建築探偵の写真帳 施釉レンガブロックを見つけた
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初めて見た。とてもおもしろい。上下の出窓のあいだに八角形のボックスが張り付いており、表面が市松貼りの塼だった。それが白華しているのは裏込めのモルタルのカルシウム分が染み込んだせいか。おもしろいのは窓の横の六角形の銅製の飾り金物だ。下から覗くと裏側はへこんでいてパラボラアンテナのようになっている。塼や飾り金物のような伝統資材を使いながら全体としては宇宙基地のような未来感がある。
浪速組は左官業なのだそうだ。一昨年のイケフェスで公開なさっていたらしい(参照)。ぜひ内部も拝見したい。
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今の鉄橋は昭和7年(1932)とプレートにあったので、この橋脚はそれ以前のものだ。ウイッキによれば玉造ー梅田間が1895とあるので、そのときのものだろう。当時は大阪鉄道なので民営だった。
謎がいくつかある。ひとつは橋脚がふたつあること。手前が単線で奥が2線だ。対岸には2線のほうしか残っていない。もうひとつはレンガの積み方がふたつで違うこと。手前がイギリス積みで奥がフランス積みだ。
フランス積みのほうは、焼き過ぎレンガと混ぜ積みにしているようできれいな模様になっている。この橋脚が人から見られることを前提に作られているわけだ。当時、レンガを積んだひと達の誇らしげなようすが目に浮かぶ。
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< 全体として >
卒業おめでとう。私が見ていた1年生のこの学年は要領だけが良いような印象があった。可もなく不可もなくという物足りなさがあったが、卒計を見せてもらって十分悩み七転八倒したようすを見て成長したなぁと安心した。作品の出来の良し悪しよりも、わたしはどこまで悩んだかが大事だと思う。その経験は一生の糧になるだろう。
例年に習って円満字賞を出したが、そのほかの作品もそれぞれ味があっておもしろかった。賞は下級生へ向けての私の個人的な考えの表明であって、決して作品の優劣を示したものではないことを断っておく。
今回は例年になく完成度が高かった。これは12月にいったん完成させるという本田式が有効に働いたからだろう。例年、未完成のまま涙を飲むケースが多かったが、それが防げたのは大変よいことだと思う。
今年の特徴はハワードの田園都市論に通じる作品が多かったことだ。流行っているのだろうか。作品に( )書きで示しておいた。本人はどう思っているのか知らないが、わたしにはそう見えるという勝手な添え書きを許してほしい。実を言えば私自身は田園都市論に否定的だ。人工的に都市を作るというのは不遜ではないかと思っている。だがレッチワースのような風景は大好きだ。今回は大好きな風景をたくさん見ることができてとても楽しかった。
展示はとても見やすかった。全員で協力して展示を盛り立ててくれたことがよく分かった。わたしが見ているあいだにも一般の見学者が多かった。見せるということはとても大切なのだと思う。個別の感想は下に示した。論文系は講評する能力がわたしにはないので申し訳ない書いていない。許してほしい。
< 個別に >
★まちが育みまちが育つ教育空間(空想系)
月をモチーフとした学校建築。隼人舞の残る京都府南部の大住を敷地とした。まず「月の廊下」などのネーミングのセンスが良い。タイトルや各部のネーミングはとても大事だ。「月の廊下」は天球上の月の道「白道」を象徴しているが、曲線で構成されたプランのなかで唯一直線なのもよくできている。空想系の卒系だが、学年ごとに付きと親しむ装置が仕組まれており現実と空想との折り合いがつける構想力を評価したい。円満字賞を贈る。
・つながりを生むゲストハウス 神戸元町を舞台としたバックパッカー用の宿泊交流施設。3つの敷地にまたがりサイコロのようなユニットを積み重ねた特異なプランが特徴だ。ユニットが細々とした周辺地域の風景とよくなじんでいる。さらに各ユニットに大胆に天窓を開けることでボリューム感をうまく消している。プランには廊下がほとんどなく、効率よく機能を分担させている。なかなかのデザイン力だ。
