« 2011年9月 | トップページ | 2011年12月 »

2011年11月

2011年11月10日 (木)

ワークワークファンタジア(25)

 巫女と将軍は光る3柱を見上げていた。直径数メートルの半透明な筒のなかを巨大な龍のようなものが上下している。音もなくうねりながら。それは手を伸ばしても突き抜けるだけで、実体のないホノグラムのようなものだった。伽耶の地に龍が立ったというのは古い伝説だ。伽耶を古名を弁韓というのは、龍を司る大巫女を「弁」と呼ぶからだ。ここで鉄が採れるのも龍脈があるからで、その地脈の流れてくる元が新羅のある辰韓だった。辰とは龍の別名である。

 「いったいこれはなんですかな」
 「わらわにも分からんが、おそらく古い幻のようなものじゃろ。もうここには龍はおらん。」

 新羅と百済の使者2騎が巫女のもとへ同時に着いた。それぞれ名告りをあげ和解のための協議を申し入れた。翌朝に旧神殿で会合することを決めた。使者が立ち去ったのと入れ違いにテグの王族がやってきた。

 港の精錬所は烈しく燃えていた。戦闘のさなか、龍の柱がたったころ、溶鉱炉の火は油を注いだように燃え上がった。炉は次々と破壊され、精錬所は炎上した。手のつけられないほどの火勢で、テグ人たちはただぼうぜんと立ちすくむのみだった。戦闘の決着は案外早くつき、恐れていた東晋の軍団は壊滅していた。神殿の向こうがわに大きな龍が現れたのがそこからも見えた。忘れていたものがよみがえり、自分たちこそ龍神を司る一族であったことを思い出した。

 巫女たちのもとへやってきたテグ人たちは、一様に黒い服を着ていた。それは大地を示す色だ。彼らは巫女の前に跪きうやうやしく礼拝した。白髪に長い白い髭の仙人のような長老があいさつした。

 「われわれがここへ巫女をもたらすようにキビの長に願ったのじゃ。よもや神話の大巫女がもたらされるとは思わなかったがの。」

 将軍はようやく今回の作戦の全容をすることができた。鉄の産出の減少に悩んだテグ人たちは、龍神を祀り直そうと考え交流のあったキビ人に協力を要請した。それを軍事作戦に書き換えたのがテグの派遣した黒衣の道士だったわけだ。

 「ともかく、いそいで龍穴を祀らねば火勢もおさまりますまい。」

 そういうと長老は巫女たちを丘の上の古城へ案内した。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年9月 | トップページ | 2011年12月 »