2025年4月25日 (金)

養父スケッチ教室はじまった

今期最初の養父スケッチ教室。大杉の養蚕(ようざん)農家集落をスケッチした。暑いくらいのよいお天気で気持ちがよかった。2時間ほど集中して描けた。

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2025.04.19、兵庫県養父市

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2025年4月24日 (木)

京都府庁のヴィクトリアンタイル(1904)

これもやはりイギリス製なのだろう。暖炉がふたつあって、それぞれ違うタイルが使われている。これも鋳鉄製の暖炉枠とセットで買い入れたのだと思う。炉床にも同じようなタイルが敷かれていた。暖炉セットに炉床も含まれているのだろうか。

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2022.11.12、京都府庁

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2025年4月23日 (水)

三重県庁舎のヴィクトリアンタイル(1879)

西郷従道邸ではなく三重県庁だった。知事執務室の暖炉にヴィクトリアンタイルがあった。これを見ていると鋳鉄製の暖炉枠に最初から張られていたように見える。暖炉枠そのものがイギリスからの輸入品なのかも知れない。

とすると京都府庁(1904)の暖炉のタイルもイギリス製だったのかもしれない。それは次回に。

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2025.04.10、愛知県犬山市「明治村」

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2025年4月22日 (火)

神戸市博物館の暖炉のタイル

まいまい京都の神戸ツアーで神戸市博物館へ行った。そのミュージアムショップの奥に旧トムセン邸(1900年)の家具と暖炉が展示されていた。先日、明治村の西郷従道(つぐみち)邸で見たタイルとよく似ている。ヴィクトリアンタイルだと思う。19世紀イギリスの絵本の挿絵のような独特の雰囲気がある。

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2025.04.20、神戸市

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2025年4月21日 (月)

手作り自邸案内(7)手づくりの庭

専用庭があるのがありがたい。今ある庭木はキンモクセイ、アジサイ、ユキヤナギ、ノウゼンカツラ、ゲッケイジュ、ナンテンだ。今、草花はカキツバタ、ムスカリ、シャガが咲いている。少し前はキスイセン、アミガサユリ、クリスマスローズなどが咲いていた。庭は主にかみさんが管理している。わたしは毎朝水まきをしている。

ピータン壺にはハスを植えている。最近、暑い夏が続くので元気よく咲く。メダカはわたしの担当。ピータン壺にボウフラが湧くので飼い始めた。よく増えるのであまり補充はしていない。

レンガはかみさんが少しづつ張り詰めていったのがこうなった。レンガの赤と緑が落ち着いた感じを作っている。縁台は床材のあまりで私がつくった。昨年、縁台が黒くなってきたので研磨して白色の柿渋をかみさんと塗った。縁先が明るくなって気持ちがよい。スダレはここ数年、年中掛けている。庭を眺めたとき、向いの駐車場や住宅地がスダレで隠され、庭だけがよく見えるのでよろしい。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月19日 (土)

手作り自邸案内(6)素材について

アトリエは1部屋を2分割したので、間仕切り壁にもうひとつの入り口を設けた。切り取った壁の断面は特にフタをするでもなく、珪藻土をそれなりに塗りこめている。扉がないのでカーテンを吊った。カーテンレールは拾ってきた木の枝を渡している。

床材はヒノキの無垢材だ。これは材木商でもある建築家の植森さんからタダでいただいたもの。既存床の上にビス留めした合板下地の上にフロア釘で打ち付けた。既存フローリングは冷たかったが、さすがヒノキ材ははだしでも温かい。これは実感できる。

既存床上にヒノキ材を張ったので、扉が開閉できるように扉の下側をカットした。既存扉は握り玉を陶器製のアンティークに取り換えるなどしている。

玄関は既存のビニルフロアをはがして、ネットで買った緑色の布目タイルを接着剤入りの目地材を塗った上から貼った。目地は洗い目地にするとタイルの光沢がくもるので、割りばしで押し込んでいる。セルフビルドでもそれなりに仕上がったので喜ばしい。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月17日 (木)

手作り自邸案内(5)水まわり

洗面所は洗濯機と収納棚が並んでいる。その上に突っ張り棒を渡してハンガー掛けにしている。洗面台は真ちゅう製で珍しいと思う。わたしが図面を引いて大阪日本橋の厨房機器屋さんに作ってもらった。シンクは理科実験室用の陶器製のもの。

カランは以前はフランス製のおしゃれカランだった。水漏れしたときに取り換え用のコマが手に入らなかったので廃棄し、ホームセンターで買ってきた汎用型カランに取り換えた。これはこれで気に入っている。

台所は入居時のシステムキッチンをかみさんが改造した。キッチン下の扉をはずしてオープンキッチンとした。ベージュ色だったものを水性塗料で塗装している。ガスコンロは業務用の火力の強いものを入れている。

配膳台もかみさんの自作だ。カラーボックス2台を適当な高さに切って、そのうえに合板を置いて塗装している。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月16日 (水)

手作り自邸案内(4)くらしの風景

自邸を撮ってもらって驚いたのは、室内のカゴや植物がとてもきれいだったことだ。これらはすべて、かみさんが飾っている。それがセルフビルドの粗い仕上げとよく合ってる。

建築家の田所さんが、建築は外側だけしか作れなくて、生活という中身が入って初めて建築は完成する、とおっしゃっていた。この家の場合、その中身がカゴや観葉植物やドライフラワーなどなのであろう。中身は住まう人にしか作れない。

カゴはナイジェリアに赴任していたかみさんのご両親の土産物だ。土産になにがよいかと聞かれたかみさんがカゴがいいと言ったらしい。ドライフラワーは庭に勝手に生えている雑草系が多い。飾り棚はかみさんのお祖父さんの釘入れのフタをはずして壁に掛けている。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月15日 (火)

