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2021年12月

2021年12月31日 (金)

武田的ディテール(52)岡崎公園の大鳥居問題

この鳥居は幾何学的で作られている。鳥居の内側が正方形になっていることは以前から気づいていた。そこで全体がどうなっているのか写真をもとに検討してみた。

方眼にあてはめてみれば鳥居の内側は4:4の正方形であることが分かる。それを敷衍すれば高さは5、巾は約8の方眼にうまく納まる。実は5:8は大鳥居の一般的の比率であるようだ。有名な安芸の宮島の海上大鳥居も5:8の比率なのだ。

おもしろいのは5:8が黄金比であることだ。黄金比は1,1,2,3,5,8,13…というフィボナッチ数の隣り合うふたつを近似値として使うことが多い。武田が2:3の比率を多用するのはそのためだと本人が言っていた。だから大鳥居の伝統的な比率が5:8の黄金比であることにも武田は気づいていたろうと私は思う。

この鳥居がそっけないとそしる向きもあるが、そっけなさは武田的ディテールの本領なので問題ない。問題はこの鳥居が大きすぎたことにある。武田の誤算はそこにあった。あまりにも大きすぎるため地上から見上げたときに5:8の比率に見えないのだ。おそらく1.5キロほど離れた青蓮院門前あたりからならばきれいな比率で見えることだろう。今度確かめてみよう。

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2021年12月30日 (木)

まちかどの菊竹清則「京都信用金庫北山科支店」

かつてはほぼ全ての支店がこれだった。支店によっては傘が大型だったり小傘をいくつも連ねたりしていた。わたしは小傘が並ぶ姿がどこかイスラム建築を思わせて好きだった。いまはほとんどの支店が建て替えられて残っていない。

この傘型の構造をアンブレラストラクチャ―というそうだ。構造と意匠とが一致した建築が潔い。一本柱からHPシェル構造の屋根を吊り下げた構造だという。屋根から突き出した柱が「一本柱」だ。シェル構造は貝殻(シェル)のような膜構造のことをいう。

HPはHyperbolic Paraboloidの略で訳すと双曲線・放物面となる。よく分からないが水平断面が双曲線、垂直断面が放物線となるらしい。わたしには双曲線と放物線との違いが分からない。ちなみに東京カテドラルがHPシェルだそうだ。東京へ行きたい。

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2021.03.13、京都市山科区、京都信用金庫北山科支店(1979年竣工)

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2021年12月28日 (火)

がんこ池田石橋苑のガラス取っ手の件

カットされたガラスが光を乱反射してきれいだ。ひんやりとした触感が涼やかである。取っ手がガラス製なのは珍しい。力のかかるところなのでガラスだと壊れやすいからだ。
 
実はこれが本当にガラスなのかどうか分からない。写真を見直すとアクリルのようにも見える。金物部分は金メッキかと思っていたが金色の塗装かもしれない。
 
建物は昭和初期の竣工だと思うので、この取っ手もそのころのものと思っていたが、1970年代のものにも見える。いろいろと不明である。今度行ったら確かめてみる。

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2021.03.09、大阪府池田市、がんこ池田石橋苑(旧中井邸)

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2021年12月27日 (月)

高欄手すりの十字金物

わたしはお寺の回廊が大好きだ。回廊の手すり金物も見どころのひとつだ。写真のような丸みを帯びた金物を笹金物というそうだ。確かに笹の葉の形をしている。手すりの継ぎ目の補強として使う。普通は一文字型だが、ここは交差部分なので十字型だ。手裏剣みたいでかっこいいじゃないか。

ちなみに高欄の手すりのことをほこぎ(架木)というらしい。知らなかった(すぐ忘れそう)。矛木とも書くので武器の矛の柄にするような丸い断面の長い棒を「ほこぎ」というのかも知れない。

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2021.02.20、大覚寺御影堂

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2021年12月26日 (日)

和田山の黄色い壁

中塗り仕上げが風化したものだと思う。鮮やかな黄色がとてもきれいだ。土壁の表面が荒いことで壁面の小さな穴に影が細かく入り込んで表情に深み作っている。わたしはこんな表情のある荒い壁が大好きだ。窓まわりの縁飾りをコテでていねいに仕上げているのもとてもよい。伸びやかな置き屋根も美しい。わたしにとって理想的な建築である。

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2021.11.20、兵庫県養父市竹田

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2021年12月25日 (土)

土壁の納屋がとてもいい

荒壁に見える。中塗り仕上げが風化して荒壁風に見えるのかも知れない。この土の感じがわたしは好きだ。

シンプルな壁面構成が土壁のテクスチャーを引き立てている。シンプルな軸組も理想的だ。瓦屋根のむくりや妻側の横軸回転の換気窓などディテールもよい。わたしもこういう建築を作りたい。

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2021.12.11、兵庫県養父市養父広谷

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2021年12月23日 (木)

