別活動を行うロシアのアーチストに対するリスペクトからだそうだ。わずかな高低差を設けた幾何学的な公園に現代社会を象徴する3本のラインと自然を象徴する水流を設けた。ラインはそれぞれ赤の広場やロシア正教会などを指し示している。そのラインが雪に覆われて消え、そして時が止まったように中央の水流も凍るとき、社会的なしがらみと物理的な時空間から解き放たれた自我が他者と純粋に出会うことができる、と作品は語る。わたしはドストエフスキーの「罪と罰」のラストシーンを思い出した。静謐ながら熱い心を秘めた秀作であろう。

・多民族国家台湾における民族共生都市住宅の提案 [久富賞]
~ 閩南火と阿美族の伝統文化が織り成す都市住宅 ~
台湾人の75%を占めるビンナン人と先住民のアミ族とがともに暮らす台北の民族共生住宅。両族に共通する先祖信仰の儀礼と民俗芸能「布袋劇」を行う舞台を集合住宅の中心に設計した。吹き抜けまわりや1階のピロティが観覧席となる。1階ピロティは周辺の屋台街と一体化しているために共生住宅の舞台は町共同の劇場ともなる。屋台や芸能という町のディテールに気がつき、それをつなぎ合わせた構想力を評価したい。

・小型通信機器充電のための「土壌を用いた発電装置」の開発研究 [円満字賞]
被災時にスマホ充電のできる土壌発電の開発研究。当初微生物発電に取り組むが発電効率が上がらないため研究テーマを土壌発電へ切り換えたという。そもそも土壌発電は1841年には発明されており、その後通信用電力として実用化されていたという。効率のよい土壌と、効率のよい電極用金属の組み合わせを辛抱強く探した根気強さに脱帽する。科学を身近なものとしてサバイバルに活かそうとする発想力がすばらしい。

・入管センターの帰正反本 
~ これからの共生に向けた収容所施設の設計提案 ~
入国管理センターにおける収容者の居住環境改善計画。大阪府茨木市の旧入管センターを敷地とした。塀のない開放的な収容施設とし、収容者の事情に応じた住居タイプを複数用意する計画となっている。地域通貨を利用した就労プログラムや、大阪万博に合わせた共生プロムナードの設計など地味ながらきめ細やかな設計に特徴がある。帰正反本とは正しい本来の姿に立ち返るという意味。

・コックスバザール難民キャンプ設置シェルターの熱環境改善に向けて [円満字賞(追加)] 
~ 竹と土を使った遮蔽部位「バンブーアースロッド」の開発研究 ~
バングラディシュ領内のロヒャンギ難民キャンプの住環境改善計画。スコールと熱射を防ぐ工夫がおもしろい。屋根にビニルシートをかけてスコールを防ぎ、その上に断熱材として周辺に自生する竹を並べた。実証実験の結果、竹は節を抜いたほうがよく、さらに竹のなかに焼いた泥だんごを詰めると断熱効果が上がることを突き止めている。現地で調達可能な竹や泥といったものを使って難民自らが身を護ることのできる手立てを用意しようとする姿勢に敬意を表したい。


-久富研-

・マチ_ミセ_イエのつながり
大阪天王寺の茶臼山に33戸のコレクティブハウスを計画した。ミセと名付けられた共用LDKとイエと呼ばれるホテルの個室のような最小限住戸とで構成される。ミセとイエとのあいだにスキップフロアを応用したセミパブリックスペースをはさんだことが特徴である。コルビュジェのユニテを思わせる設計思想と下寺住宅や同潤会アパートを想起させる外観が楽しい。

・Brain Lab. [松隈賞]
兵庫県JR西宮駅前に複数の大学で共用する図書館を計画した。共同の研究室や講義室などを通して大学間交流を促す設計となっている。イスやソファーなど家具デザインもおもしろい。また全体が大きな本棚になったような建築デザインも完成度が高い。

