2014年1月12日 (日)

建築力は現場でしか養成できないと思う

 授業で学生と接するたびに、学生のころの自分も不自由だったことを思い出す。なにが不自由かと言えば、表現意欲はあるのに表現力がついていかないことだ。

 いくら表現意欲があっても表現力が足りなければ、それ以上のものを作れない。やっかいなのは建築の場合、表現力に2種あることだ。ひとつは建築そのものを作りあげる表現力。もうひとつはプレゼン能力だ。仮に作るほうを建築力と名付ければ、それは色や形だけでなく素材や構法に関わるディテールを駆使する力だ。表現意欲が旺盛でそれを実体化する建築力が備わっていれば良い仕事ができる。ただし建築力の獲得にはは時間がかかる。これは現場体験を通して養われる能力だ。これを構図化すればこうなる。


 表現意欲 > 建築力 > プレゼン能力


 建築力はあってもプレゼン能力が足りなければ表現できない。われわれ講師は主にこのプレゼン能力の開発に携わっている。模型や図面で視覚化する能力は、トレーニングすれば学生のうちでも相当描けるようになる。わたしの場合はそのことに気付いてなかったので不自由さに拍車をかけた。現行の模型づくりを中心とした設計実習には批判もあるが、わたしはなんでもいいからプレゼン能力のトレーニングはしたほうが良いと思っている。

 問題なのは学生時代に建築力の養成をどうするかだ。もっとも正統な方法は現場を体験することだろう。それはほんの小さな犬小屋のようなものでも構わない。なにか実際に作ってみることが建築力養成の糸口となる。糸口さえ見つかれば、その後はひとりでもやっていけるものだ。その小さな現場というものが圧倒的に欠けている。これでは学生の不自由は深まるばかりだ。


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 今年の木造設計演習は棚づくりをした。考えたのは演習主任の西澤英和先生で、指導は技官のかたにお願いした。わたしも手伝ったがこれは結構楽しかった。釘を使わず木を組み合わせるだけで丈夫な棚ができあがる。木の目を読んで加工すると木材がどんな堅さで、削るとどんな香りがするのかよく分かる。できあがったものは押してもびくともしない。その感触は学生たちの建築力の初歩的な能力を開発してくれたと思う。来年はもう少し大きな小屋のようなものを作ってみたい。


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