・マルシェ団地 高齢化した既存団地に市場を組み込むことで若い世代を呼び込むリノベーションプラン。外周デッキをめぐらせるのはコーポラティブハウス「花みずき」(1985)の前例がある。おもしろいのは階段式団地の画一的な間取りを3種に作り変えているところ。現状をよく観察した十分実現可能な提案だ。
・つるはしの暗示(空想系)
ふたつの地域を地下でつないだ日韓ミュージアム計画。ドローイングの線が自分のものになっているので見ていて楽しい。模型を上から見ると穴が開いていておもしろい。普通、地下計画は断面が見せ場だが、俯瞰こそおもしろいという特異な世界観を創り出している。支石墓モチーフはよく分からなかったが、周辺の下町ともよくなじんでおり十分な構想力を感じた
・地域が集う学校(空想系、理想都市)
差別撤廃を目的とした地域開放型の在日朝鮮人学校。校舎の背が低いのは丘の樹高に合わせたのだろう。レイアウトも地形に沿っており、レッチワースの田園都市を彷彿とさせる。計画内に水田が含まれているところを見逃してはならない。田園都市は中世主義的な社会主義世界を理想としていたが、このプランはその理想に手が届く計画だと言えよう。
・育み繋がり(空想系、理想都市)
尾道を舞台としたアート系複合施設。3つのボックスを組み合わせ、その重なったところに2階井戸を再現している。2階井戸は斜面に展開した尾道特有の井戸だそうだ。また屋上を繋いだ歩廊など、立体的な町のおもしろさを新たに再現しようとした着眼がおもしろい。歩廊をつきぬける樹木は落水荘を思わせる。ライトの自然回帰的な理想都市の世界観に通じる作品だ。
・都市近郊のユートピア(理想都市)
自然のなかの陶芸家の暮らしをモデルとした小都市。モリスの「ユートピアだより」を思い出した。今年はどうしてこんなに理想都市系が多いのだろう。螺旋階段の軸に各部屋のユニットが接続して一住戸をなす。動きのある造形がおもしろい。ガフのバーベンジャー邸(1950)を思い出した。ガフの自然回帰と同じ志を持ち、それを十分斟酌した作品だ。自然農法の実験的取り組みが行われている宇治市炭山という敷地選定も的確である。
★都市で暮らさない(空想系、理想都市)
今回の卒計展のなかでもっとも心に残った作品だ。都会を逃れた数家族が住みついてから50年後までをたどる大シミュレーションだ。おもしろくてワクワクする。最初の住民が建築家・大工・居酒屋・ハンバーグ屋というのがおかしい。その次にやってくるのが車の整備工というのもおもしろい。次第に集落規模が大きくなり、最終的に向かいの島に古墳のような壮大な墓地をつくるところで終わる。シミュレーションとしては防災、衛生、教育などが抜けているが、そんな細かいことより発想そのものが楽しい。円満字賞を贈る。
★水路とともに 八幡堀の一部を改造したホール計画。八幡堀スケッチがとてもよい。イメージスケッチも上出来で見ていて楽しい。自分の線で伸び伸び描く実力がある。水上の大きなホールとそれを取り巻く回廊の組み合わせが美しい。八幡山を背景としたロケーションともよく馴染んでおり卓抜した建築力を感じた。円満字賞を贈る。
・東大阪インダストリアルパーク(理想都市)
既存の工場長屋をリノベーションした工房計画。中心の象徴的な鉄骨等がラピュタを思わせる。この計画は理想都市系の工房都市である。特筆すべきは中央のオープンスペースの透明感だ。明るく見通しの良いスペースが気持ち良い。理想都市系は共用部分の充実が欠かせないが、この計画はそこをしっかり押さえている。高度成長期の工場建築というまだほとんど誰も注目していない建物を使う目の付け所の良さも見逃せない。
・あるく街あるく高架下(空想系)
鉄道高架下を舞台とした歩廊計画。ハルプリンを思い出した。既存の公園から人工地盤のゆるい傾斜路をつくり、その先に落水型の噴水を設けたところが圧巻だ。その上を京阪特急が走り抜ける風景はとてもワクワクする。この構想力は大切に育ててほしい。
★やぐらネットワーク 祭りの山車「やぐら」のための施設計画。全やぐらの集合する広場と後継者養成のためのクラブハウス、やぐら収納庫の活用プランの3構成となっていて、そのどれもがおもしろい。広場には高床式のクラブハウスが林立しており、その下にやぐらが収まる風景が船宿を思わせて楽しい。クラブハウスの配置がやぐらの地域分布をなぞらえているところもおもしろい。やぐら収納庫の活用は既存部分をほとんど改造しないところも祭りに対するリスペクトを感じる。レンガ図書館や梅干しカフェなど地域性を反映させたアイデアも楽しい。円満字賞を贈る。
