建築探偵の写真帳 戦後ビル編 京都タワービル
10年ほど前に改修されてから何か変なのだが、どこが変わったのかよく分からない。手すりまわりかな。
山田守の晩年の作品でわたしは好きだ。京都タワーは天才構造学者棚橋亮が国内初の円筒形タワーとして見事に設計した。構造家は建築家の陰に隠れて表に出ることが少ない。わたしはこの建物を紹介するときには意識して棚橋の名前を出すようにしている。けれど最近は山田のことを言い添えたほうが良いように思えてきた。彼は聖橋や武道館で知られるが、同時代の丹下や前川と違って話題に上ることが少ない。山田はもっと評価されてしかるべき建築家だと私は思う。
彼は他の建築家と違ってボリュームで押し出すタイプではなかった。曲線を使った軽やかさが彼の持ち味で、それはこの建物を見てもよく分かる。大きすぎるバルコニーの椀曲線が波打つような躍動感を生み出している。京都タワーに目を奪われて下のビルをよく見ることが少ないがこれはなかなかの秀作なのだ。
もうひとつ特徴的なのは金属板を惜しげもなく使ったことだ。ステンレスに見えるがこれはジュラルミンではないかと思う。ジュラルミンはアルミの合金なのでステンレスより軽い。耐候性もよく60年代にはよく使われていた素材だ。この金属質な手触りが動きのある造形とよく響き合っている。
きょう前を通ったら定礎を見つけた。金属製の定礎板がしびれるほどかっこいい。
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