建築探偵の写真帳 戦後ビル編 京都東京海上日動火災ビル
良いビルだ。このころのビルが解体するか大規模改修で元の姿を失うかするなかで、よく原形を留めているのはうれしい。よく見ると正面のバルコニーの奥行が左右で違う。おそらく敷地が台形なのだろう。この程度なら台形平面にして良さそうなものだが、あくまで建物は長方形として、バルコニーで調整するというのは思い切ったデザインだ。
もうひとつおもしろいのは柱がまったく見えないことである。普通これだけバルコニーを巡らせれば、柱は見せることが多い。このビルの場合は、柱を内側に隠すことで提灯のような軽やかさを得ている。これ見よがしなところが全くないだけでなく飄々とした清々しさを得ている。おそらく60年代前半だと思うが、この独特の軽やかなセンスはこの時代のひとつの潮流である。
2016.12.28、京都市下京区四条通麩屋町西入ル立売東町22
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