・竹バンド早期組み立てシェルター 梱包用バンドを利用したバンブーハウスの組み立てシステム。誰でも使えそうな単純さがおもしろい。被災用とのことだが自然教育用にも使えると思う。
・木造耐力壁開発 小型の実験装置。構造家棚橋諒が法隆寺の構造解析のために作った実験装置を思い出した。棚橋の孫弟子西澤英和は構造実験は装置を手作りするところから始まるとも言っていた。構造家魂が今に生きていることを見せてもらった。
・数学教具 会場で作者とも話したが、わたしは個人的に多面体の不思議を考えている。正六面体の中に正4面体が入っていることを見つけたのは大学生のころだった。これは数学の問題で双体というそうだ。数学と建築との関係は深い。それを教具で実現できるのはおもしろい。
・焼き竹 丸竹を中から焼くのがおもしろい。表側は滲み出た油で磨く。焼くことで防腐防虫効果が上がるそうだ。もともと竹は主要建材だったが工業化のなかで見捨てられてきた。その復活をめざすのは建築のありかたそのものを問うているように思う。
・学び舎からうみへ 離島の水産学校計画。既存集落の形態調査を踏まえて小さなユニットを動線に沿って配置しており周辺とよくなじんでいる。オープンスペースに投げ網を模した象徴的な大屋根をかける。各施設がオープンスペースを緩やかな中心として結びつき、それが既存集落とも自然に繋がっていく秀逸な集落計画だ。
・狭くて広い(空想系)
津波の避難場所としての人工地盤の上下に住戸が展開する。とくに林立する柱の間にぶらさがる地盤下の住戸がおもしろい。これはアフリカの懸崖都市や日本の投げ入れ堂を思い起こさせる。墨絵の桃源郷にもつらなる桃源郷のイメージではないのか。現実的な制約をはずしてもっと自由に考えさせたい。
・まちに入り込むキャンパス まちに開いた大学キャンパス計画。オックスフォードのようなキャンパスの田園都市化をねらっていると思うのだが平面図だけなのでよく分からなかった。
・遊びを通した教育装置 撮影した人体のシルエットを動画出力し、手の開き方の関数を表示するという装置。投影型アートを思い出した。
・ヨリドコロ 鞆の浦を舞台としたインスタレーション。五感別に構成されている。それぞれ考え抜かれておもしろかった。それらを統合する鞆の浦文化と言ったようなものが用意されればさらによく分かったと思う。その文化はおそらく海にまつわるものなのだろう。
・衣那に溶け込む空間 過疎化する漁村への移住者のための研修施設計画。3か所に分散しており、それぞれが周辺とよく調和した良質な木造建築をめざしているのが分かる。再生のための種を埋め込むという考えはおもしろい。周辺環境のなかに施設を描き込んだ図があればもっとよく分かったと思う。
・わかめ ブランド化のためのパッケージデザイン。波打ったパッケージがよくできていた。話は変るが、私は昨今流行りのブランド化は百貨店に媚を売るようで賛成できない。産地の意地のようなものが表現できればいいなと思う。その点、波打ちパッケージは気取りがなくて分かりやすくて良いデザインだと思う。
・雨の建築(空想系)
池の中の一本道、雨だれを流した数千のくさりが垂れる本館、そして森がある。敷地に選ばれた高槻城跡はこの作品の主題とは関係がない。私は白井晟一の原爆記念館に近い作品だと思う。
・野洲川を臨むパッシブハウス 3Dソフトを使ったパッシブデザインの解析モデル。夏場に吹く風に向けて階段状に低くなる。扇形の平面をしており、野洲川の眺めを最大限に活かした作品となっている。私もパッシブデザインについては最近勉強を始めてたばかりだ。風の道は集落形成にも影響するのではないかと思っている。ぜひこれからも研究を進めてほしい。
・光と影 小住宅の計画だが、本当は光と影が作り出すもうひとつの建築を設計しようとしている。いわば実態としての建物のなかに光と影によって本当の建築が浮かび上がるという仕組みだ。光のたまり場と名付けられた中央の螺旋階段が見せ場で、そこはさまざまな光と影の舞台となるだろう。小品ながら実直な設計に好感が持てる。
・地域共生プログラム 丸太を使ったイスと梱包用バンドを使った可変家具のふたつを事例とした空間認識教育プログラムの提案。バンドを使った家具は本年最大のモデルでひとりでよくやったと思う。バンド家具はさまざまなバリエーションを考えることができてとてもおもしろい。
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