加藤眞吾著「清水寺の謎」
これも謎解きではなかった。「謎」で読者を釣るのはやめてほしい。副題に「なぜ舞台は造られたのか」とあり、かねがね私もその意味を考えていたので買ってみた。でも結論は「狭くなったので増築した」「舞台というからには芸能を奉納した」「記録が残っていないので本当のことは分からない」だった。それは推理ではない。
おもしろいエピソードはいくつもあった。平安時代に貴族の若ボンが舞台の手すりを蹴鞠のリフティングをしながら渡った話などおもしろくて仕方がない。また、清水寺の僧侶が尊王の志士として活躍した話など興味深かった。百科事典のようで読むのに苦労したが、案内本としてよくまとまっている。良書である。
著者は清水寺の学芸員の方なので、さすが取り扱う内容が的確で信頼できる。1942年生れ2013年没。この本は亡くなる前年70歳のときの出版。京都新聞の記者だったとあるが詳しい履歴は不詳。他の著書があるのかどうかも不明。
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