帝塚山大に小田信夫の作品があった

壁面いっぱいにハトが飛ぶ。前からおもしろいなぁと思っていたら小田信夫氏の「夢一題」(1980)という作品だった。小田作品は大阪地下鉄の難波駅の「夢難波」(1987)もおもしろい。彫刻と建築との楽しいコラボは今は流行っていないが、わたしはもっとやってよいと思う。

夢難波 http://www.tukitanu.net/2016/01/1987-37f7.html

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2021.12.21、小田信夫「夢一題」1980、奈良市学園前帝塚山大学

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2021年12月21日 (火)

養父駅出札カウンターの棚受け金物がとてもよい

ひさしぶりに養父駅で降りた。カウンターの鋳物製の棚受け金物がとてもよい。明治41年竣工当時のものに見える。ただしよく見ると腰壁の板張りの上に取り付けられているので大正期に入っているかもしれない。八芒星を中心とした唐草模様だが、どことなく和風に見えるのがおもしろい。既製品だと思う。

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2021.12.11、兵庫県養父市、養父駅(明治41年)

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2021年12月20日 (月)

大阪のビル群をスケッチした

授業のあいまにプリントの裏にマッキーで描いた。

大工大の茶屋町キャンパスから見えるビル群はこれらがひとまとめになっている。ほとんどすべての建物が別々の方角を向いているところがおもしろい。

これは地割がそうなっているからなので、茶屋町の歴史がビル群の風景に影響していると言える。そのこともおもしろい。

次回はもう少し下まで描いてみようと思う。

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2021.12.20/A3プリント裏、油性ペン/大阪市北区茶屋町

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2021年12月19日 (日)

高島屋東別館のエレベーターホールが圧巻だった

高島屋東別館3階の高島屋資料室の奥にむかしのエレベーターホールがまるまる遺されていた。きれいに修復されて見ごたえ十分だった。ガラス製のインジケーターや真鍮製の上げ下げボタンなど興味深いものばかりで時間を忘れる。

まいまい京都の難波ツアーで訪れたのだが、当初ここが見学できると知らなくて、当日の参加者さんに教えられてみんなで見てきた。大興奮で写真を撮りまくっている参加者たちの姿が吊り下げられた照明器具のステンレス板に写り込んでいる。みんな楽しそうでよかった。教えてくれた参加者さんありがとうございます。

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2021.12.05、大阪市難波、高島屋別館

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2021年12月17日 (金)

地形模型を授業で作った

昨年から地形模型の練習をしているが、今年はモデリングペーストを塗ってみた。石膏モデルのような趣があってとてもよろしい。写真は授業中にわたしが作った見本である。

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2021.12.16、京都建築専門学校、工学基礎2

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2021年12月16日 (木)

路地のスケッチ

町の通りを横切る水路があった。路地から出てきて路地へ消えていく。そこは通学路になっているようで飛び出し注意などと書かれている。つまりこの町は水とこどもとが同じ道を通っているようだ。このときは子供はいなかったが水は流れていた。相当な勢いできれいな水が流れている。その音をBGMのように聴きながらスケッチした。

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2021.12.11/ワトソン紙はがきサイズ、グラフィックペン0.3、固形透明水彩 /兵庫県養父市養父広谷

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2021年12月15日 (水)

スケッチは2枚目がいい

スケッチ教室で最初に実演をするが1枚目がこれ。お社の屋根が大きいのは屋根の上にもうひとつ屋根が載っているから。おそらく雪避けなのだろう。そのおかげで大きな帽子をかぶった小さなこどものような愛らしさがある。1枚目にはそれがよく出ている。

しかしわたしがこれを描こうと思った一番の理由はそこではなくて、格子戸の美しさだったようだ。それが1枚目を描いているうちに分かってきたので、2枚目では格子戸を強調して描いてみた。

スケッチの2枚目は何を描こうとするのか目的意識がはっきりするし、それを描こうとするときに工夫もする。スケッチは2枚目のほうがおもしろいと思う。

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2021.12.11/ワトソン紙はがきサイズ、グラフィックペン0.3、固形透明水彩 /兵庫県養父市養父広谷

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2021年12月14日 (火)

水路のある町でスケッチ教室を開いた

今年最後の養父スケッチ教室を広谷で開いた。町のなかを小さいな水路が縦横にめぐり、流れる水がここちよい音をたてていた。とても良い町である。造り醤油屋が2軒も残っていた。醤油蔵もスケッチしたい。

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2021.12.11、兵庫県養父市養父広谷

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2021年12月12日 (日)

山田守の未来都市ここにあり

京都タワービルの地下にバルがある。そのフロアの東北側の階段がとてもいいので見てほしい。なめらかな曲線が美しい。白い塗装とからし色のアクリル板の配色のコントラストも利いている。半世紀前に山田守の見ていた未来都市がわたしにも見える。

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2021.12.11、京都タワービル(1964年竣工)

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2021年12月11日 (土)

