武田的ディテール(8)モザイクタイルの海
(6)で紹介した前久夫の文章を久しぶりに読んでみたところ、この玄関ホールの石材「トラバーチン」は沖縄産だと書いてあった。そうだろうと思っていた。というのは武田は沖縄でこの石材を再発見したからだ。トラバーチンはイタリア産の石灰岩で表面に小さな穴がたくさんあって模様がおもしろい。建築でよく使われるのだがこれと同じ石材は国内にはないと言われていた。
国会議事堂を作るとき各県から石材を提供することになった。しかし沖縄県だけ適当な石材が無かった。議事堂設計メンバーであった武田は沖縄におもむき亀甲墓に使われているサンゴ石灰岩がトラバーチンと同種であることを見つけたのだ。磨けば確かにトラバーチンと同じ模様が現れる。だから沖縄の石を使ったこの玄関ホールの床のモザイクタイルは沖縄のサンゴ礁の海をイメージしているのだとわたしは思う。
2015.10.21、同志社女子大栄光館(昭和3年)
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