2019年12月 8日 (日)

方広寺鐘銘事件メモ

慶長19年(1614)に起きた方広寺の梵鐘銘事件は徳川方のいいがかりとして知られている。本当にそうだろうか。気になるのでメモしておく。

問題となったのは「国家安康」と「君臣豊楽」の二行だ。国家が安全で健やかでありますように、君主と臣民が豊かで楽しみますようにという祈願文である。それを徳川方は家康の悪霊を安んじ、君主たる豊臣が楽しむ世がきますようにと読んだ。徳川を呪詛する豊臣方の陰謀だと騒ぎ立てたわけである。わたしは徳川方の言うとおりだと思う。

銘文の全文を読めばこれが呪詛である感は深まる。短文なので意訳してみた。

洛陽の東のふもとに仏教の道場を開く
屋根は高くそびえ梁は虹のように横たわる
さまざまな大きさの幾万もの瓦
天井の高い長い廊下
すべての壁は宝石のように光り
あらゆる方向へ輝きをなげる
騒がしい戦争の夜が明け新しい時代がやってくる
中国日本で第一番であるこの寺院はその象徴である

高く掲げた新しい鐘の
その音は永く
遠く近くに響き渡る
そのリズムは音楽となり
18回はゆっくりと
108回は早い

夜に座禅をし
昼に経を読み
夕べに法灯をともし
朝に香をたく
仏の世界を天竺の教えに聞き
湘水の遠き寺に仏法を知る(なんらかの故事か?)

東に新月を迎え
西に夕陽を送るとき
笥山に地を掘り(なんらかの故事か?)
豊山に霜が降る(なんらかの故事か?)
怪異を漢国に告げ(なんらかの故事か?)
唐の苦しみを救った(なんらかの故事か?)
霊異はおびただしく
功用は無量である

乞い願わくば
国家が健やかで安全でありますように
すべての世界が仏教で感化され
芳しい万歳の声が世界に満ちますように
君主と臣民が楽しく豊かでありますように
子孫が繁栄しますように
仏教の基礎と
寺院の堅い守りと
信者の徳が
山のように高く
水のように長くありますように

わたしが怪しいと思うのは「怪異を告げ苦しみを除く」と「おびただしい霊異の効果は絶大である」の二文だ。「怪」「苦」「霊異」などという文字を普通使うだろうか。新月と夕陽の時間も極陰を示しており呪いの時にふさわしい。

方広寺には寺院配置の点からも怪しいものを感じる。そもそも西向きの寺院は珍しい。とりあえず謎深い事件ということで。

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