・おおきな屋根と小さなおうち [稲地賞]
保育園とデイサービスを複合させた計画。大阪府枚方市の医科大学に隣接して計画した。同大学を運営母体と想定した設計である。小規模の保育園とデイサービスを2階デッキでつないでいる。デッキは医科大にも接続されており、医療、保育、介護とを連結させたところに特徴がある。

・7つのキッチンの家 [中山賞]
大阪市中崎町に4人の料理人の住む5階建てコレクティブハウスを設計した。各住戸のキッチンのほかに吹き抜けに面した共用キッチンを複数設けたことが特徴。薪ストーブ、炭火、いろり、かまど、食品加工場など共用キッチンの種類が豊富で楽しい。吹き抜けを通して住民たちの料理のようすを演劇のように観る楽しみにあふれた魅力的な集合住宅である。自家農園や料理教室も備えており地域の食文化とのかかわりにも目を配っている。確かな構想力と入念な調査力、それを魅力的にまとめる設計力を感じる秀作である。

・1000年建築 
- 生き物の巣のつくり方からの学び -
大阪府寝屋川市内に9戸のパッシブデザイン住宅を建てる計画。人工地盤の2階に昆虫の巣をモデルにした泥と紙を混ぜた素材で作る住宅を載せる。屋根は集水のためにじょうご状となりプロペラ型の風力発電機を備える。風の谷のナウシカに出てきそうな独特な風景である。終末世界的で雑多なデザインでありながら不思議な活気にあふれた作品である。

・パッシブデザイン導入住宅地区の提案 
大阪府箕面市内に12戸で構成するパッシブデザイン住宅地を開発する計画。住戸は蓄熱と通風を確保しておりパッシブデザインの基本を理解している。街路を覆った格子状のフレームはおそらくグリーンカーテンを意識しているのだろう。緑地帯として自家農園も配置していることから、町全体として蓄熱と通風を確保することをもくろんだのであろう。

・まちマド [円満字賞]
- ふるまいの表出 -
大阪市北堀江に56戸の集合住宅を計画した。集合住宅は、立体テラス路地をセミパブリックスペースとして内包しており、そこに面した出窓のデザインを設計上の重要テーマとした。出窓の大きさや形だけではなく、ショーウインドウやテイクアウトのカウンターなど使い方のバリエーションが豊富で楽しい。ベネチアのような魅力的な街路を実現している。出窓というモチーフに暮らしや生業(なりわい)といった情景を重ね合わせる豊かな想像力がある。楽しい作品をありがとう。

 

 

 

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旧前田製菓のレンガ塀(解体)

前田製菓の旧社屋横にあったレンガ塀だ。飾り気のないシンプルな構造に赤いレンガがよく似合って美しい。

袖壁があるのでこちら側が内側だろう。つまり前田製菓の工場の塀だと分かる。袖壁の上に10段ほど積み増している。おそらく防火壁の法的規定が変わったので積んだのだと思う。

前田製菓は大正7年創業でビスケット工場が大正15年とウイッキにある。ここはたぶんビスケット工場跡なのでレンガ塀はそのときのものだろう。積み増しは戦後かも知れない。

グーグルで探しても見つからない。もう解体されたらしい。
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Img_6539_20220224092601旧前田製菓ビスケット工場社屋
2016.02.24、大阪府堺市京町通

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2022年2月23日 (水)

堀川第一橋の刻字を読む

建築学校の卆計展を見たあと時間があったので堀川第一橋の刻字を読んできた。明治六年と言うのは相当古いと思う。当局者の記名があるのも興味深い。槇村がまだ知事になるまえの工事だったのだな。

(四方)堀川第一橋
(南東)京都府知事長谷信篤、京都府參事槇村正直、建築主任、京都府十二等出仕中村孝行
(北東)明治六年三月

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2022.02.18、京都市上京区

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2022年2月21日 (月)

