2012年8月28日 (火)

町家目利きツアー

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2012.08.23 京都建築専門学校よしやまち学舎

 9月9日に町家目利きツアー(参照)を開く。わたしが町家の「町」のほうを担当し、「家」のほうを森棟梁と古民家鑑定士の岸野さんが引き受けた。写真上のよしやまち学舎が「家」のほうの会場だ。場所は西陣の南端部に当たるが、前半はこの学舎のまわりをぐるっと歩く。下見をしてきたので紹介しておこう。


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 最初に断っておくが、わたしは町が解体していくこと自体には反対ではない。わたしが興味あるのは、解体していく理由のほうだ。それを知れば町を再構成する方法も見えてくると思う。

 上の写真は隣が駐車場になったので町家の断面がよく見える。この町はいまあちこちで断面を見ることができる。これは1910年ごろに成立した総2階建て形式の町家だ。母屋が直接通りに面しており、裏側に庭と藏がある。この構成は2階建てになる前の構成を引き継いでいる。それは江戸時代以来の伝統的な町家形式のひとつだ。庭があることで通りとのあいだの通風を確保し、藏が並ぶことで防火上の効果を得ている。町家は文字通りタウンハウスとして作られている。集合化することで個別では解決できない問題をクリアしようとしているわけだ。


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 この町家は敷地の奥が深い場合の構成を示している。通りに面した店の間(店舗棟)は奥行き4メートルほどしかない。その奥に坪庭をはさんで2階建ての母屋が立つ。2階建てになったのはやはり日露戦争以降だろうが、坪庭を挟むこの構成は江戸時代以来のものだ。住居と業務スペースの分離は町家の基本的な構成と言えよう。


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 これも立派な店構えを見せてくれる。形式は上と同じだ。格子にアサガオを這わせている。町家の良さは通りとの親密性にある。町にとって通りはただの通路ではなく、こどもの遊び場であったり行商の場であったり坊さんの托鉢の場であったりとさまざまな機能を持っている。通りは家の「外」ではあるが町の「内」なのだ。この場合京都では町を「ちょう」と呼ぶ。


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 中2階に虫籠(むしこ)窓の並ぶ長屋がたくさん残っている。解体されて駐車場化しているところは自己所有型の表町家だったものが多いが、借家型はまだまだたくさん残っている。大家の努力も大きいのだが、借家経営は町家の役割として今も活きているわけだ。

 これらの町家は1910年代のものに見える。京都の都市改造が進み、西陣織りが未曾有の好景気に沸いたころのものだ。ここに住んだのは織りや染めの職人たちが多かったろう。おもしろいのは、この地域には建築関係の職人が今でも多いことだ。ここに建築専門学校があるのも、そのことと関連があるのだろう。京都のなかでも下町風の場所なのだが、京都の産業を支える中心市街地のひとつなのだ。


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 生産施設の多いのもこの地域の特徴だ。20年代以降の借家街はもっと職住分離が進むが、ここはもう少し職住一致の都市構成が残っている。写真(左)は製茶工場、(中)は奥の背の高いのが織り工場だと思う。そこから通りに向かって母屋、店の間と3棟構成となっている。庭に織り工場を建てることは明治以降の現象だと思う。


 60年代以降、市内の繊維業の解体が進む。それにつれて、まず工場の部分が機能不全に陥った。職方が減り借家街も打撃を受けた。敷地自己所有型の表町家は借家の大家であることも多いので、その影響は大きかったろうと思う。地価の高騰と相続税とが町家の維持を困難にした。自己所有型から崩れているのはそのためだ。駐車場になっているのはまだ所有権が残っていることを示す。売却されると(右)のようなミニ開発になる。


 繰り返すが、わたしはこのミニ開発も歴史的風景のひとつだと思っている。善し悪しを言うよりその風景そのものに興味がある。結論jから言えばこのミニ開発の風景は、産業構造の変化と土地の所有方式とが生み出している。こうなるべくしてこうなっているのだから、見た目がどうのという議論をしても始まらないとわたしは思う。


 まちの風景をデザインの問題として解くのではなく、都市経営の問題として考えたいというのがわたしの立場だ。たとえば、ここで見ただけでも借家街としての機能は根強く生きていることがわかる。それは住環境へのニーズと借家権という制度との合作だ。道路が狭く路線価が低いこともそれに手を貸している。だとすれば借家都市として町と町家を再構成するのがもっとも安価で現実的な方法ではないか。借地借家人法の改正か地域の条例によって借家経営を安定化させる政策を考えなおす時期にきているとわたしは思う。

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