2021年2月16日 (火)

武田的ディテール(11)タイル

このビルでは柱型には平タイルを貼り、壁部分には写真のような型タイルを貼っている。「く」の字型に型が入っており日に当たって影が落ちる。影が入るので遠目にみれば少し暗めに見える。平タイルのほうが光っているので柱型が浮き上がって見える仕掛けなのだ。これは本当によく考えられた意匠でいかにも武田の考えそうなディテールだ。とくにラインが上と左にしかないところが武田らしい。普通なら正方形の二重の型にするところだが、正方形だと下ラインには影は落ちない。どうせ落ちないのなら不要だろう。そう考えた武田がさしがねを陶土に押し当てて瞬時に作ったのがこのタイルなのではないか。わたしはそう思う。

ちなみに武田は1938年の2月に亡くなっているのでこのビルの竣工を見ていない。遺作のひとつである。

Dscf0027
2011.04.25、関電京都支店(旧京都電灯本社)1938

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