内藤昌「近世大工の美学」
前半の大工列伝が西洋ルネサンスの建築家列伝のようでおもしろかった。戦国時代の建築家は西洋ルネサンスの建築家と肩を並べる天才揃いだ。その活躍が江戸時代の建築にも影響していることもよく分かった。近世から明治までの日本の建築家を俯瞰する良書だと思う。
後半の環境倫理についての章は哲学的な用語が多き私にはさっぱり分からなかった。西洋文明の行き詰まった現代を日本の古典建築が再生すると言いたいのかも知れないが、古典のなにが現代を再生させるのかが分からない。古典建築に関する記述がデザイン中心なのだが、もし現代社会に役立つとすればデザインよりも当時の構法や施工体制のほうではないかと思っている。
中公文庫1997年刊、2019年1月2日読了
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