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2021年9月

2021年9月30日 (木)

飛騨で麻模様の浮彫を見た

飛騨高山の古刹・千光寺の扉が麻模様の浮き彫りだった。材は風化しているが、それでも陰影がはっきり浮かび上がってで美しい。他所では見たことがなく珍しい。さすが飛騨の工(たくみ)の国だ。

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2021.08.19、岐阜県高山市、千光寺

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2021年9月29日 (水)

まいまい難波の下見をした

12月の新コース・まいまい難波の下見をしてきた。とてもおもしろい。ミスユニバースの近くに同じような元キャバレーがふたつあった。どれも村野藤吾の影響を受けていることがよく分かる。もしくは大阪万博の影響か。村野も大阪万博も偉大だ。

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2021.09.28、大阪難波

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2021年9月28日 (火)

飛騨国分寺の大イチョウ

飛騨国分寺の境内に大イチョウがあって、その幹にお地蔵様が据えてあった。元は幹に直接彫刻された仏像があったと説明書きがあったように思う(記憶違いかもしれないが)。樹木に直接に仏像を彫るのは圓教寺マニ殿の桜観音があった(今はない)。ほかに清水寺開基の延鎮が西山連山で活きた観音(薬師だったっけ)に出会う話があった。これも神のごとき大きな樹木のことだろうと思う。だからイチョウの大木に観音を彫ることもあるだろうと思った。

飛騨旅行は円空仏拝観が目的だった。飛騨国分寺の円空仏もよかった。大型のものは迫力があったし、小型のものはゴマの煤で黒光りしてなんらかの霊力が宿るように見えた。そして円空仏が今でもこうして信仰されていることに驚いた。

実は円空は樹木に直接仏像を彫っている。その木が枯れたとき円空仏は切り取られて今は飛騨高山まちミュージアムにあった。それを見てわたしは飛騨の国には古来より樹木信仰が篤かったのだろうと思った。樹木に対する信仰が仏教によって上書きされ、木造の仏像や塔の芯柱に成り代わったのだろう。そんなことを考えた。

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2021.08.18、岐阜県高山市、飛騨国分寺

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2021年9月27日 (月)

飛騨で木材の雪による風化を見た

飛騨国分寺の三重塔の縁板がいい具合に風化していた。関西ではこうはならない。これは積雪のためだと思う。縁板の厚みも10センチほどある。関西だったらこの半分以下だ。やはり風化と腐食を見込んだ厚みなのだろう。木材は風化するようすもきれいだ。

三重塔は文久4年の竣工だそうだ。銅板葺きなのも雪害に配慮した結果だろう。檜皮葺のような柔らかさと軽やかさを備えた美しい塔だった。軒下には動きのある可憐な彫刻がほどこされていて見ごたえがあった。

ちなみに飛騨でかわらぶきはほとんど見なかった。飛騨高山の城下町や古社寺以外のまちは、ほぼトタン葺きだった。屋根勾配も緩いので元は板葺きだったのだろう。脳内でトタンを板に変換すれば板葺きのまちなみを用意に想像できる。板葺きのまちなみも良いものだと思った。

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2021.08.18、岐阜県高山市、飛騨国分寺

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2021年9月26日 (日)

霞橋の謎の張り出し

飛騨古川に小さな鉄橋があった。アーチが滑らかな流線形で美しい。橋の外側に張り出しがあった。鉄橋本体はリベット(鉄鋲)打ちだが張り出し部分はボルト締めなので、後から取り付けたのだろう。これはいったいな何ですか? よく見ると張り出しに箱状のものが複数載っている。これは何だろう。

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2021.08.19、岐阜県飛騨市古川町

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2021年9月25日 (土)

2消点で外観パースの演習をした

自分で作ったモデルを2消点パースに起こす演習をした。学生たちが演習しているあいだにわたしも描いてみた。最近ゴシックリヴァイバルに凝っているのでそんな風になった。楽しい。

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2021.09.24、摂南大学にて

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2021年9月24日 (金)

飛騨古川の旅館「八ツ三館」に洋間があった

飛騨古川の旅館「八ツ三(やっさん)館」に美しい洋間が遺されていた。セセッション風の幾何学的な割り付けの格子天井がおもしろい。内装やカーテンも古いままだったと思う。

古川は明治37年の大火で燃え抜けて、その後土蔵造りを並べた防火都市を造ったことで知られる。八ツ三館も古い客室は大火後すぐのもので、この洋間を含めた玄関まわりは大正期の増築部分だそうだ。いまは鉄筋コンクリート造りの新館があるが、古い部分も丁寧に修理してお使いになっている。

