2021年5月 2日 (日)

常滑時間旅行05、巨大な倒焔式角窯

イナックスライブミュージアムには巨大な角窯が保存されていた。行ってみて分かったが、ここは大正10年の片岡勝製陶工場を保存したものでその中心がこの角窯だった。

これは倒焔(倒炎、とうえん)式という。排気口が窯底にあるので焚口から噴き出した炎が床に吸い込まれる。炎を倒立させることで広い窯内の温度を一定に保つことができるという優れものだ。窯のなかのミニシアターでその仕組みの解説があってよく分かった。煙突が高いのは吸い込む気流を強くするためだということもよく分かった。

特筆すべきは館内に展示された往時の常滑の風景写真だ。瓦職人の山田脩二氏の作品で工場街の日常が活写されている。わたしは直島の緑川洋一資料館を思い起こした。歯科医の緑川氏は高度成長期の瀬戸内海の島々の日常を精力的に撮影した。高度成長期には彼らのように誰も見向きもしない工場街の日常を克明に記録した写真家たちがいたのだろう。

彼らのおかげで私は当時のようすをありありと思い浮かべることができる。保全された巨大な倒焔式角窯のかたわらに、常滑最盛期の写真を並べたのは慧眼でありこのミュージアムの一番の特徴である。

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2021.04.20、愛知県常滑市、イナックスライブミュージアム

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