手作り自邸案内(3)ふたつのアトリエ

8畳の洋間をふたつに区切ってふたつのアトリエを作った。窓側はジュエリー作家のかみさんの工房で、残りはわたしの巣だ。わたしの部屋側を足場用パイプでキューブ型本棚を作ってそこへ2室を隔てる板壁を打ち付けている。出入り口は新たに一ヶ所切り開いた。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月14日 (月)

手作り自邸案内(2)ひなまつり

孫が女の子だったので、かみさんがおひなさまを飾った。七段飾りは部屋が狭くて無理なのでトップの御殿だけのお出ましとなった。御殿飾りは昭和初期から戦後にかけて流行ったようだ。このおひなさまは、かみさんの母が生まれたときに、かみさんの祖父が買ってきたものだそうだ。かみさんの母、かみさん、うちの娘、孫と4代にわたって飾られてきたことになる。人形の命は人間より長い。

塗りのお重も昭和初期のもので、これも4代にわたり使われてきた。かみさんによれば器物は99年たてば付喪神(つくもがみ)になるという。わたしたちの暮らしは、そうした神や何世代にもわたる人の記憶で守られている気がする。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月13日 (日)

CHスケッチ教室ー醍醐寺編

今月のカルチャーハウスのスケッチ教室は醍醐寺で開いた。まだ遅咲きの桜が咲き残っていた。お天気もよく花見客も少なかったので気兼ねなく桜を描くことができた。1時間ほど、みんな夢中で描いていた。わたしも楽しい時間を過ごすことができた。

わたしの2枚目はシャーペンと携帯用の超小型の色鉛筆で描いた。小さな色鉛筆だが、けっこう描ける。

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2025.04.12、京都市伏見区

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手作り自邸案内(1)居間

写真家の谷口菜穂子さんに拙宅の写真を撮っていただいたので紹介したい。マンションの一室だが、床や壁はかみさんとふたりで数年かけて仕上げた。庭に面して居間と和室に分かれていたが、2室を隔てるフスマや壁を取り除き居間を大きくしている。

壁は日本ケイソウド建材の珪藻土を数年かけて塗った。この会社が珪藻土の壁材を開発した。化学接着剤を混入しないタイプで後発珪藻土とは異なる。化学接着材だと珪藻土の細かい穴がふさがれて吸湿効果が発揮できないそうだ。実際使ってみると結露によるカビの発生はなくなった。壁が息をしているのを実感する。

カントリー家具は浜松の家具工房のアンファンのもの。1990年に購入したので、すでに35年になる。松材でできている。真っ白だった家具も5年ほどで落ち着いた飴色に変わった。

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2025.03.22、谷口菜穂子さん撮影

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2025年4月12日 (土)

旧桜宮公会堂とはなにか(5)

桜宮公会堂は戦前の網入りガラスが美しい。昭和初期の網入りガラスは機械で作っているはずなんだが、網目の大きさやガラスの色合い、表面のでこぼこ具合などが一枚一枚微妙に異なっている。それが良い味を出していて、高度成長期以後の均一化された製品にはない美しさがある。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年4月11日 (金)

旧桜宮公会堂とはなにか(4)

明治天皇記念館の1階は音楽会などのできるホールとして設計されたそうだ。そうだろうと思った。玄関まわりは造幣局玄関の列柱を使った。明治天皇は3度造幣局を行幸した。この列柱は明治天皇の御聖跡なのだ。だから記念館の玄関としてふさわしい。2階はトップライトのある明るい展示室だった。そこへ上がる階段がなかなかよい。階段内側のモザイクタイルは今のものだと思うが、それもいい味を出している。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年4月10日 (木)

旧桜宮公会堂とはなにか(3)

「近代大阪の建築」(大阪市建築士会編、1984)には、設計は大阪市建築課、施工は池田榮三郎、1935年竣工、構造は鉄骨鉄筋コンクリート造とある。これが旧桜宮公会堂(旧明治天皇記念館)としてのデータである。

内部は大きさも内装も造幣寮金銀貨幣鋳造所を復元したものではない。明治天皇記念館としての内装がそのまま残っているようだ。もしそうであるならば、1階ホールのステージもそのままなのだろう。もとから1階は集会施設として設計されたようだ。

正面列柱部分は造幣寮からの移築だが、ほかの3面は記念館オリジナルだ。背面は列柱部分と同じアーチ窓が並ぶ。この窓は造幣寮のものだろう。保存されたのは手ちゅう玄関だけではないようだ。
 
おもしろいのは川側の側面。左右のアーチ窓は造幣寮のものだろうが、その上の丸窓はオリジナルだ。それが目のように見えておもしろい。2階中央にバルコニーを設けたので立面が軽やかに見える。この面も記念館としてのふたつめの正面と考えてよいと思う。

バルコニー下の窓は、レストランに改造する際に新しくしている。元から窓があったようにも見える。改造をしたが内外とも旧記念館の歴史的価値を遺しており、よくできたリノベーションだと思う。リノベは竹中工務店の設計施工で2013年竣工(竹中のHPによる)。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年4月 9日 (水)

旧桜宮公会堂とはなにか(2)

結論から言えば、これは昭和10年に竣工した「明治天皇記念館」である。そのとき保存されていた造幣局の部材を使った。その部材が旧造幣寮金銀貨幣鋳造場の玄関だった。戦後、明治天皇記念館は廃止され桜宮公会堂となった。
 
その後2階の展示室に大阪市図書館が移り、さらに桜宮図書館と名称が変更され、1984年から小中学校生の作品を展示する大阪市ユースアートギャリーとなった。2012年から民間へ貸し出して現在のレストランとなった。この間のいきさつはウイッキが正確で詳しい。

