週末2本立て映画

2013年6月12日 (水)

THE 有頂天ホテル (2006)

 三谷幸喜はこれが初めてだ。ネタばれのない程度に感想をメモしておく。

 役者の無駄遣いだなぁというのが最初の感想だ。見ていくうちにコメディに合う役者とそうじゃない役者の2種類が混じっている気がしてきた。役所広司や松たか子は合わないほうではないか。このふたりがコントをしているとき、どこで笑えばいいのか戸惑ってしまう。それはわたしがツッコミ好きの関西人だからかも知れないが、結局この映画で1度も笑えなかった。ちなみに関西人のかみさんは1ヶ所大笑いしたそうだ。

 元になった「グランドホテル」は昔見たことがある。廃業する老舗ホテルの最後の1日を描いたオムニバス映画でコメディではない。事故が起きるシーンだけ覚えている。似たシーンはこの映画でも登場するが全然違う話になっている。

 セットが安っぽいのはどうしようもない。わざわざ旧館と断っておきながら三流結婚式場のようなエントランスホールしか出てこない。階段の手すり、シャンデリア、回転ドア、絨毯、壁紙など、せめて押さえてほしかった。これはヲタク的要望だ。

 さすが三谷幸喜だけあってプロットに破綻はない。幸せを呼ぶ人形やアヒルが話の節々に現れて筋をつないでいくところはおもしろい。この人の脚本は理詰めの感じがする。役所広司の副支配人が舞台監督の夢に破れた過去をもっていて、その彼がホテルを舞台としてまわりの人間たちの夢を取り戻す人生の演出家を演じている、というコンセプトもよくできている。ただ、コメディなのに1回も笑えなかったのが残念だ。

 アヒルのダブダブって声優の山寺宏一だと今知った。やっぱり役者の無駄遣いだ。

 

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2013年6月11日 (火)

逮捕しちゃうぞ the MOVIE (1999)

 「交渉人真下正義(2005)」で描かれた東京の地下鉄は線路巾の狭い狭軌と広い広軌が入り交じっている。新型車両はコンピューター制御によって車輪巾を自動的に調整し、その両方を自由に行き来できるという設定だった。映画ではそのようすを示す3D映像も挿入されてヲタクっぽさをアピールしている。このヲタクっぽいことが十河の脚本の一番の特徴だ。

 そこで分からないのは、巾の違う線路をどうやってつないでいるかだ。線路巾がだんだん狭くなったりするのだろうか。そんなわけはないだろう。もっとも肝心な設定であるのもかかわらず何の説明もない。設定がおかしいと言わざるを得ない。


かみさん ヲタクらしい感想だね。映画がヲタクを装いながら成りきれていない証拠かな。


 十河の脚本はアニメ「逮捕しちゃうぞthe MOVIE(1999年)」で可動橋のかちどき橋を開くといういかにもヲタク好みなシーンを描いて喝采をあびたが、実はあのシーンにも違和感をもった。何十年も動かしていない可動橋がスイッチを押しただけで開くとは思えないが、あっさり開いて拍子抜けした。楽しみにしていたシーンだけに正直がっかりした。

 断っておくが現実性の有無を問うているのではない。ウソで良いから、つじつまの合う説明がほしいだけだ。それが魔法によって行われたという説明であっても、映画の世界観の上で有効ならオッケーだ。むしろ、その設定の飛躍こそ映画のおもしろさだと思う。


 

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2013年6月 9日 (日)

交渉人 真下正義 (2005)

 映画を観るという習慣が無くて気になりながら見逃してきた映画は多い。このたびツタヤディスカスのメンバーになったので、そんな昔の映画を観てみようと思う。で、最初に借りたのがこれ。申し上げにくいが期待していたのと少し違った。ネタバレにならない程度で感想をメモしておく。

 かみさんからあらすじを聞いたとき思い描いたのはふたつある。ひとつは司令所のディスプレイ、もうひとつは筋屋だ。この話は地下線内を謎の列車が走りまわるというもので、わたしは昔同じような話をラジオドラマで聴いたことがある。同様のモチーフはアニメ「機動警察パトレイバー the Movie」(1989)でも使われていたし、映画で象徴的に扱われるカラスもパトレイバーに出て来る。カラス好きの私としては不吉なものとしてカラスを扱う時点でアウトだ。

 それは良いとして、司令所に乗り込んだ交渉人が次第に信頼をかちえて外部秘の路線図を見せてもらうシーンがある。わたしは司令所の大型ディスプレイが切り替わるのかと思っていた。壁面いっぱいの大型ディスプレイが7色に明滅しながら切り替わるさまを想像して、それはさぞかし圧巻だろうと楽しみにしていた。しかし実際は小さな図面をテーブルに広げるだけだった。だいたいそんな小さな図面であるはずないだろうし、そもそもプロは図面を丸めないよね。

 筋屋とはダイヤグラムを引く専門職のことで、昔の国鉄マンには路線状況をすべて把握していて瞬時にダイヤグラムを書き換えことができたと聞いたことがある。コンピュータ制御の導入で過去のものとなっているらしい。わたしは司令所の目立たない警備のおじさんが実は定年退職した筋屋だったとかいう登場の仕方かと思っていたが残念ながらそうではなかった。筋屋が現在進行形のダイヤをどうやって引き替えるのか知りたかったが、そのシーンは無かった。犯人も相当の筋屋であるはずだから、そのシーンがないのはおかしいと思う。それと刑事のカンと犯人の緻密な計画性とを対置させているが、筋屋こそ緻密な計画性そのものでもあろう。そこのところにも違和感を覚えた。

 ほかにも説明のつかない設定や意味不明のシーンなどあったが、そんなことは映画につきものなのでそんなに気にしない。とりあえず上のふたつを楽しみにしていたのでそこのところさえ直してもらえればうれしい。


 

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