2015年11月 9日 (月)

ギャラリーeyes「林真衣展」

 前から見たかった作品だ。ようやく見ることができた。思っていたより大きい。しかもとても細かいテクスチャーが画面を覆っている。気泡の割れた後のクレーターや縮み和紙のようなシワなど絵によってテクスチャーは変る。それは十分近づいてみないと分からないほど細かいものだけど、それが画面に独特の陰影を与えている。わたしは長年風雪に洗われてよい具合に古びたトタン壁を思い出した。

 画面は青だったり黄色だったり絵によって同一系の色彩なのだが、それが動いていたり流れていたりする。風や雨を思わせる動きがあるのだ。その動く色彩のなかに木や鳥などがほんのわずかな線描きで散りばめられている。わたしはここに描かれているのは「その場所」の空気なのではないかと思った。いや、光と言ったほうがよいかも知れない。絵を見ていると、その場所の空気の冷たさや温かさ、鼻孔をくすぐる山の匂い、鳥やせせらぎやこずえを揺らす風の音が聞こえてくる気がする。

 水の上の墨絵を和紙で吸い上げるように、光を吸着する吸い取り紙で空気を写し取ればこんな絵になるのではなかろうか。そのとき光が物質化して細かいテクスチャーを生んだように見える。それは新鮮な光の拓本なわけだが、テクスチャーは何十年もかけてようやく仕上がるエイジングがほどこされているのがおもしろい。

林真衣展 https://www.youtube.com/watch?v=_bRUS-1HTZc

ギャラリーeyes http://www2.osk.3web.ne.jp/~oeyes/

 

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