2021年3月 6日 (土)

武田的ディテール(16)記念碑のベンチ

鈴木博之のせいで有名になってしまった。台座の上の段々が国会議事堂に似ているのでこれは議事堂の習作ということになった。まあそう言われればたしかに習作かも知れない。武田は議事堂設計チームの主任格としてたいそう尽力したが、できあがった建物はちっとも武田らしくなかった。それに比べてこの習作のほうは武田らしさにあふれている。

和風くずしの柱頭まわりを取りざたする者は多い。それはそれでおもしろいのだが、私がもっとも武田らしいと思うディテールは柱のあいだのベンチである。

武田は記念碑を街角のポケットパークとして作ることが多い。それはウイーンのワーグナー先生の教えでもある。ワーグナーはウイーン改造にあたって記念碑は都市散策者の憩いの場とするべきだとした。改造されたウイーンの大通りには劇場や美術館やカフェが並び都市散策者の楽しみの場として整備された。記念碑は街路を楽しむための主要なストリートファニチャーのひとつとして機能していたのである。

武田は同じことを日本でもしようとしたことがこのベンチを見れば分かる。いまこの記念碑はフェンスに囲まれて近づけない。ベンチに座らせてほしい。

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2011.08.13、神戸市大倉山「伊藤博文公銅像台座」1911

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