丸太町通りの洋間付き町家

2階にバルコニーがあって外壁はタイル仕上げになっている。軽やかで瀟洒なセセッション建築だ。赤屋根も似合っているがこれは後補だろう。屋上防水が切れたので取り付けたのだと思う。表塀つくりの町家タイプで前庭の奥に入口がある。塀の右側の町家とつながっている。隣地を買い増して洋間付き町家に改造なさったのだろう。洋間付き町家も少なくなってきた。

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2022.02.18、京都市丸太町通り堀川西入

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2022年2月20日 (日)

ビリヤード喜楽

路地奥で存在感を発揮している。修理しながら大切にお使いになっているごようすだ。左官仕事が見事な看板建築である。

中へ入ったことはない。わたしが学生のころはこうした看板建築のビリヤード場がわりとあった。ここはマスターが有名だったようだが、たいていはビリヤードが無茶苦茶うまいお母さんがやっていた。今はどんなかたがなさっているだろうか。

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2022.02.17、京都市中京区

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2022年2月18日 (金)

なぜ中心がずれたのか?

先日気づいた。何度も前を通っているのに気づかなかった。アーチの中心と壁面の中心とがずれているのだ。

写真で見れば左のレンガ壁の幅が右よりも広いことが分かるかもしれない。ただし現場ではそこまでよく分からない。

帰ってから写真で確かめたところ、ほんのわずかだがアーチの中心が壁面の中心から右にずれている。なぜだろう? ずれる理由がまったく思い当たらないのだが。大謎である。

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2022.02.16、同志社大学啓明館

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2022年2月16日 (水)

洋館街の飾りレンガ塀

レンガ工場跡開発住宅地のレンガ塀だ。大部分は割れレンガを使っている。工場跡地にたくさん残っていた失敗レンガを使ったのだろう。そのおかげで輪郭線がぼやけて柔らかい表情を得ている。手作りの楽しいレンガ塀である。

なかほどがレース状にすきまが開いていて優雅だ。この部分から上を失っている塀が多いので、優雅が過ぎて構造的に弱いのかも知れない。多少補強すれば大丈夫だと思うが。一番上の笠木の部分が変形レンガで珍しい。軒蛇腹に使うものかも知れない。
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2016.02.24、大阪府堺市堺区永代

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2022年2月15日 (火)

旧丹治煉瓦製造所付近の洋館

レンガ塀に囲まれた小住宅である。赤い洋風の平板瓦で葺かれた急こう配の屋根が愛らしい。2階を小さく造り下見板張りにした意匠も洋風らしくてよい。

一筋となりにレンガ工場の事務所棟が残っている。同じような洋館やレンガ塀が複数あったので、レンガ工場跡の住宅地開発なのかも知れない。

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2016.02.24、大阪府堺市堺区

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2022年2月14日 (月)

釣りたぬき トットパーク小島(2022.02.13)

今年初めての釣行である。昼から雨の予報だったが、どうしても釣りに行きたかったので家を出た。予報より早く雨が降り始めたので、目的地の小島漁港の手前にある釣り公園前でバスを降りた。ここなら雨に濡れずに竿を出せる場所がある。

竿を出したものの喰いは悪い。ちょうど引き潮だったからでもある。潮目が悪いのだ。しばらくすると離れた場所でアジがかかりだした。ただし雨具の用意がないので屋根のある場所からは出たくない。見回りに来た園長さんも移動を薦めるので行ってみたが、突然大風が吹いて雨脚が烈しくなったので元の場所に逃げ帰ってきた。

アジは回遊魚だからそのうち掛かるだろうと思ったが、まったくアタリがない。しかも寒い。ともかく寒い。震えながら竿を握っていると小さなアタリがあった。上げてみるとエサが喰われている。これはフグの手口だと思って竿を投げ返しているとフグがかかった。

フグは上がったときにスグ分かる。まず頭が大きいシルエットで分かる。次にフグは釣りあげられても暴れない。ビニルゴミのようにだらりとなって上がってくる。アタリでフグだと分かっていても上がってきた姿をみてこちらの気分もだらりと萎える。それが2匹釣れた。これが今年初の釣果である。