梅田の無梁構造がよく見える

地下鉄梅田駅の南改札の天井が撤去されている。わたしはラッパ柱と呼んでいるが、正式には無梁版(むりょうばん)構造の柱がよく見える。梁がないので倉庫などで使われていた工法だ。今はもうあまりしないかな。ちなみに版は床スラブのこと。

ここは地下鉄開業のときの広場だから昭和8年の建築。今では魔窟のダンジョンと化した梅田地下街発祥の地だ。地下鉄トンネルと地上とのあいだに作る関係から無梁版構造となったのだろう。

ごらんのように左官さんが金コテで仕上げている。その上の塗装もつや消し剤を入れないので光っている。つや消し剤を入れないほうが塗膜は強いので土木系は入れないのがデフォのようだ。茶色いのはタバコのヤニだろう。元は真っ白だったと思う。

これはけっこうおもしろいので、このまま床スラブを見せてくれたらいいなぁと思う。

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2021.12.05、大阪市北区梅田

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2021年12月10日 (金)

村野藤吾の葉脈の浮き出た枯れ葉

梅田阪急ビルに上るたびに必ず撮っているな。村野藤吾の換気塔だが、上から見ると葉脈の浮き出た水中の枯れ葉のように見える。カルダンを意識しているのかも知れない。村野特有の軽やかさが余すところなく発揮されている。

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2021.12.05、大阪市北区梅田

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2021年12月 9日 (木)

キャバレー「ミス大阪」を見学した

まいまい京都でキャバレー建築めぐりをしてきた。みんなでミス大阪を見上げていると中へ入ってもよいと言っていただいた。「中を見たい!」という顔を全員がしていたのだと思う。思ってもみないハプニングにみんな大興奮で見学させていただいた。中はご覧のように濃厚な1970年代インテリアで見ごたえがあった。写真を撮って宣伝してほしいと言われたのでHPをリンクしておく。

我々はたまたま見せてもらったが、普通は見せてもらえない。現地で無理を言わないようにお願いしておく。

ミス大阪HP http://miss-osaka.com/

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2021.12.05、大阪市難波「ミス大阪」

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2021年12月 4日 (土)

あした大阪のキャバレー建築めぐりをする

明日まいまいでミナミを歩く。キャバレー建築が3つ残っている。よく今まで残っていたと思う。キャバレー建築はとくに意識したことがなかったので楽しみにしている。中へ入るわけではないが、外から見るだけでもわたしのとっては興味深い。なにか分かればまたご報告しよう。

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2021.09.28、大阪、味園ビル

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2021年12月 3日 (金)

武田的ディテール(51)下足入れの年代推定

以前も紹介したが、この下足入れは竣工当時のものかどうかは分からない。とりあえず戦前のものというのは分かる。なぜなら天板の下にモール(くり型)があるからだ。とてもシンプルでモダンな下足入れだが、モールがあるのだからいまだ様式主義の下で作られたことが分かる。戦後のものであれば、ここへわざわざモールを入れないだろう。

だからと言って竣工当時のものには見えない。なぜなら大正3年にしてはあっさりし過ぎているからだ。大正3年なら横長のフタになんらかの細工をすると思う。武田ならフタの下に指がかり用の三角形の刻みを入れたりするだろう。

したがって、この下足箱は竣工からしばらくたった昭和初期のものに見える。しかしながら武田っぽさにあふれている。武田っぽさの一番目はフタを横長にしたことだ。普通なら一足ずつフタを付けるだろう。横長にすることですっきりとしたデザインとなっている。

二つ目は下部の傘立てだ。ここへ傘立てを設けるという発想自体がおもしろい。傘立てと下足箱がこれほどきれいにまとまったデザインは他に見たことがない。

三つ目は傘立ての鉄部のデザインである。上部の横棒を2本添えにしたことがデザインに細やかな優しさを添えている。さらに真ん中の支柱がさりげなく下足箱を支えているのも秀逸だ。構造とデザインの自然な融合は武田っぽさの最たるものであろう。

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 2021.10.27、同志社女子大ジェームス館

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2021年12月 1日 (水)

武田的ディテール(50)オシャレは足もとから

これはテレビでも紹介したが、旧京都市陳列所の門柱の足元がとてもよい。門柱の角が四角くへこんでいる。門柱と礎石との接続部の切り込みがシンプルで美しい。なかなかこうはできない。門柱を見るときにはぜひ足元を確かめてほしい。

この部分は建築家の遊ぶ場所でおもしろい。参考にヴォーリズの同志社と武田グループによる淀屋橋をあげておく。

ヴォーリズの致遠館は解体されたが、この部分は保存されたので今でも見ることができる。丸く切り込みを入れているが、これではノミが入らないだろうに。難なくこなした京都の石工をほめるべきである。淀屋橋は武田流のシンプルさが微笑ましいが、電線管のカバーが足元をほぼ隠しているのはたいへんよくない。

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2021.11.19、京都市岡崎公園、京都市京セラ美術館
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