ウイッキ「 旧造幣寮鋳造所正面玄関」

戦前の皇国史観を批判する立場から「明治天皇記念館」とは言えない時代が長かったのだろう。1956年に重文指定を受けたとき「旧造幣寮鋳造所正面玄関」としたことから、これが正式名称となった。ただし指定を受けたのは玄関部分だけで、建物本体は無指定となった。このことが混乱に拍車をかけている。ちなみに文化財指定答申時の名称は造幣寮金銀鋳造工場玄関、もしくは造幣寮金銀貨幣鋳造場玄関だった。

では昭和10年竣工とされる明治天皇記念館の本体のデータはどうなっているか。それは次回に。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年4月 6日 (日)

旧桜宮公会堂とはなにか

列柱の石材は竜山石らしい。旧住友銀行大阪本店の外壁もこれだそうだ。石の表面がやわらかく感じる。そのやわらかさが温かくやさしい表情を作り出している。神殿風の列柱も迫力があってとてもよい。

竜山石は兵庫県高砂市で採れるそうだ。高砂市は姫路市と加古川市のあいだにある。高砂市の石の宝殿は行ったことがある。あの石の山がそうで、採掘跡も残っているそうだが気がつかなかった。あの不思議な石の宝殿にまた行ってみたい。

さて、この建物にはいくつか名前がある。

・現在営業しているレストランは「旧桜宮(さくらのみや)公会堂」を名乗る。
・大阪府近代化遺産リスト(2007)では「大阪市ユースアートギャラリー(明治天皇記念館)」
・近代建築ガイドブック[関西版](1984)では「桜宮公会堂玄関(造幣寮金銀貨幣鋳造所玄関)」
・大阪の建築ガイドブック(1982第2版)では「桜宮公会堂玄関(旧造幣寮金銀貨幣鋳造場玄関)」
・ほかに桜宮図書館など。

いったいこの建物は本当は何なのか? 長くなったのでそれは次回に。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年4月 5日 (土)

いちばん古いビルはどれでしょう

HEPナビオ前の交差点を見上げたところ。このなかで一番古いのはどれでしょうか。

下はHEPナビオ(1980、竹中工務店設計施工)と阪急デパートの入る大阪梅田ツインタワー・ノース(2010、日建設計が設計、大林組施工)と阪急グランドビル(1977、竹中工務店設計施工) 。上は右がOSビル(1971)、で左が大阪富国生命ビル(2010、ドミニク・ペロー外観デザイン、清水建設設計施工)。

まあ、OSビルが一番古いわけだ。検索しても設計施工が出てこない。竣工年はオーエス株式会社のHPで見た。阪急東宝グループだから竹中さんではないのかな。

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2025.03.19、大阪市北区

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2025年4月 4日 (金)

4/20(日) まいまい神戸の告知

残席がまだあるので告知をしておく。今月20日の日曜日に神戸ツアーを挙行する。三宮駅に集合してから旧居留地を歩く。中へ入るのは神戸市立博物館(旧横浜正金銀行神戸支店)。内部がほぼ残っている。15番館は神戸震災で倒壊し現在のものは再建だが、その横の煉瓦塀こそ居留地時代のものだ。空襲や震災を生き抜いたレンガである。

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4月20日(日)10:00-12:00

1.JR「三ノ宮」駅 → 2.神戸阪急デパート→ 3.高砂ビル → 4.建泰ビル → 5.神戸市立博物館 → 6.旧居留地15番館 → 7.チャータードビル → 8.神港ビル → 9.商船三井ビル → 10.海岸ビル (解散)

https://www.maimai-kyoto.jp/event/ky25b2010/

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2025年4月 3日 (木)

まいまい京都6月ツアーの発表

ガイドツアー「まいまい京都」の6月コースが発表になった。現在抽選受付中。わたしの担当は次の4コースだ。

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6/14(土)09:45-13:15 東華菜館

ここも毎回発見がある。ヴォーリズ設計の北京料理店。オープン前に内部見学ができる。屋上から塔をまじかに見上げるのが楽しい。見学のあとランチをいただく。とてもおいしい。

https://www.maimai-kyoto.jp/event/ky25b4140/

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6/15(日)11:00-15:00 網干【新】

兵庫県姫路市の旧網干銀行をリペアしたレストラン湊倶楽部でランチをいただく。銀行頭取だった山本真蔵氏邸も見学。和洋とりまぜた遊ぶ心満載の大正時代の名作。

https://www.maimai-kyoto.jp/event/ky25b4300/

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6/19(木)10:00-13:30 小林一三記念館【新】

大阪府池田市にある阪急電車創業者の小林一三の自宅を祈念館にしたもの。大林組設計部の小林利助の設計になる華麗なチューダー式のダイニングでランチをいただく新コース

https://www.maimai-kyoto.jp/event/ky25b4340/

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6/22(日)14:00-16:00 天理図書館

いくたびに発見のある天理図書館。坂静雄設計のアールデコのインテリアや家具がよく保存されていて見どころ満載。移築されたアメリカ屋設計施工の洋館である天理教2代真柱中山正善氏邸も見学する(図書館内部は撮影できません)。

https://www.maimai-kyoto.jp/event/ky25b4580/

 

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2025年4月 2日 (水)

摂南大学住環境デザイン学科卒業研究発表 感想メモ ( 2025.04.02 )

日本でコロナ禍のはじまった2020年に高校3年生だった学年である。コロナ対策が当たり前になった時期に学生生活を送った。部活もイベントもない青春時代を送らざるを得なかった学年である。それゆえであろうか、ことさら仲の良い学年にみえる。明らかな未完成がなかったのは珍しい。それはお互いが助け合ったためだろう。卆計展もいつになく楽しそうだったのが印象的だ。困難な時代に育まれた友情は一生ものである。ぜひこれからもお互いを励ましあって進んでほしい。卒業おめでとう。


