2015年5月10日 (日)

ワークワークファンタジア(101)

 コムサらは宮城の門をくぐった。そこはまだ酒宴のさなかで平和なパレードの余韻が残っていた。辺境部族の族長らがコムサを見つけて集まってきた。口々に無事を祝ってくれる。辺境諸族は時により敵味方に分かれて戦うときはあっても、楽浪郡落城以来の友人たちだった。

「よいか。城内で怪異が起こっておる。あれを見よ」
「あれは何だ?」
「龍の柱ではないのか」

 コムサの指さした中門の向こうに龍の柱が立ち電光を放っていた。コムサはこれから起こることを話した。族長らの対応は早かった。酒宴に集まった王険城のものたちを退城させ、自分たちは再び武装した。たちまち中門の前に一個小隊の軍隊が勢ぞろいした。しかし中門は固く閉ざされこちらからの呼びかけに応じない。すでに敵に手に落ちたと考えるべきだろう。

「ここはだめだ。庭園側から回り込もう」

 コムサは反転して宮城と隣り合わせの王宮庭園側から侵入することを提案した。一同が同意し反転しはじめたとき頭上を幾筋もの光条が走った。目もくらむほどまばゆいそれは耳をつんざくような金属音を発し広場の空気を震わせた。王険城のいずれへか落ち、遠い地響きとともに黒煙が各所から上がるの見えた。人の手で押しとどめることのできない巨大なエネルギーをコムサは感じた。それは他の族長らもそう思ったようだ。

「コムサ殿、これは麦原の戦いの再来ではありませぬか」
「もう黒娘が現れたか。手遅れかもしれん」

 地鳴りとともに地面がはげしく揺れた。振り返ると中門のむこう側で新たな火の手があがり黒いキノコ雲が立ち昇った。

「いかん、来るぞ!みな伏せろ!」

 コムサが叫んだのと中門の大きな扉が吹き飛ばされるのが同時だった。全員がわっと伏せた。その頭上を火球が飛び抜け宮城の表門に当たって炎上した。彼らの上にばらばらになった中門の扉が降り注いだ。ゴーという爆音が少し遅れて広場全体を震わせた。

 ようやくコムサが立ち上がったとき中門の大扉が無くなり大極殿まで一直線に見通すことができた。すでに東市司らが走っており他のものが続いた。

「ああもう、いきなり突撃かよ!索敵も何もあったもんじゃねぇ。でもまあ今はそれしかないか」

 コムサや族長らが後に続いて走った。大極殿前の広場にはさきほど軍司令部で見たのと同じ龍の柱が立っていた。大極殿は基壇だけを残して無くなっており、小龍が生き残った人間を食い荒らしているところだった。基壇の上に扁平なテントのような膜があり、その中に生存者がいるようだった。そこへ電光が落ち炎の中で膜の表面が薄い紙片のように浮き上がり剥がれていった。炎が消えたとき膜は消えており中の幾人かが焼け死んでいた。

「フハハハハ、ソノ程度ノ剣デ我ガ行ク手ヲ遮ルコトナドデキマイ」
「フセ!もう良い!止めてくれ!」

 宙に浮いた黒少女が西王母の顔のまま民部卿を見下ろした。そこに人がいたことに初めて気づいたように少し驚いたようすだったが最初それが誰だか分からなかったようだ。それでも何かが通じたようで相手を検索するようにじっと見つめていた。そのうち黒少女の姿の輪郭が雑音が入ったように揺れ、ものすごい勢いで顔がさまざまな人間のものに変化した。そして元のフセ姫の顔に戻った。

「・・・とと様」
「もう良い。これで十分だ。私が間違っていた。私は審判(さにわ)を望んだわけではなかった。もうこれで良い。やめてくれ」
「・・・かか様が言うのじゃ、天湖へ行けと。別のいろんなものたちの声が聞こえる。わらわのなかにいろんな者が棲んでおる。・・・わらわは・・・ずっと龍の子と遊んでいたかった」

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