2022年1月 9日 (日)

薬師寺の塔の謎を解く(5)平城京での立ち位置

薬師寺塔のかたちの話が平城京全体の設計方法にまで広がるとは思っていなかった。しかし考えてみれば薬師寺は平城京の護りとして飛鳥から移されたわけだから、平城京計画と関係がないわけがない。それは薬師寺の平城京内での住所を見れば分かる。

平城京は条坊制を敷いている。条坊制とは格子状ブロックをX軸を坊、Y軸を条とナンバリングする方法だ。平城京は最北部のブロックを1条とし南大門のある最南端のブロックを9条とした。東西については朱雀大路の左右を東1坊、西1坊とし、東西端部のブロックを東4坊、西4坊とする。図示すると次のとおり。
220106_20220107111701(図の上が南である)
条坊制に従うと薬師寺の住所は6条西2坊となる。先に見たように数字は五行に配当されている。6は水気,2は火気だ。つまりこの住所には水克火の呪術がかけられているのだ。なんと念の入ったことか。相克の呪術は三尊形式、塔のかたち、薬師寺の立地それぞれにかけられているのである。

わたしはかねがねなぜ薬師寺は朱雀大路に面していないのだろうと不思議で仕方なかった。平城京のお手本となった長安では都を護るふたつの寺院と道観は当然のことのように朱雀大街に面している。朱雀大街からお堂を見せることで国際オアシス都市長安は宗教に寛容であることを政治的に示しているわけだ。

政治状況はもちろん長安とは違うが、それでも朱雀大路に面しておれば平城京を訪れるものにここが仏教国家であることを強く印象付けることができよう。それがなぜ一筋西へ入ったところにあるのか皆目見当もつかなかったのだ。その謎がようやく解けた。住所に呪(まじな)いをかけるからこうなる。平城京の設計は見栄えよりも数字のマジックを優先している。

長安図を示しておこう。ご覧のように朱雀大街に面して寺院と道観とが並び立つ。さぞ壮観であったろう。これと平城京図とを見比べてほしい。長安の玄都観に当たるのが薬師寺だとすれば、大興善寺に当たるのは大安寺であろう。しかし大安寺は朱雀大路からさらに遠ざかるのだ。なぜ大安寺が都の端にあるのか。実はここにも五行説の数字の呪術がかけられていたのである。その謎解きは次回に。
220106_20220108094401長安図(当時の長安へ行ってみたいものだ)

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