(全体として)

正直に言えば、作品になにかが足りないと感じることがある。調査不足や説明不足、設計の未熟さ、そんなスキルの問題ではない気がする。もっとその人にとって大切なこと、切実な思いのようなものを感じたい。建築に正解はない。表現は作者の存在証明だから失敗も成功もない。だから作品にはよくも悪くも作者自身が反映する。われわれは作品を透かして作者を見ている。恥ずかしいかもしれないが表現とはそんなものだ。どうせ見えてしまうのだから、ありのままの自分をさらけ出したほうがおもしろくなるのではないか。そんな気がする。


(個別に)

< 建築・環境デザイン研究室>

1 密集市街地における延焼防止建築物・道路整備による地域防災向上の提案

密集木造市街地を部分的に切り開き細街路を広げ、さらに延焼防止建物を設ける計画。地域の防火性能の向上を、大規模なクリアランスではなく小規模建て替えで達成しようとする手法がおもしろい。新築された建物は周囲に回廊を巡らせている。回廊は避難路の確保と同時に町の縁側として地域コミュニティのためのオープンスペースとしても機能する。上尾の小規模建て替え再開発の手法に似ている。今後のまちづくりの主流となりうる手法を提示してみせた手腕を評価したい。

2 インクルーシブな遊び場が生む新しい学びや学びのきっかけづくり 
  ~大阪府下の公園に焦点を当てて

インクルーシブは包摂的という言葉だ。近年は多様性を尊重する社会づくりを指すことが多い。インクルーシブ公園とは障がいや年齢にかかわりなく利用できる公園のことで、すでに国内に事例がある。この計画では隣接敷地にインクルーシブに役立つ複合施設を設けたのが特徴。施設には託児、ショップ、カフェ、教室、医療などの機能があり公園と一体的に利用することでインクルーシブ効果をあげようとする工夫がおもしろい。都市型公園の新しいイメージを提案した。

3 折り紙を用いた災害情報伝達の提案【円満字賞】

外国人観光客のための災害時の避難地図を折り紙にしてコンビニに置く計画。折り紙であればこどもたちが持ち帰るだろうという発想がおもしろい。大規模災害時には携帯はつながらないことが多く、外国人観光客はたちまち情報が遮断される。そのときこどもが持っていた折り紙に避難場所などの基礎情報が書かれておれば、それで助かる命は確実にあるだろう。コンビニという既存ネットワークを使って折り紙を防災メディアに仕立てた構想力を評価したい。

4 変化が生み出すもの【円満字賞】

大阪市内の京橋駅前の乱雑で細長い空地に大型インスタレーションを設置してコミュニティ広場に変換する計画。上空にかかる屋根はアーケードのようなものではなくばらばらに分割された不定形で軽やかなものだ。光や風や音を反射させて多様な表情を作り出す。地面はやわらかく盛り上がり段差がベンチとなる。そうしたシンプルな装置を使って南北に性格の異なるふたつの広場を作った。現場をよく確かめたうえで活き活きとした力強い計画をまとめた確かな設計力を評価したい。

5 風景と建築[菅野賞][森下賞]

和歌山県有田の田園風景のなかに5つの貸しヴィラを計画した。有田の風景が大好きなことが伝わる作品だ。みかん畑、海沿い、橋型、塔型、伝統的な集落内など立地を活かした計画は秀逸だ。それぞれのヴィラは風景を楽しむものであると同時に田園風景の添景としても機能している。ヴィラがあることで風景の魅力がいや増しになる効果がある。夢窓国師が嵐山十境を設定して、嵐山の地域全体を庭園に読み替えたようなスケールの大きさがこの作品にはある。

6 都市で生まれる小集団を主体とする“まちづくり戦略”[こした賞][谷口賞]
  ~水道筋商店街における戦術実践~

自発的なまちづくりは数人の有志から始まることが多いという。その数人がコアとなりアイデアが生まれイベントが発生する。そして次第に多くの人を巻き込んで地域再生の動きになっていく。この計画は実在の地域を想定して、生まれたばかりの生き物のようなまちづくりチームを育てるための小規模拠点を提示してみせた。コラボカフェや図書室など自由に使えるスペースだ、それが小規模であるがゆえに巣のような安心感と安定感がある。造形もおもしろいが、なにより都市経営の戦略的実践モデルを具体的に提示したことを評価したい。


7 スケートボードを通じた新たな文化空間の創出

大阪ミナミの繁華街にスケボをテーマとした複合施設を計画した。近年、スケボは歩行者の敵として囲い込まれつつある。しかしスケボはオリンピック競技種目となるなど、新たなスポーツコミュニティを確実に獲得しつつある。この計画では、立体なスケボコースを核にカフェ、ライブハウス、ギャラリー、読書スペース、空中庭園などを自由に複合させた。新しいタイプのスポーツ交流拠点を具体的に計画できる構想力がある。


<インテリア・建築デザイン史研究室>

8 線路をたどり、新たな一冊を。

京都市内の叡山鉄道の各駅舎を図書室にした計画。各駅ごとに農業や工芸などの地域特性を反映させたテーマの本を集めるのがおもしろい。そのテーマに応じて駅舎に新たな機能を付加しているのもよくできている。線路から見える駅舎を木製の門のようにしたのもドラマチックだ。終点をエピローグとして路線全体を一冊の本とみなしてデザインしたのも楽しい。

