2015年2月24日 (火)

神戸散歩(2)旧国立神戸生糸検査所

 修復が終わってから初めて来た。古いものを上手に残した再生だ。古いものをよく分かった人の再生は見ていて気持ちが良い。

 館内を自由に歩けるようになったのでようやく全体を理解できた。南側にトラックの進入口があり、その先にプラットフォームのような荷降ろし場がある。その奥に体育館のような部屋があり、そこが荷解き場だそうだ。どういう流れで作業されていたのかが分かればもう少し全体像が分かるだろう。資料室をちゃんと見ておくべきだった。

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古いエレベータ表示板が残っている

 1932年置塩章(おしおあきら)設計だ。置塩は神戸高校(1938)のヨーロッパ城郭風のデザインが有名で、わたしのなぜこうなるのか不思議に思っていた。保存工学の西澤英和さんによれば、戦時に司令部となる公共建築に城郭風デザインが多いのだそうだ。それもあるだろうが、やはりわたしは置塩がこういうデザインが好きだったのだろうと思う。置塩の好きな「これ」とは中世でもヨーロッパでもなく結構正統な分離派様式ではなかったかと今回思った。それは正面階段室に如実に表れている。

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 ソフトクリームもしくは聖火のような階段親柱。トップのキャベツのようなモチーフが唐突でおもしろい。装飾分解もここまで来るとモチーフの意味など霧散している。その独自の世界観は童話的な象徴世界に達しているように見える。

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 ここで注目したいのは色使いだ。赤とグレーの大理石の色の対比がとても美しい。この対比が正面玄関ホールの明るく軽やかな印象を作り上げている。

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 さらに形に角張ったところがなく優しく包み込むような印象も与えてくれる。玄関ホールから見上げると階段の上げ裏がゆるくカーブを描いているのが分かる。よく見るとそれは3次元曲面なのだ。このとてつもなく難しい左官仕事が優しいデザインを支えている。

 3次元曲面は図面化できないのでデザインできるものは少ない。またそれを実現化する高等な左官技術もいつも手に入るとは限らない。彼の不思議なデザインは神戸の優れた建築職人の技能に支えられて実現しているわけだ。この建築技術と建築家の構想力との融合が彼の特徴なのだと思う。

 

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