玄関欄間に笹にスズメのすりガラスがあった。なかなかかわいい。上下のダイヤ型の型ガラスが光を散らしているのもきれいだ。

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2021.08.19、岐阜県飛騨市古川町「八ツ三館」(※許可をいただいて撮影しています)

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2021年9月23日 (木)

飛騨高山は伊勢大神をお祀りする

 街の角々に伊勢神宮がおまつりされている。大きな石に載っているのが特徴だ。伊勢神宮のミニチュアが精巧にできていて見ごたえがある。それと大石とのコントラストが迫力があって美しい。こういう形式は西日本では見たことがない。飛騨高山だけの形式なのか、中部地方では普通にあるものなのか分からない。

高山城の鎮守が伊勢の大神を祀る杉箇谷神明社なのでその分祀なのだろう。ただし元は違うものをお祀りしていたように感じる。社殿部分がほぼ同じで一斉に作ったように見えるからだ。明治の神仏分離でこうなったのではないだろうか。

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破風上の突起は「むちかけ」だ。再現度が高い。
2021.08.18、岐阜県高山市

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2021年9月22日 (水)

心斎橋で旧いビルを見つけた

御堂筋の三津寺の裏に旧いビルがチラリと見える。以前から気になっていたが時間があったので表にまわってみた。するとまあそこにはテラコッタを貼りまわしたアールデコビルがあって驚いた。これほどのものが残っていたとは知らなかった。

店のなかに旧玄関が残っていた。店内なので写真は上げられないが、その扉上部分にトレードマークがあった。鹿をあしらった左右に「O.B」とあり、その下に「1928」とある。Oは大阪だろう。Bは分からない。1928は創業年だろうが、ビルもそのころのものに見える。近代化遺産リスト未掲載物件である。

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2021.09.19、大阪市中央区心斎橋筋2丁目

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2021年9月21日 (火)

飛騨の工の木組みを見た

 案外明るい。吹き抜け上部の高窓の面積が大きい。これは他でも見たので雪国の特徴だと思う。積雪のために1階窓からの自然採光が難しくなるのではないか。おかげで木組がよく見える。

大黒柱にするようなまっすぐな材を惜しげもなく梁に使っている。おかげですっきりとした軽やかな木組みとなった。明治8年大火後の建築だそうだ。

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2021.08.18、岐阜県高山市、若者等活動事務所「村半」

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2021年9月20日 (月)

村半のモザイクタイル

井戸まわりがモザイクタイルで飾られていた。タイル貼りの井戸は珍しい。モンドリアン風の乱貼りがきれいだ。窯変タイルを使っているので古いものではないかと思う。

この近くに新しい流し場があって、そこも似たモザイクタイルを使っていた。村半は修復が丁寧で見習うべき点が多いが、タイルで遊ぶとはなかなかセンスがよろしい。

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2021.08.18、岐阜県高山市、若者等活動事務所「村半」

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2021年9月19日 (日)

飛騨高山で電線ツバメの欄間を見た

電線に遊ぶツバメの図柄はとても珍しい。電線を張るためのガイシまで描かれている。風を感じさせる動きのある図柄で、およそ名のある画家の下絵によるものだろう。

村半こと村井半兵衛は飛騨高山の実業家で、いまは市有となって学生たちの活動拠点として活用されている。観光資源にするのではなく地元で使うという発想がよい。学生たちが出入りして活気があってよかった。

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2021.08.18、岐阜県高山市、若者等活動事務所「村半」

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2021年9月18日 (土)

飛騨高山の近代建築「中華そば鍛冶橋」

門柱の柱頭飾りがアールヌーボー風で楽しい。軒まわりの荒いスタッコ仕上げが光線をやわらかくにじませて独特の効果を生んでいる。飛騨高山の左官さんの技術の高さに目を見張る。

手許に岐阜県の資料がないので正確な年代は分からないが推定ならすぐできる。年代推定は通りが整備された時点が基準となる。通りの拡幅によって沿道で建て替えが進むからだ。この交差点の向かいに建っている天狗総本店が昭和初期なのだからそのころに通りが拡幅されたのだろう。だからこの建物も昭和初期と推定できる。

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2021.08.18、岐阜県高山市

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2021年9月17日 (金)

飛騨高山の洋館「天狗総本店」

庇の上がツンツンしているのが一番の特徴だろう。西洋のお城のようでかわいい。庇まわりは傷みやすいので残らないことが多いのだが、こうして健在なのを見れば大切に修理なさっているのが分かる。シルエットが守られているので窓がアルミサッシュに入れ替わっても印象はさほど変わらないだろう。

洋館は庇の出が小さいので窓枠の下から腐朽が始まる。見たところ1970年代に入れ替えたようだが、そのときに思い切って修理したのが建物の寿命を延ばしたのだろうと思う。