フグは「福」に通じるし、まあいいか。しばらくバケツで泳がせた。ジョウサイフグだ。緑色の目がきれいである。遠くでカイツブリが潜っているのが見えた。アジを食べている。いいなぁ。11時45分出竿、14時15分納竿。

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2022.02.13、大阪府岬町、トットパーク小島

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2022年2月13日 (日)

自安寺(1968)

3階がくびれてガラス張りとなっており、その上にいくつかのボックスが取りついている。メタボ建築風のデザインがおもしろい。1階の妙見さんは開放されていて自由に参拝できるのもとてもよい。もとは千日前にあったが都市計画で現在地に移転とHPにある。手許の「建築ガイドブック西日本編」(新建築1978)によれば、川崎清設計で1968年竣工。

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2016.02.21、大阪市中央区道頓堀

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2022年2月12日 (土)

NTT南ビル(1974定礎)

電話局ビルの特徴である窓の少ない巨大な外壁に、あまり見たことのない赤褐色のタイルが貼られている。旧京都会館(1960)や旧大阪厚生年金会館(1968)のタイルの色に似ているかな。こういう渋い感じのタイルが流行った時期があったのだろう。そのおかげで巨大壁も温かみのある表情を獲得している。低層部の出窓風にしたり最上階をバルコニー風にするなど造形的におもしろい。

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2016.02.21、大阪市中央区島之内

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2022年2月11日 (金)

アップリカ本社ビル(1989)

大胆な斜め柱の構成がおもしろい。側面は正三角形の集合で窓も正三角形でなかなか凝っている。周囲が建て詰まっていて側面がよく見えないのが惜しい。

アップリカはベビーカーのメーカーだそうだ。だからベビーカーのかたちをしているわけだな。丹下都市建築事務所設計で事務所のHPに竣工年があった。

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2016.02.21、大阪市中央区

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2022年2月10日 (木)

ドウシシャ東心斎橋ビル(1974)

中間層にバルコニーを設けて上下を2分するデザインがかっこいい。外装は波型ガルバリウム鋼板なので10年以内に改装されたのだと思う。もとは黒っぽいタイル貼りだったのではないか。そのほうがずっとかっこよい。サッシュはアルミ色なので70年代当時のものと思う。ネットの不動産情報によれば1974年竣工。

手許の「大阪の建築ガイドブック」(1972)によれば、隣接して建っていた福徳相互銀行本店が同じデザインだった。そちらは久米建築事務所設計、大成建設施工、1965年竣工。

クラボウのときも同デザインのビルが並んでいた。おそらく本社ビル側が地主で賃貸ビル側が借家なのだろう。このころの大阪では借地方式による賃貸ビルの建設が盛んだったのかも知れない。
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2016.02.21、大阪市中央区

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2022年2月 9日 (水)

上京区水落町に橋の跡があった

すぐ東側の小川通り沿いに川の跡があるのは知られている。これもその関連なのだろう。川と橋の跡があった。親柱のデザインは明治後年から大正期にかけてのものに見える。手すりと支柱がともに残っているのが珍しい。とくに支柱は鉄の塊でなかなかかっこいい。黒い酸化被膜に覆われていて、ほとんど腐食が進んでいないのも興味深い。

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2016.02.19,京都市上京区

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2022年2月 8日 (火)

阪急17番街の70年代世界

初めて行ってみたが驚いた。1970年代の世界があった。多少変わっているだろうが、少なくともきらびやかな照明は当時のものだろう。輝くような上階へゆったりとしたらせん階段で昇っていくのはわくわくする。

17番街は阪急梅田駅の駅ビルのなかにある。手許の「大阪の建築ガイドブック」(第3版1982)によれば、阪急大阪駅の設計監理は阪急電鉄、設計施工は竹中工務店、1973年竣工。

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2022.02.06、大阪市梅田、阪急17番街

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2022年2月 7日 (月)