9 思う火葬場

京都市内宝ヶ池公園に葬祭場をつくる計画。仏教用語である地水風火空の五大をテーマに5つの施設がつながる。地が会食場なのは大地が人体を表すからとする。これは五行説に従ったものだ。風が樹木葬施設なのも風が五行の木気であることからヒントを得たのであろう。水を参道したのは木気である風を強めるためか。火は礼拝堂、空は金気である天を望む展望台へ続く。五大というテーマをよく理解して静逸な葬祭場と設計した。

10 海と月の現象美術館‐宇田津の背宇臨水‐[カワチ賞]

香川県宇田津に海中美術館を計画した。潮汐、海流、浮力など海そのものを感じるミュージアムである。水中通路をめぐりながら生きた海と関わるさまざまなシーンを展開さた。水中をテーマとした卆計は今までもあったが、海そのものをテーマにしたものは珍しい。海中は想像以上に多様で動きのある世界であることを初めて教えられた。波型をモチーフとした造形も美しい。

11 垣間見の山館~言語の壁を覗く、非言語の空間建築~

京都市銀閣寺あたりが敷地として意識段階を具象化した場をつくった。強制、半強制、自由の3つ意識段階は、思考の可視化、個人意識、集合意識に対応するとした。それを顔合わせの場、学びの場、他者の環境を理解する実践の場の3つに読み替えて建築化した。施設は巨大な地下ドームから始まる。そして山の斜面に設けた高床式の建築で眺望を得る。そして最後は膜シェルを張りめぐらした斜面公園に至り、林のなかで交流する。銀閣寺庭園の公案を思わせる作品だ。

12 棚田暦で百姓仕事と暮らす【円満字賞】

明日香村の耕作放棄された棚田をつかった農業体験施設を計画した。棚田暦とは農事暦のことだろう。農事暦とは旧暦のうえに農作業や年中行事を記したものだ。これにしたがって地域の農事や年中行事を再現し体験する。時間をテーマにした卆計は珍しい。カカシまつり、月見などの年中行事が楽しそうだ。棚田がよみがえれば、虫が戻りカエルが戻り鳥も帰ってくる。棚田や里山を復元させることは地域環境を再整備することでもある。10年20年と長期にわたって環境を整えていく雄大な計画である。

13 西条の日本酒と酒蔵建築を現代に繋ぐ

広島県の酒どころ西条市に酒造体験施設を計画した。西条は酒蔵のある町並みとして知られている。敷地は旧街道沿いの造り酒屋で、そこへ酒蔵を模した展示と宿泊の複合施設を配置した。修景しつつ古い町並みに新しい機能を付け加えた手堅い設計である。新機能のひとつにイベントスペースがある。酒造り関連のイベントを定期的に開きながら、西条の良さを伝えようとする意欲の伝わる作品である。


14 3.5プレイスとなる立体・体験型北摂観光マップ【円満字賞】
  ‐千里セルシー再開発計画‐

フジタ工業(現フジタ)設計施工で1972年に竣工した商業施設・千里セルシーを周辺住民のための観光拠点としてよみがえらせる計画。セルシーは人工地盤が重層する特殊な構造をした娯楽センターだった。その構造を活かして立体的な観光マップを組み上げた。万博公園の緑、勝尾寺の池やモミジ、箕面の滝などの地域の名所風景が各層で再現され、それが吹き抜けを通して入り混じる。新人歌手の登竜門として知られるセルシー広場を復活させ、セルシー自身をも名所に加えたのもおもしろい。既存建物の構造をよく理解し、多用な要求まとめあげた設計力を評価したい。

15 京の花街文化を守るための建築 ‐支える人を支える-[和田賞]

京都の花街・宮川町に花街を支える人たちの支援施設を計画した。お茶屋遊びの体験もできるが、主目的はあくまで花街のコミュニティを支えることにある。銭湯、市場、工芸工房など多様な施設が揃い、ここに集うことで閉鎖的になりがちな花街コミュニティを開いていこうする計画だ。中央に吹き抜けを設けた町家風の造形もおもしろい。


<地球共生デザイン研究室>

16 失われつつある日本の木工に秘められた叡智【円満字賞】
  ~たらい舟から日本の木文化を再発見する~

たらい船の復元を通して木工技術の復元を試みた作品。出来上がったたらい船ががなかなかよい。タガにする竹を伐採するところから始めたそうだ。そのプロセスを記録しながら施工精度や工程を研究した。反りかんなが手に入らず苦労したという。道具の復元が一番難しいのかもしれない。かつての文化財修理の現場では、修理対象の時代の技法を復元するために工具づくりから始めていた。それでこそ技術の伝承が行われるからだ。その基本に立ちかえった作品である。

17 フィリピンの聴覚障がい者への「社会的障壁」解消に向けた生業支援カートデザイン開発研究【円満字賞】

フィリピンのミンダナオ島で地元の青年団体と協力してキッチンカーづくりのワークショップを開いた。そこで販売する鶏卵そうめんスイーツも彼らと共に開発した。言葉の通じない異国で聴覚障がい者と向き合うことはたいそう大変だったろう。それでも記録には参加者の笑顔がならぶ。ファシリテータが外国人であることで、言葉以外のコミュニケーション能力が発揮されるのかもしれない。その能力こそ社会的障壁の突破力になるだろう。そこがこのワークショップの肝なのだと思った。

18 「主体性を育む」高等学校デザイン ~新教育理念から導く論・施設提案~

大阪府阪南市の敷地に生徒の自主性を育むための高校を計画した。自主性は柔軟性、心の安定、ささいな気づき、お互いを理解するための余白などから構成されていると分析した。それらの要素を計画に適用した。可変的な間仕切りは柔軟さを、林野に散在する教室は自然のなかを移動することで心の安定を得る仕組みなのだろう。プロムナードと展望台は友と語らう場として構想されたようだ。大倉三郎が校舎を設計するときに必ず歩廊とバルコニーを設けたことを思い出した。そのことは学校建築のみならず公共建築の基本なのかもしれない。

