2015年5月11日 (月)

ワークワークファンタジア(103)

 巫女たちは東市司と高句麗王の頭上を高々と超えた。そんに続いて30頭ほどの馬が続いた。馬具は備えているが無人だった。

「うわー何あれ!」
「ヘビ!ヘビ!」
「止まれないー!」

 巫女たちは疾走し小龍の先頭を飛び越えた。それに反応した小龍が頭をもたげて思い思いの方向に食いついた。急に進行を止めた小龍に後続の龍たちがぶつかり混乱した。もつれあう小龍の胴体を巫女と馬たちは一糸乱れぬ統制で流れるようにくぐり抜けた。

「うわー!」
「なにこれ!」
「ヘビの柱だー!」

 大回廊から大極殿の広場へ飛び出した巫女たちは、そのまま龍の柱を左まわりにまわった。黒い影となったフセ姫が手を上げるのが見えた。柱の先端が赤く発光して光条が五月雨のように巫女たちに降り注いだ。

「うわ!」
「あぶね!」
「逃げろー!」

 光条を軽く避けながら馬たちのスピードは全く落ちない。砂煙を上げながら再び大回廊に突入した。それをまた小龍が襲う。しかし動きが早すぎて馬1匹たりとも喰われなかった。たちまち小龍の先頭を飛び越えてサンスたちの前に飛び出してきた。

「姉さま早く!」
「みんな連れてきました!」
「30頭全部です!」
「ぎゃははは」
「おっとあぶね」

 態勢を立て直した小龍が再び襲い掛かってきた。生き残ったものたちは馬に分乗して駆けだした。小龍はそれに追いつき、最後尾のサンスを乗せた馬に食いつこうとした。口が馬を飲み込むほど巨大に膨れ上がり、剣のような歯がジャラジャラうなる音が聞こえた。それがサンスらを一飲みにしようとしたとき、いきなり小龍の前進が止まった。噛みつこうとした小龍の口が盛大に空振って大きな音を立てた。大極殿の柱から尾が抜けきっていないので、小龍の長さがちょうどいっぱいになって前進できなくなったのだ。サンスは馬を駆る巫女を後ろから抱きしめた。

「ふう、助かったわ、あんたたちよく来てくれた、ありがと」
「ぎゃはは、くすぐったいですじゃ」

 馬は宮城門を駆け抜け、燃え盛る民部省の前を通り過ぎた。中は火の海となっており、文書を持ち出そうとする官僚たちで混乱していた。道観の塔はくずれ落ち、まわりの建物に火が回っていた。そこはすでに無人で、中庭の梅の木が火災の風にこずえを揺らしていた。

 南大門が見えてきた。門は固く閉ざされていた。

「待て待て待て!」
「止まって止まって!」
「うわー!」

 全騎が手綱を引いて止まった。砂煙が納まると門の前にワイ族の門衛たちが剣を構えているのが見えた。門上からは弓兵がこちらをねらっていた。

 最初にポランが進み出た。衛兵の隊長はそれを見て驚いた。あわてて衛兵たちに武器を納めさせるとポランに駆け寄ってきた。

「ポラン様!いったい何が起こっているのですか」
「門を開けてくれ」
「今、宮城で異変が起こっているとの伝令が参りました。門は勅封されております」
「それじゃあ、門を開けることを俺が許してやろう」
「こ、これは国王様!ただちに開門いたします!」
「ここに小うるさい律令官がいなくてよかったよ」

 隣で百済の律令官が苦笑いしていた。王はコムサに尋ねた。

「コムサよ、さっきの短剣はなんだ」
「はい、東晋使の節刀です。どうやら使い手の力を引き出すもののようです」
「ほんと?さっき私使えたよ」
「サンス、お前にはその手の力が隠れているのだよ」
「まるで妖刀だな。それではお前が息子に探させている倭人の大巫でもなけりゃ使えないわけだ」
「仰せのとおりです」

 そのとき爆音が鳴り響き巨大な光条が南大門を襲った。2階の木造建物の中ほどが打ち抜かれ、ぽっかりと丸い穴が開いた。次の瞬間に大屋根が崩れ落ち、建物の大きな塊が門前に落下した。砂塵で視界が奪われたが、はるか遠くの宮城にそびえ立つ巨大な龍の柱の頂上が明滅しているのは分かった。

「早く門を開けろ!」

 コムサたちが大きな閂を外した。全員が重い扉に取りついて門を開け始めた。至近距離に第2弾が着弾し、ようやく開きかけた大扉を爆風がまた閉めてしまった。

「もう一度開けるぞ!次弾までに間がある!みんな片側だけに集まれ!」

 高句麗王もワイ族も周辺諸族の族長たちも、さらに百済の律令官たちも生き残ったものたち全員が、砂まみれで真っ白になりながら門を引っ張り開けた。門は重かったが、ある程度動きだすと勢いがついて動き始めた。水びたしになった市場が見える。東晋船が燃えているのも見える。そして門が開ききったとき、その向こう側に見慣れぬ一行が立っているのが見えた。それは到着したばかりの倭人の大巫たちだった。

「お前たちはいったい何をしておるのじゃ?」

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