これが織屋建ての京町家だ

はっきりと教わったことはないのだけれど、これが織屋建ての町家だ。道路側(写真の右)が2階建てだが、裏庭側は1階まで屋根が降りている。この裏庭側が吹き抜けとなっていて背の高い織機が据えられていたはずだ。

産業系の民家は注目されることが少ないが、わたしはおもしろいと思う。これなどは大正ー昭和初期のものに見えるが、千本釈迦堂裏には幕末ー明治初期に見える大型の織屋が残っている。そうした建築はかつて京都が織屋の町であったころの風景をわたしに教えてくれる。

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2016.02.19、京都市上京区

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2022年2月 6日 (日)

ウイリアムス神学館

敷地の奥にあるので人目に触れることもなくひっそりたたずんでいる。ご覧のような上質のジョージアンスタイルだ。このような本物のジョージアンは珍しいと思う。聖公会の神学学校として使われている。

てっきりヴォーリズ設計かと思っていたが詳細不詳だそうだ。ウイッキは1936年竣工、ガーディナー事務所の上林啓吉設計説をとるが、そうと定まったわけでもないらしい。たしかにガーディナーは京都の聖公会のアグネス教会やヨハネ教会を設計しているし、長楽館のジョージアンと端正さが似ている気もする。さて事実はいかに。

追記:石田先生よりご教示いただき上林説で正しいそうだ。手許の「京都の近代化遺産」(淡交社2007)も上林とあり、それは聖公会の当時の資料で確かめたとあった。

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2016.02.19、京都市上京区

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2022年2月 4日 (金)

まいまい京都で東華菜館へ行った

「まいまい京都」のFBに東華菜館ツアーのようすがアップされたので写真をお借りする。館内見学とコース料理を合わせたツアーも今回で6回目だが、何度来ても発見があるのがたのしい。今回は屋上のペントハウスのまぐさ飾りテラコッタを見つけた。東華菜館の見学は近代建築ヲタクにとって宝さがしのようなおもしろさがある。

最近、ツアー代とは別途料金のお土産が流行っている。ご覧のようなヴォーリズ事務所の描いた東華菜館立面図の手提げ袋に入れてくれる。東西南北4面が手提げ袋の4面にあるのでまるでペーパークラフトのようだ。わたしはこれを自分の部屋の入り口にかけて定期的に面を変えて楽しんでいる。おすすめである。

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2022.01.30、まいまい京都、東華菜館ツアー

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2022年2月 3日 (木)

京都府警広報センター裏の建物

シンプルなシルエットが美しい。屋上の小庇が両サイドの袖壁につながっている。その袖壁が斜めにカットされているのがかっこいい。京都の戦後の警察署などは良質な国際様式が多かったが、これもその作例のひとつだろう。

1階がピロティで上階が宿舎のように見える。いまは使われていないようだが待機宿舎か交通機動隊宿舎だったのかも知れない。市営繕の設計だと思うが、使い勝手がよさそうで軽やかな作風はもっと評価されてよいようにと思う。

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2016.02.19、京都市

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2022年2月 2日 (水)

化粧レンガ貼りの洋館

窓上のペディメントや軒蛇腹がテキスト通りの古典主義なので明治後半から大正にかけてのものに見える。近づけないのではっきりとは分からないが、おそらくレンガ躯体に白い化粧レンガ貼り仕上げだろうと思う。ていねいに修理してお使いになっている。さぞかし内部意匠もよいだろう。詳細は調べていない。

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2016.02.19、京都市上京区

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2022年2月 1日 (火)

青の布目タイル

青の布目タイルは珍しい。布目タイルは暖かい表情が特色だが、それが青になると一転して涼し気に見えるのが不思議だ。青の布目には麻布のような涼やかな風情がある。

布目タイルは今でも各メーカーで出しているがなぜか青は少ない。古いものでも青は珍しくて、わたしは兵庫県朝来市生野のレストラン「芒種」で見た。ほかにないものかと思っていたら京都にもあった。青はいいぞ。

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2016.02.18、京都市

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