19 小生物の高温障害予防に向けた外壁コンポーネントデザインの基礎的研究【円満字賞】

高気温の環境が小動物に与える影響を調査した。ここで扱う小動物とは昆虫やクモなどである。調査に基づいて小動物の退避シェルターを考案した。それはワラ縄を無数に垂らしたパネルだ。これを住宅地の壁面に取り付ければ小動物を救うことができることを実証的に示した。実証実験の結果、ワラ縄はカビが生えやすいことが分かり、雨がかりのない場所での使用を推奨している。かつてのワラ葺き民家には多数の小動物が棲んでいたのかも知れない。小動物が棲めない環境は人間にとっても害があるだろう。昆虫やクモもふくめた生態系全体をまもる仕組みが必要であることを具体的に示した作品である。

20 土の行方[アソ賞]

大阪府茨木市の廃河川を敷地として小規模なコンポスター施設とそこでできた土を固定する「たまりの壁」を設計した。発酵と乾燥のプロセスは住民みずからが担う。生活に取り入れることで環境教育の一環ともなるという。この施設はごみ処理施設というよりは肥沃な土壌をつくるための施設だ。地域住民の営々とした土づくりが、いずれは化成肥料ですさんだ周辺農地を再生させる。それは地域環境の再生でもある。さらに施設が旧河川敷上に増えていくことで、旧河川敷も肥沃な農地となる。果樹園や養蜂など新たな小規模農業の起業も作品では想定していた。ごみ処理と地域環境の改善とを小規模な農業施設として構想したことを評価したい。

21 聴覚障がい者との「ノンバーバルコミュニケーション」を促進するためのゲーム/作業ツールのデザイン提案[中村賞]
  ~GeosymbioticWorkshop2024での協同とからめて~

フィリピンのカトリック系の聴覚障がい者青年団体とともに筆談ボードとチョーク作りのワークショップを行った。筆談だと筆談ボードばかり見てしまうのが難点だということが分かった。そこで筆談の不要なカードゲームを使ったコミュニケーショントレーニングを行った。障がい者、健常者ともども楽しくゲームができたという。言葉や文字にたよらないコミュニケーションはたしかに存在するわけだ。70年代ニューヨークのコミュニティガーデン運動も、移民のこどもたちをコミュニティーに取り込もうとする努力だった。それは住民にとって都市の荒廃を食い止めようとする切実な活動だった。言語にたよらないコミュニケーション能力は今後ますます重視されるだろう。そのことを教えてくれた作品である。


<建築意匠・設計研究室>

22 児童館付き多世帯集合住宅[高木賞]

児童館と高齢者向け集合住宅との複合施設。こども食堂や共有リビング、習いごと教室など多世代が交流するスペースを設けている。1,2階は児童館部分と住居部分とが混在している。1階の路地奥に吹き抜け広場があり、2階のデッキ広場へと視線を誘導する。そこには魅力的な路地空間が実現している。広場には外キッチンや本の塔など多世代が利用できるコーナーがある。児童施設や高齢者施設を閉じたものではなく、地域コミュニティとともに支え合う開かれたセミパブリック空間として計画した構想力を評価したい。

23 農に住まう、まちのコモンズ

ユズ産地である大阪府箕面市に12世帯で共同営農する果樹園を設計した。住宅と果樹園のあいだに地域に開かれたセミパブリック棟があるのが特徴。そこにはユズの直売所のほか、コミュニティキッチン、ワークショップスペースなどがあり、地域と農園とがお互いを支え合う関係を想定しているのがおもしろい。そこでは工房があってジュースやジャムなどの商品開発を行うのだろう。伊賀のモクモクファームを思い出した。地域に開かれてこその共同果樹園なのだ。

24 道の駅五十六次京街道と淀川をつなぐ

大阪府の枚方宿のイベントスペース。枚方宿は淀川舟運で栄えた港町だ。しかし現在は交通量の多い土手道路で町と川とが切り離されている。それをつないで河川敷と宿場町を連携させたイベントが可能なプランを提示した。有名な枚方の花火大会は施設の展望台で楽しむことができる。カフェや展示室があり観光拠点としても機能するよう工夫しているのも楽しい。

25 時を映す水と光【円満字賞】

大坂万博公園の国立民族学博物館の増築案。民博は黒川紀章の設計で1973年に竣工。増築可能な特殊なプラン・構造をしており、いままでに4ブロックの増築を果たしている。計画ではさらに1ブロックを南側に付加する。中庭に水面を引き入れて、そこに反射する光と影を楽しむことができるのが特徴。入射光の角度を綿密に調整して静かで深い思索を誘う修道院のような優れた計画を実現させた。

26 人々をつなぐ憩いの庁舎‐大阪狭山市庁舎増築計画‐【円満字賞】

大阪府狭山市役所の増築を計画した。隣接する小公園を中庭として取り込み、その上に歩廊デッキを巡らせた明るい設計が好ましい。中庭は駅からの近道につながっており庁舎の第2のエントランスとして機能している。増築部と既存部の正面玄関とを回廊でつないだところもセンスがよい。増築部の低層は街中サロンやこどもたちの学習室などに開放した。災害時には防災拠点となるという。こうした使い方は庁舎機能を確実に向上させる提案だ。敷地と既存庁舎を現場でよく調べて、まちがいのない提案のできる構想力を評価したい。

