2012年8月 2日 (木)

ワークワークファンタジア(29)

 神殿で講和が始まっていた。金官伽耶はワークワークの侵入を激しく非難した。もともと金官伽耶の陰謀でありながらことごとく水泡に帰した今となってはそれしか言うことはなかった。

 ワークワークが反論した。自分たちはテグ国の依頼に応じて巫女を連れてきたのであり、武装しているのは護衛のためだとした。これは無理がある。護衛にしては兵力が大きいだろう。誰もそれがほんとだとは思わない。

 続いて百済が発言した。律令官はよく通る声でにこやかに言った。輸送船は盗まれたものであり、この海賊行為は百済と東晋帝国に対する挑戦だと決めつけた。海賊による不法行為としてこの場を納めるのは百済と新羅の緊張を高めずにこの場を納める良策だ。

 ワークワークが反論した。2隻の船は漂着したものを保護したのでありわれわれはそれを返しにきたのだと。これも無理がある。帝国の大型船がそろって漂着するわけもなく、計画的に奪取されたことは明らかだった。

 ワークワークは追い詰められていた。戦闘で功績をあげながらこの扱いはどういうことか。議論の輪の外の暗がりに寝転がっていた巫女がむくりと起きた。

「こやつら大巫の前でなんと退屈なことを言うか。」

 そう言うとニッと笑って指を立た。指先で小さな電光が弾けて半透明の小さな龍が現れた。

「やめなさい。」

 将軍が大きな手でそれを押しとどめた。

「ちっ」

 巫女はまた寝転がってしまった。さすがに疲れているのである。

 新羅が発言した。古代の大巫が復活したことがもっとも重要であり、新羅はこの斎場と大巫を保護する用意がある。つまりテグに駐屯するということだ。

 これは百済がもっとも避けたいことだった。ここは今まで通り非武装地帯にしておきたい。しかし東晋軍がいなくなった後もこのままではすまないだろう。それなら百済兵も駐屯させたいところだが、それだと新羅と連合したと高句麗に見なされてしまう。

 百済の弱みに気づいたトモ族の王子は動議を出した。

「これを見てください。」

 あらかじめ用意していた東晋軍の隠し宝物の一部を輪の中央へ運ばせた。代替貨幣として流通していた絹布の種類が多く、東晋軍の不法行為は明らかだった。東晋軍排除の功績をかさに議論を有利に運ぼうというもくろみだった。

 本来ならばその程度のことで議論の方向が変わるはずもなかった。今問題になっているのは百済と新羅の主導権争いであってワークワークを海賊行為で処罰することはほぼ決定済みだった。この講和の目的は新たな脅威となったワークワークを早めにつぶしておくことだったのだから。ところがこの作戦は意外なところで奏を功することになった。

 乱雑に積み上げられた物品の最後に長い木箱が投げ上げられた。それは宝物の山の上でバランスをくずしひっくりかえり、その拍子に中の織物がくるくると巻きをほどいて皆の前に姿を現した。それを見て皆は息を呑んだ。黄色い旗のまんなかにくっきりと「燕」と赤い文字が織り出されている。それは燕国の軍旗だったのだ。

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