昭和初期、西田清棟梁設計施工(文化遺産オンラインより)https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/192709

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2021.08.18、飛騨高山

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2021年9月16日 (木)

一消点で平面パースの演習をした

前期最後の授業で平面パースを描いた。各自が壁を自由に並べたものを一消点で起こす。簡単に描けるわりには平面図が格段に分かりやすくなるのでわたしは実務でも使っている。学生たちが描いているあいだにわたしも1枚描いた。楽しい。
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2021.09.02/A4セクションペーパー、0.5シャーペンB、極細マーカー、色鉛筆/課題「不定形な部屋」

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2021年9月14日 (火)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(20)最終

最後に湯之島館の特徴を思いつくままメモしておく。

湯之島館は、前にふたつの和館、後ろにふたつの洋館が建つ。4つに分けたのは造成を少なくするためだろう。自然地形をできるだけ変更しないというのが湯之島館設計のもっとも大きな特徴だろう。

前に和館を並べて洋館を隠したのは景観への配慮だと思う。とくにここは温泉寺の真上なのでなおさらだ。これも設計上の大きな特徴だ。

和館はご覧のように飛騨地方特有の懸け造りとなっている。懸け造りとは斜面に建てる方法で下階が半地下となる。難しい建て方だが谷側から眺めると木造高層に見える。さすが飛騨の工(たくみ)の技だ。高度な建築技術も湯之島館の特徴であり見どころである。

短期であったが、心のこもった最高のもてなしを受けた。それが湯之島館の最大の特徴だろう。建物に対する行き届いたメンテナンスももてなしの一部なのだろう。建物が大切にされているのを見ることはわたしにとって最大の幸せであった。ありがとうございました。

※ ちなみにブログ掲載は湯之島館さまの許可をいただいております。

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉

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2021年9月12日 (日)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(19)

洋館は東西2棟に分かれていて、そのあいだを回廊が繋いでいる。洋館棟の前面に3階建ての木造本館と別館が建っているのだが、まったく眺望を遮らない。湯ノ島館は下呂温泉街のなかでも高所に立地する。眺望の良いことがこの立地の特徴であり、その良さを100%活かした設計である。

普通の設計なら諸室を渓谷側において共用廊下は山側とするだろう。それをひっくり返すことによって眺望の良い回廊と温泉テラスを中心としたリゾートホテルにふさわしい豊かな共用スペースを実現している。さすがである。

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洋館西棟
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洋館東棟
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2021年9月11日 (土)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(18)

湯之島館洋館の見どころのひとつに照明器具がある。部屋ごと場所ごとにデザインされた特注器具を見るのが楽しい。

写真1は階段室の照明。真鍮枠に擦りガラスの器具の上下面に厚みのあるガラスを配したデザイン。ガラスの切り口が緑色に光るのがかっこいい。

写真2は回廊の照明。真鍮の台に擦りガラスのキューブを取り付け、その両サイドに厚い透明ガラスを配置した。やはり小口が光るのと、重ねられたガラスどうしにお互いが写り込むようすが美しい。

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉


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2021年9月 9日 (木)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(17)

湯之島館は型板ガラスの種類も豊富だ。1枚目は丸窓のワンポイントに型板ガラスをあしらったもの。うまい使い方だと思う。2枚目は洋館回廊の窓の欄間部分。あまり見たことのない型板ガラスが使われている。花火模様だろうか。そのほか照明器具などにもがふんだんに使われており、さながら昭和の型板ガラスの美術館のようである。

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洋館回廊の丸窓
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回廊の欄間の型板ガラス
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洋館の回廊部分
2021.08.20、岐阜県下呂温泉

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2021年9月 8日 (水)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(16)

湯ノ島館は主に木造2棟と洋館2棟の組み合わせでできているので複雑になりがちだが、実際はとても分かりやすい動線で使いやすい。それは4棟をつなぐ回遊動線のおかげだろう。このあたり設計者の工夫の成果だ。

斜面なので回遊動線の2か所に上下をタテに結ぶ階段がある。手前のそれは斜面をゆっくり這い上る階段回廊となっており、奥のそれは3層吹き抜けの階段室となっていた。

階段室の窓には楽し気なステンドグラスがはまっている。6種ほどの型ガラスでできている。色のついていない部分は2種の型ガラスが使われており、それぞれ光の反射が異なる。微妙な光線のグラデーションが美しい。

図案は丹羽英二のオリジナルだと思うが、互い違いの模様が湯ノ島館の複雑な構成に頭を悩ませているようすを思わせておもしろい。

1 洋館の階段室のアールデコ模様のステンドグラス
2 階段室の最上部から見下ろす
3 階段室の最下部から見上げる
4 階段室の最下部

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉

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2021年9月 7日 (火)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(15)