27 集落の循環‐鳥取県上淀地区における地域課題解決のための提案‐【円満字賞】

鳥取県の40世帯ほどの農村のためのコミュニティ支援施設。デイサービス、高齢者の運営するカフェ、こどもたちの学習スペース、地域菜園など地域住民の利用するセミパブリック空間を配置した。既存集落のなかへ無理なく配置できる高い設計力がある。コミュニティのアイデンティティである綱引祭りの会場となることも織り込んでいる。暮らしやすい地域を作りだし人口流出を食い止めたいという切実な想いの伝わる作品である。

28 10人のシングルマザーのための大きな家

母子家庭のためのシェアハウスを計画した。保育園に通うこどもは病気になると家庭へ戻される。ひとり親だと仕事を休まねばならない。そのとき困らないように病児保育サービスを組み込んでいる。母子家庭の実態をよく調べている。大小の箱を入れ子にしたプランニングもおもしろい。その構成のおかげで、部屋と部屋のあいだに豊富なセミパブリック空間が生まれた。プライバシーを保ちながら共同生活を送るための工夫である。細かいところまで配慮の行き届いた設計である。

29 育つ建築‐交差と共生‐[ナベタニ賞]

大阪市内の下町に6戸の店舗付き独立住宅を計画した。1階は店舗で、住宅はラセン階段で2階に上がる。各住戸はスキップフロアとなっているため立体的なワンルームともいえる。複雑に入り組む配置を整えて住戸間で視線が交錯しないよう工夫している。上階ほど部屋の大きい造形がおもしろい。頂部に各戸をつなぐテンション材が張りめぐらされている。立体路地型集合住宅の提案ともいえよう。路地のような親密感にあふれた作品である。

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祇園のモダンタイル

角を丸くしてスパニッシュ風の青いS字瓦を載せている。カーブのところに瓦を葺くのは難しいだろうに、それをきれいに納めている。タイルの色使いを渋くまとめたのもとてもいい。角のショーウインドウの木製建具の枠幅を少し太くして額縁のように見えているのもおもしろい。

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2025.03.27、京都市東山区

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2025年4月 1日 (火)

高台寺南門通りの御殿

前から気になっている。八坂の塔の北西にある。隣接する結婚式場レストラン「アカガネリゾート京都東山1925」の一部なのかもしれない。アカガネリゾートのほうは1925年に竣工した邸宅だそうだ。伸銅関係の企業家の邸宅だったので銅がふんだんに使われているという。この建物も銅を惜しげもなく使っている。

3階の望楼がおもしろい。屋根に鴟尾(しび)が載るのは武田五一設計の五龍閣(1921)と同じだ。鴟尾があることで和でも洋でもない、ある種不思議な雰囲気をかもしている。また、左半分が無くなったように見える。現在の形になるまでの変遷があるのだろうか。その謎めいたところも魅力である。

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2025.03.27、京都市東山区

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2025年3月31日 (月)

太田金物店

1950年創業とHPにある。アルミの打ちだし調理器具の工房として出発し、いまは調理器具全般を扱っているそうだ。祇園の料理屋を支える名店である。6枚引きの横桟ガラス戸がかっこいい。ガラス戸は左端の戸袋に全部収納するようできている。右方のショーケース下は黒タイルを模したホーロー板が張られているのも珍しい。創業当時の面影をほぼ残しているように見える。登録文化財にすればよいと思う。
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2025.03.27、京都市東山区

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2025年3月30日 (日)

弥栄会館が顔を出していた

弥栄会館が顔を出していた。なかなか愛らしい。これは外壁保存をしたらしい。実は中もよかった。戦後に改修されており、改修設計はたしか吉田五十八だったような気がするが記憶違いかもしれない。間違っていたらごめんなさい。まあ、それももう無いわけだし。高度成長期の名作が評価されないまま消えていくのはなんとも惜しい。

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2025.03.30、京都市

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2025年3月29日 (土)

文学部東館(1936)

中庭から眺めたところ。「京都大学建築80年の歩み」によれば、東館のこの部分は大倉三郎の設計で1936年に竣工した。タテ線の入ったタイルで仕上げている。武田はタイルの飾り貼りを楽しくデザインしたが、弟子である大倉も武田の意を汲んでタイル表現を探求している。3階窓の上下に小型のテラコッタ(立体タイル)でラインを入れたのがかっこいい。3階の窓間の小壁に3本の横ラインを入れたのもおもしろい。

ピロティと回廊の床は真ちゅう目地入りの現場打ちテラゾー仕上げだった。幾何学的でシンプルなデザインはアールデコ風だ。プロティの円柱上部のモザイクタイルは有名だが、そのほか回廊側のアイアンワーク(飾り格子)、教室天井の模様張りなど見どころの多い建物である。また改めて写真を撮りにいきたい。一時は解体の話もあったようだが、整備して楽しく使えばよいと思う。

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2025.03.23、京都市左京区

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2025年3月28日 (金)

高野の5段屋根のアパート

高野で見つけた。たまにこうした屋根が段々になったものを見かける。とてもおもしろい。この事例では斜め45度が入っているのが珍しい。よく見ると雨樋の付け方もアクロバチックだ。一番たいへんなのは瓦屋さんだろうと思うが、それでもけっこう楽しい現場だったのではなかろうかと思う。
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2025.03.19、京都市左京区

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2025年3月27日 (木)

2階建て染工場の太田重染工

叡電茶山駅近くの染工場。室戸台風以後の耐震木構造に見える。HPに昭和30年創業とあるので、そのころのものか? HP掲載の紹介ビデオにはものづくりにかける熱い想いがあふれている。1975年から機械式のロール捺染(なせん)に切り替えたという。それまではシルクスクリーンだったろう。

このあたりは鐘紡の紡績工場があったことから早くから友禅染地帯として開けた。鐘紡はいまは高野団地になっている。太田重染工も上鳥羽に新工場を建てたというから、この周辺で稼働している染工場はもうないのかもしれない。

この2階建て染工場は上下2ラインで作業するためのものだと思う。この建物はその典型であろう。なかなかモダンでかっこいい。中の風景もさぞかしよかろう。傷みもなく大切に使われてきたことが分かる。耐震木構造なのでけっこう丈夫だ。修理して再生したいものだ。

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2025.03.19、京都市左京区

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2025年3月26日 (水)

旧桜宮公会堂のランチコースを準備している

まいまい京都で、旧桜ノ宮公会堂のレストランのランチコースを準備しているので下見してきた。創作フレンチでメインは肉と魚が選べる。肉を選んだところ赤ワイン煮だった。やわらかくてとてもおいしかった。ツアーは7月初旬になりそう。続報を待て。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年3月25日 (火)

銀橋(7)階段塔は方眼紙とコンパスで描かれている

こうやって何度も写真を見直していてようやく分かった。この階段塔は方眼紙で描かれている。武田は方眼紙を使ってデザインしたことで知られる。そうしたアイデアスケッチも残っている。さらにコンパスが大好きで、方眼紙上にさまざまな円を描きながらデザインを整えた。この階段塔もそうやって描かれたものだろう。武田の方眼紙を写真のうえに再現してみた。ぴったりではないか。

左右には6つのマスが並ぶ。上下には9つ並ぶ。屋根のてっぺんが9つ目の正方形の上端に届いていないのは、屋根のてっぺんが後ろに下がっているからだ。立面図に起こせばちょうど9つ目のマスに届く(立面図スケッチ参照)。この仮想方眼だと、アーチの中心がうまく方眼に当てはまる。武田がこの階段塔を方眼紙で描いたことの傍証となろう。

武田らしいのは立面の比率が2:3になっていること。武田は立面にしろ平面にしろ、とりあえず2:3の比率にしておけという。2:3の比率は黄金比の1:16に近いからだ。

さらに、各部が3分割でデザインされている。全体のうち、上部の3分の1が屋根だ。屋根部分は上下に3分割されている。下から埋め込み照明の部分、急勾配の屋根、緩い勾配の屋根の順だ。急勾配の屋根と緩い勾配の屋根もそれぞれ3分割されている。なにゆえ武田がこれほど3にこだわるのか分からないが、いかにも武田らしいデザインといえよう。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年3月24日 (月)

銀橋(6)照明器具はだれがデザインしたか

階段塔上部の角に照明が仕込んであるのがおもしろい。埋め込み型の照明は武田らが提唱して始まったものだ。ちなみに照明学会も武田たちがつくったものだ。埋め込み型照明や間接照明など現代的な照明方法を武田は模索していた。この埋め込み型照明もそうした作例のひとつである。

橋上には鉄骨に取り付けられたランタンが並ぶ。船の照明器具をイメージしているのだろう。なかなかかわいい。これも武田自身のデザインだろう。なぜなら銀橋にとりつけられた照明器具のすべてに「横3本の線」が入っているからだ。

このランタンも階段塔の埋め込み照明とアーチ上の照明器具もすべてに横3本の線が入っている。「すべて」に入るのは偶然とは思えない。3は武田が好んだ数字だ。照明器具については武田自身がデザインしたように私には見える。

ここまで書いてきて、このユーモラスな階段塔そのものが武田自身のデザインに思えてきた。いままでは橋梁設計者が描いた図面に朱をいれて校正したのだろうくらいに思っていた。そうではなく最初から武田が描いているのではないか。その分析は次回に。

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2025.03.18、大阪市北区

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2025年3月23日 (日)

銀橋(5)じつは銀橋は伸縮自在だった

鉄橋は両岸をヒンジで固定するものが多い。ヒンジとは丁番のことだ。岸側に取り付けた受金物にアーチの先端を差し込んでピンでとめている。

鉄橋は熱で膨張して伸びる。橋の長さが伸びたときにアーチの両端が固定されていると、そこが突っ張って壊れてしまう。そこで両端のヒンジにするとどうなるか。アーチは伸びた分だけ曲がり方が大きくなる。アーチの背は少し高くなり、両端の付け根の角度も大きくなる。両端がヒンジなので角度が変わっても大丈夫なのだ。これが2ヒンジ型アーチだ。

ところが銀橋はアーチのてっぺんにもうひとつヒンジが入っている。3ヒンジ型は珍しい。これは両岸の地盤沈下を見込んで設けられたという。銀橋の架けられた昭和5年には、工業用水の汲み上げによる地盤沈下が大阪で始まっていた。昭和30年代には大阪湾岸で年間沈下量20㎝を超えたという。10年で2メートルだ。

地盤沈下量は橋の両端で異なる。最大2メートルもの差がつけば鉄橋はどうなるか。アーチは引き延ばされて背が低くなる。アーチは高くなるより低くなるほうが弱い。たとえば、まっすぐな棒とアーチ型の棒に重りを載せればまっすぐなほうが先に折れるだろう。アーチが低くなるということはまっすぐな棒に近づくということなのだ。

もし、2ヒンジ型でアーチの引き延ばしが起こるとアーチが折れるおそれがある。そこで登場するのが3ヒンジなのだ。これなら中央のヒンジが働いてアーチがきれいに伸びる。ほんとかよ、と驚くような構造に銀橋はなっているのだ。

実際には、桜ノ宮で2メートルもの地盤沈下は起きなかった。それでも、岸から銀橋を眺めると橋の中央が少し下がっているのが見える。3ヒンジが働いて橋が伸びたのだ。わざわざ3ヒンジにしたことが役だっているのである。

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2025.03.18、大阪市北区

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