洋館から木造離れへ続く回廊の5メートルほどがタイルの乱貼りとなっていた。洋館工事で余った分を活用したように見える。ガウディのグエル公園のように割れタイルを自由に挟み込んで楽し気なデザインとなっている。

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉

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2021年9月 5日 (日)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(14)

家族風呂その4 玉之井泉

家族風呂の最後が洞窟風で驚いた。バロック庭園にあるグロッタに似た岩風呂だ。床と腰壁の石貼りは戦後のものに見えるがよく分からない。

壁と天井のごつごつした感じはモルタル掻き落とし仕上げではないか。岩肌を上手に再現している。これは竣工当時のものに見えるが、ちょっと見ただけなので断言はできないかな。当時のものだとすれば左官さんの仕事として貴重な作例だと思う。

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉 

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2021年9月 4日 (土)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(13)

家族風呂その3 七宝泉

天井が驚いた。風呂場の天井は洗い場にしずくが落ちるのを防ぐために斜めに貼るのが常套手段だが、このような飾り貼りになっているのを見たことがない。窓からの光でエッジが光って浮かびあがっている。湯けむりのなかで見ればまた格別だろう。

タイルは白く窯変した濃い赤の布目タイル。多少水アカもあるがもともと赤が白に窯変し始めたあたりのタイルだ。おそらく鉛釉だろう。鉛釉は少し黒っぽい特徴ある深い赤になるのが特徴だ。現在では使われていない釉薬なので残っているのは珍しい。

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉 

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2021年9月 3日 (金)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(12)

家族風呂その2 不老泉

家族風呂には何度も手が入っている。温泉旅館の場合、酸性の強いお湯まわりから壊れ始める。これはどうしようもないことで、定期的に修理を繰り返すしかない。普通ならば風呂場ごと改装して古いタイルなど残らない。そのほうが簡単だからだ。

でもここは最小限の変更にとどめてる。家族風呂も窓がアルミサッシュに替わったくらいで、ほかはほぼそのままだ。古い部分を残しながら修理するのは結構難し。手間がかかる分だけ工費もかさむ。それでも残しているのは、それだけ建物に誇りをもっているからだと思う。古いタイルそのものもすばらしいが、これを残してくださった湯之島館がすばらしい。

1 布目タイル。目地を新しくしたがタイルは元のままだろう。
2 壁と天井は小粒のモザイクタイル。モザイクタイル特有の清潔感があって温かみがある。
3 窓が入れ替わったが他はほぼそのまま残している。

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2021.08.20、岐阜県下呂温泉 

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2021年9月 2日 (木)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(11)

家族風呂は4つありそれぞれ違う意匠を凝らしたものだった。とくにタイルがすばらしいのでご紹介しよう。

家族風呂その(1)銀嶺泉

当時のタイルがそのまま残っているのがすばらしい。壁は温かみのある黄土色の釉薬かけボーダータイルを腰までまわしている。床は黒い布目タイルを貼って色配置を引き締めている。黒い布目タイルは初めて見た。濃い緑なのかも知れない。珍しいと思う。温泉の水垢で少しくすんだ表情もよろしい。脱衣場は洋間だった。

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床の黒い布目タイル
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タイルがふんだんに使われている風呂場
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脱衣場は洋風だった
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脱衣場と浴室とのあいだのステンドグラス。アールデコ模様である。

2021.08.20、岐阜県下呂温泉 

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2021年9月 1日 (水)

湯之島館・娯楽棟がすごすぎる(10)

東側洋館の最下階の家族風呂フロアがタイルパラダイスとなっていだ。

これはホールと廊下の模様貼りだが、これを見ただけも飛騨まで来たかいがあったというものだ。編み物のような連続模様に赤が入ることで楽し気なリゾート感覚を盛り上げている。

かと言ってこれ見よがしな刺激的なデザインではなく、あくまでそっとりと落ち着いたものに仕上がっている。その理由は同系色タイルに濃淡を織り交ぜているからだろう。

わざわざ濃淡を混ぜることでデザインにゆらぎが生じ優しい表情を得ているのだ。タイルに対する細やかな心遣いが感じられるデザインである。

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青や赤のタイルをよく見れば濃淡があるのがお分かりだろうか。これは焼きムラではなく別色のタイルだろう。
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ベースが黄色系のアースカラーなので落ち着いた雰囲気となる。
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モザイクタイルの場合、壁際に縁どり模様を入れるのが一般的だったが、ここではそれを省略している。そのため構成主義的なモダンな印象になった。
2021.08.20、岐阜県下呂温泉

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